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大作だって親です
テレビ画面にはふらふらの亮が映し出されている。
ボクシングの試合など見たことのない大作でも、試合が一方的な展開であることが分かる。亮の繰り出すパンチは空をきり、相手のパンチが的確に亮の顔面や腹を捉えていた。
亮の顔はラウンドを重ねるごとに赤く腫れあがっている。
6ラウンド終了後の亮は、相手のパンチが足にきているのか、重い足取りで自陣のコーナーに戻っていく。
そんな姿が画面に映し出されていた。
淳史が出した椅子に腰を下ろした亮に、伝次郎が声を飛ばしている。亮はうなずきで応えているように見えるが、胸に言葉が届いていない。画面からはそう伝わってくる。
これがボクシングをする亮の本当の姿なのだろうか。
言葉をかけずとも、亮を見続けてきた大作には、亮の目が気にくわなかった。
試合なんて一度も見たことはないが、家で母さんとボクシングの話しをしている時には、もっともっと輝いていたじゃないか。一方的にやられて、目は死んじまったのか。違うだろう、亮! お前は苦しくとも、目が輝きを失うなどありえない。俺には分かる。俺はこの手に、お前を抱いた時からずっと見てきたんだぞ。




