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タッツミー  作者: ゆらゆらゆらり
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取材されるほど注目されいます

 ヤマさんが去った後、後片付けをしていると、ひとりの男性が入ってきた。

 その笑顔をたたえた人のよさそうな小柄な男性は、肩からカメラを下げ、ジーンズにジャンバーといった軽装で、いかにも【記者】という感じだ。


 そして、やはりといった感じで、名刺を出しながら言った。

「取材をお願いしたいのですが」

「ちょっと、今は私しか」

 奈津子はジムの奥に目を向け、伝次郎を気にしながら答えた。

「あぁ、そうですか。失礼ですが、あなたは?」

「私は会長の孫ですが」

「そうなんですか。それなら、あなたも永井亮さんの昔のこともご存じで」

「はぁ、まぁ。幼馴染ですので……」


 戸惑う奈津子に、満面の笑みで「それなら、ぜひ、あなたに」

 余計なことを言ってしまったと思ったが、遅かった。

 質問攻めの取材が始まってしまった。


 子供の頃のジムでの思い出から始まり、ボクシングを始めたきっかけや今の周りの状況などへと進んでいった。

 話しが進んでいく中で記者は、ジムに飾られている1枚の写真に目を止めた。その後はおばあちゃんとの思い出を熱心に聞いてきて、やがて帰って行った。


 これも、武山和人効果ということだろう。

 亮まで注目されている。

 名刺を見れば、スポーツ雑誌のようだが、今ではなく、いずれを見越しての取材なのかもしれない。

 武山和人が世界チャンピオンにでもなったら、特集記事でも作る、そのひとつなのだろう。


「今回ばかりは、そうわいかないんだから。それは次回以降の試合でお願いしますってことよ」


 ドアに向かって、言葉をぶつけた。




 記者の人が帰ると、入れかわるように亮が戻ってきた。今日はころころと出入りが忙しい。


 亮の表情は行く前より、さらに柔らかくなったように見える。

 そんな姿を見て思わず、「亮、美貴さんのこと好き?」

「えっ」

 亮は驚いた表情で、顔を向けてきた。


 奈津子は、自分で発した言葉なのに驚いていた。

 気まずさと、恥ずかしさと、後悔が渦巻く中、必死に「ううん。何でもない」

 言葉を押し出して、慌てて背を向けた。そして、何かを聞き返されないように、目の前のおばあちゃんの写真を見上げたまま、

「亮。ボクシング始めてくれてありがとう」

「なっ、何だよ、急に」

 亮の戸惑った声が聞えてくる。


「うん。今、雑誌記者の人が来て、昔話していたらなんとなく言いたくなっちゃっただけ」

「何だよ、それ」鼻で笑うような声がし、続くように、「それより昔話って、何を話したんだよ」

「ナイショ!」

 空気を変えたくて、あえてテンションを上げるように、明るい声で振り返った。

「ふんっ、そうですか」


 上手く空気が変わってくれたのか、亮はいつもの感じで、わざといじけるような渋い顔をした後、微笑んだ。

 奈津子も、何だかホッとして微笑み返した。


「あっ、そうだ。亮にひとつ聞きたい事があるんだけど」

「なに?」

「ほら、亮のラグビーの決勝が終わってすぐに、おじいちゃんに呼ばれてジムに戻った時。おじいちゃんが、ボクシングやらないか、って突然言い出したのに、亮はすぐに、よろしくお願いします、って言ったでしょ。ラグビーで大学推薦の話もあったのに」

「あぁ、あれね。あれは、あの時すぐに決めたわけじゃないよ」

「すぐじゃないって?」

「ばあちゃんが運ばれた時のことって、覚えているか?」



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