猪突猛進あるのみです
亮は今日初めてしっかりと届いたパンチに、自分が無意識のうちに躊躇っていたことに気付いた。いや、逆かもしれない。いつもなら、無意識のうちに踏み込めていたのに、今日は意識にしても踏み込めていなかった。
胸に刺さったトゲが、あいつの言葉が、全身にまとわりついてきていた。
でも、今は違う。奈津子の言葉が胸をよぎる。
どうなろうと、ばあちゃんの想い出は――永遠なんだ!
胸の中で叫んだ。ばあちゃんとの想い出がたくさん詰まった子供の頃みたいに、ガキ臭く。
ボロボロだが、体はしっかり反応してくれる。足も腕も。
いける。大丈夫だ。
自分に言い聞かせるようにして足を踏み出し、相手のパンチをかわして、左右のパンチを振るった。
和人のフットワークは衰えることなく、相変わらず軽快だ。それどころか、さらに華麗に舞って、小気味いいリズムで打ち返してくる。的確なパンチが次々と飛んでくる。
それでも怯むことなく、自分のスタイルを貫いた。
前へと突き進む。
和人は回るようにリング全体を使っている。
それでも亮の気迫が少し上回ったのか、いつしか和人をロープまで追い込んでいた。チャンスはここしかない。そろそろ追う足も限界なのか止まりかけている。
前半に打たれ続けた影響で、気迫だけではどうにもならない。
亮は和人のジャブのようなストレートを、体を沈めるようにしてかわすと、低い体勢のまま踏み込んだ。
軽めの左フックを顔面にあるガードに当て、すかさずその左を上から下、ボディーへと叩き込んだ。さらに動きが止まったところに右フックを放つ。
だが、動きが止まったのは一瞬で、上体をそらされて、かわされてしまった。そして、亮の打ち終わりに合わせて右ストレートが放たれ、右から周りこまれてしまう。
その動きに、亮の体はしっかりと反応していた。
体はボロボロでも、その分頭は冷静だ。
右フックは半分捨てパンチのつもりだった。
だから――すぐに体を反転させつつ。左を放って進路を塞いだ。左ボディが効いていたということか、いつもの足運びではない。
再び左のダブル(フックからのボディ)がしっかりと捉えた。
さらに顔面目掛けて、渾身の〝右ストレート〟を放った。
次の瞬間、会場が大歓声に包まれた。
リング上で倒れているところに、レフェリーが駆け寄っている。




