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第4話 葵ちゃんはご機嫌斜め 2

2日連続更新です。

よろしくお願いします。

 竜胆さんと連絡を取り合った次の日、昼休み中スマートフォンを開いたらLifeに[新着メッセージ]が1件入っていた。


 [三島さんに聞いてみましたけど、余った廃材で直ぐに造れるから、今日の放課後には完成してるとのことです。 廃材だからお代は要らないって言われてしまいました。]


 仕事が速いな竜胆さんは。

 ただでくれるなんて気前が良いんだな、三島さんって人は。 それかお金持ちかだな。


 [わかった、なら一緒に取り行こう僕も見てみたいから。 お礼も言いたいしね。 放課後図書室に来てくれる?]


 Lifeに返信を入たら、丁度5限目の予鈴が鳴った。 5限は体育なので着替えを持って体育館の更衣室へ急いだ。


 次の休み時間にLifeを見ると、可愛らしいスタンプで[OK]と返信があった。


 放課後、図書室で竜胆さんと合流して三島さんと言う人の所へ向かう。

 学校の近くのバス停で乗車して30分、到着した駅から徒歩5分の所に〈特殊装備製造・販売 三島商店〉と書かれた看板が目に入った。


「ここ、何だよね?」

「はい、そうですよ」


 見た目は少し大きいめの一軒家で、2階のベランダに看板が掛かっている。 1階には車庫にしても大きなシャッターがあり、30センチ位上がっていた。

 竜胆さんは、玄関前に2つあるインターホンの〈店〉っとだけ、ガムテープに書かれて貼ってある方を押して家主に用件を言っていた。

 すると、シャッターが自動で上がっていき、待っていたのは、つなぎを着て頭にはタオルを巻いていて仁王立ちしている、つり目で気が強そうな女性だった。


「待ってたよ、司ちゃん! 注文の品、もう出来てるよ!」

「ありがとうございます、三島さんにはいつも助けて貰って申し訳ないです」


 そう言って竜胆さんは軽く頭を下げた。 僕も一緒に頭を下げる。


「いいって、いいって、堅っ苦しいのは苦手だって知ってるだろ? 楽にしなよ。 それよりそっちの坊やは? 司ちゃんのこれかい?」


 三島さんは右手の親指を立てて、からかうように笑っている。


「ち、違います! 彼は、し、知り合いです!」

「ふ~ん、まぁ本人がそう言うなら仕方ない。 初めまして坊や、ウチは三島春菜、よろしく」


 近づいてきて笑顔で右手を出して自己紹介をしてくれた。 男勝りとは彼女の様な人の事を言うんだろうな。

 あと地味に竜胆さんの「知り合いです!」が傷つく友達だと思っていたのに。


「僕は松葉陽喜です。 よろしくお願いします、三島春菜さん」


 僕も右手を出して握手をする。 女性らしい小さい手なのに、豆があって少しゴツゴツしていてた。

 僕が握手をした手を見ていたら、三島さんは苦笑しながら


「女っぽく無い手だろ? 皮は厚いし、豆も1つや2つじゃないからね」


 と、言って手を離して頬を指で掻いた。


「確かに、柔らかくはないですけど、とっても素敵な手だと思いますよ。 三島さんの手からは力強さを感じます」


 僕が思ったことをそのまま言うと、今度は恥ずかしそうにして、斜め上を見ながら頬を掻いていた。


「調子が狂う坊やだね。 けどまぁ、気に入った! アタシの手をそんな風に褒める男は中々いないからね、正直嬉しかったよ」


 三島さんは歯を見せて笑って言った。


「さぁ、本題だ! これが司ちゃんからの注文の1000度を超える熱も測れる温度計だ! コイツの上限は一応摂氏にしてザッと2000度ってとこだ。 言ってあった通りコレは廃材で出来てる寄せ集めみたいなもんだからお代は結構だよ!」


 繋ぎのポケットにしまっていた、デジタルの温度計を竜胆さんへ渡して説明してくれる。


(これで後は特訓場所の確保だけだな)


 使用する時の注意等を教えて貰い、帰ろうとしたとき、三島さんが竜胆さんに何か耳打ちしていた。


「いい男じゃないか、逃がすんじゃないよ?」


 何か言われた竜胆さんは耳まで真っ赤にして、三島さんをポカポカ叩いて、先に出ていった。


「何を言ったんですか?」

「なぁに、ただの世間話だよ。 坊やも何か要りようになったら声かけな、力になってやるさ。 また来な坊や」


 名刺を渡してくれた、三島さんは身を翻して仕事に戻っていった。



 *



 そうして、一応は特訓の準備出来て、帰りに竜胆さんと能力を使っても大丈夫な場所は無いかと話していると―――


「なら私の家はどうですか? この能力でも住める様に耐熱加工完璧ですから、周囲に危険は及ばないので、外でするよりは断然安全ですよ」

「え? いいの? 使わせてもらっても」

「松葉君さえ嫌じゃなければ明日でも大丈夫ですよ?」


 いきなりご自宅へ招待されて、感動と焦りで思考がフリーズしてしまった。

 僕は友人はそこそこに居るが相手の家にお邪魔するのは裕吾くらいで、しかも女の子からの誘いとかされたこと無いから、どう返事したら良いんだ? 一度は遠慮して断るべきだろうか? それとも、誘いに乗ってお邪魔しても良いのだろうか。 けどさっき知り合いって言われたし…


「―――ごめんなさい、いきなり過ぎましたね。 松葉君にも予定はあるでしょうに」


 竜胆さんは叱られた仔犬の様にシュンとして、軽く俯いてしまった。


「え!? いや、ちょっと待って! 別に僕は行きたくなくて黙ってたんじゃなくて、友達の家に招待されることがあまり無いから、なんて言えばいいのか考えちゃったからで。 本音を言へばお邪魔したいです!」


 時間にすれば数秒、僕の体感的には数分の沈黙の後。


 ――――ピロリン


 Lifeの着信音が聞こえた。

 竜胆さんはスマホをいじって、僕のほうをチラ見してきた。

 何となく察したので僕もスマホを見てみると、竜胆さんからメッセージが来ていた。


[友達というのは、本当ですか?]


 この人はなんて臆病なんだろうか、そこまで構えなくてもいいだろうに。 僕も直ぐに返事を送った


[もちろん、もう僕たちは友達だよ]

[とても、嬉しいです。 本当に嬉しいです。では明日、13時に学校の校門の前で待っています。 おやすみなさい。]


 そう打って軽く会釈して、竜胆さんはダッシュで帰っていった。


(竜胆さん足速いな~。 僕も帰るかな、また葵にいじられるんのも嫌だしね)


 そうして僕も友達が1人増えて嬉しい気持ちで自宅へ帰った。



 *



 約束の時間の15分前に待ち合わせ場所に行くと、そこには既に竜胆さんの姿があった。


「ごめんね、待たせちゃったみたいで」

「いえ、ご心配なく。 それでは行きましょうか」


 軽く挨拶を済まして竜胆さんの家へと歩き出す。

 徒歩7分前後で到着した竜胆さんの家は、数年前に出来たばかりの高層マンションだった。


「凄い所に住んでるんだね、竜胆さん」

「そうですよね、私もそう思います」


 苦笑しながらオートロックのドアを開けて進んでいく。 竜胆さんはどやら1人暮らしをしいるらしい、詳しい事情は知らないが、親代わりの人が「そろそろ、1人暮らしとかしたいでしょ? 良い所用意しといたから好きに使ってね」っといってくれたんだとか。

 竜胆さんの部屋は401号室で、1人暮らしをするには随分広かった。

 僕と竜胆さんはリビングの適当なところに座り、向かいあった。


「それで、どこで特訓するの? 見たところ普通に燃えそうなものばかりだけど」


 僕は辺りを見回すと、ソファーにマット、カレンダー等一見紙や布で出来たものだかりだった。


「特訓は―――ここでしているの」


 そういいながら竜胆さんは僕を手招きして、一つの扉の前に移動する。 そこには<訓練部屋>と書かれたプレートがぶら下がっていた。


「訓練部屋?」

「はい、私が上手く自分の能力を制御できないことを知っている明里さんが、この部屋を用意してくれたんです」


 扉が開き見えたのは、壁紙も家具も何も無いコンクリート剥き出しの部屋だった。


「ここが、訓練部屋」

「そう。401室の壁は一応全部耐熱加工してあって、万が一私が火を噴いても燃え移ることは無いけれど、それでも何度も繰り返すと痛んでしまうらしいの。 けれどこの部屋の壁だけはもっと強力な加工が施してあって、何度全力で炎を出しても大丈夫って聞いてまあすから。 あの人は冗談は言うけど嘘は言わないから、大丈夫ですよ」

「わかった。 なら、早速特訓を始めようか!」


 僕は部屋の奥へ行き、手を広げて言う。


「今日は服がなくなることは無いから安心していいよ。 この服見た目は普通だけど、僕の能力と同じ耐熱服だからね!」


 確か去年の誕生日プレゼントにお父さんから貰ったのがこれだった。 「出張先でお前の能力と相性が良さそうな服を見つけた!」っと言って買ってきた耐熱服。 見た目こそ普通の長袖の白いシャツに青色のジーパンだが効果は確からいし。


「はい、わかりました。 それでは、いきます!」


 竜胆さんもマスクを外して大きく息を吸い込み、一気に吹き出す!


 一瞬で訓練部屋は炎に包まれた。 多分普通の人間ならば数秒と待たずして黒焦げになるであろう真紅の炎には僕は――――特に何もの感じなかた、熱いも、暑いも、暖かいも、温もりも、何も。


(やっぱり一朝一夕とはいかないか)


 炎に包まれながら思っていたが――――


(く、苦しい! 呼吸が出来ない。 しまった、忘れていた! 火は酸素を使っても燃焼するものだった! 竜胆さんの肺活量次第では、僕窒息死する!!)


 結果、訓練室の酸素が薄くなりなり、2人で慌ててドアを開けて呼吸をしにいった。 その後は適度に休憩と息抜きを挟みながら、数時間続けたが得られる事はなかった。

 あの、懐かしくも愛おしい、人に抱き締められたかの様な温もりはいつになったら、また感じる事が出来るのだろうか。

 時間は過ぎ、夕暮れ時。


「それじゃあ、今日はありがとうね。お邪魔しました、また学校で」

「こちこそ、上手く出来なくてごめんなさい。 今度はもっと上手くできるようにします。 また明日」

「ちょっとまって、気になってはいたんだけどさ、一緒に特訓もしたんだし、何より友達なんだからさ、もう少し肩の力を抜いて喋ってもいいんじゃない?」

「う、そうですか。 そうですよね、わかりました、もう少し砕けた感じに話せるようにしうます」

「もう、既に硬いよ?」


 苦笑しながら言うと竜胆さんは


「うぅ、すみません…あ、ごめんなさい」


 あんまり変わってないのが微笑ましいな。


「少しずつでいいから」

「うん、頑張ってみます」


 そう言った竜胆さんは僕を見て照れ笑いをした。 2人でぎこちなく別れの挨拶をして竜胆さん宅を後にした。


(さあ真っ直ぐに家に帰ろう)


 帰宅途中、肌寒そうにしている人を見て、少し……羨ましいと思った。




 * 




「ただいま~」


 家のドアを開けて、リビングに行くと、そこには仁王立ちしている、我が妹――――葵が静かに怒っていた。

 仁王立ちしているのに、表情からは怒りを感じず、むしろ凪いでいる様にすら見える。 しかし、伝えようのない憤怒のオーラを全身から感じる。


(ヤバいな、怒ってるね)


「お帰りなさい、お兄ちゃん。 晩ご飯出来てるよ」


 そう言った葵は、普通の立ち方に戻り、ソファーへ移動してテレビをつけて流し見ている。


「あ、ああ。 ありがとう」


 手を洗って椅子に座って、テーブルを見るとそこには――――お椀に入ったお麩、茶碗に入ったお麩、小皿に乗っているお麩。


(わぉ、こりゃあ本気だ)


 何の味付けもしていない、お麩を無言で完食して、お皿を洗い、葵に話し掛けようとしたら自室へ逃げられてしまった。


 ―――トントントン


 葵の部屋をドアをノックするがなんの反応もなし。

 そもそも、僕は葵に何をして怒らせてしまったのか、未だに見当がついていない。


「葵、お兄ちゃん、何かしちゃったかな?」


 駄目元で尋ねてみると、ゆっくりドアが葵が開き顔だけ覗かせて


「今日、衣替え手伝ってくれるって約束してたのに、何にもしてくれなかった。 挙句出かけて行っちゃうし。 バカ!」


 ――――バタンッ!


 返事をする前に、勢い良くドアを閉められてしまった。


(これは、やらかしてしまったな)


 僕は葵の部屋の前で立ち尽くして、頭を掻いた。


(何とかしないとな)


 葵に許してもらえる方法を考えながら、その日は終わっていった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


『葵ちゃんはご機嫌斜め』は本当なら1話だけでだったハズなのに、気がついたら6000文字超えてて「読みにくい!」っと思い、2話に分割しました(笑)


これからもよろしくお願いします。


次回予告!

   『私のバカで可愛いお兄ちゃん』

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