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天井のその先へと飛んでいきます
亮の視線の先で、レフェリーが腕を横に振っている。耳には大歓声の中、ゴングの音が響いている。
俺は……俺は勝ったんだ。
噛みしめるように目を閉じた。弾けるような声が耳元で響いている。体が心地いい温もりに抱き込まれている。
目を開ければ、淳史に抱きしめられていた。ヤマさんに、伝次郎に。みんな泣き笑いの顔がここにある。
奈津子。
一歩後ろで、両手を胸元で重ねる姿がある。
奈津子が指から指輪をはずし、差し出されるように向けられた。
目にはこぼれ落ちそうなほどに涙がたまっているが、口元には最高の八重歯が輝いている。
淳史が亮を抱き上げるように持ち上げた。
亮は天上を、いや、突き抜けてもっと遥か上を見つめた。そこで見守ってくれていた人へ届くように叫んだ。
「うぉ――!」
拳を突き上げて。




