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第4話 遭遇

「……ぁ、助けて!」

「…!?」


 目が合い、いきなりの声にビックリして数歩後退する俺。

 急いでいる声の主達はコンビニの影から現れたのは2人の少女。


「こ、怖い人に追われてるんです……。 助けてください」

「はぁ、はぁ……」


 映画のワンシーンの様な言葉に戸惑いを隠せない俺。 けれど女の子2人が鬼気迫る顔で助けを求めてきている。 しかも、よく見れば身につけている洋服に血も付いている。 現状断ることは出来ない。


「……わかった、静かに付いて来て」

「「!」」


 自分達で助けを求めたのに、それがあっさりと受け入れられたことに驚いている。


「ちょっと、ごめんね」

「「…っ」」


 怖い人に追われているらしいので、急ぐために2人の手を取った。 外見が瓜二つだし、多分一卵性の双子なんだろうなと思った。


 2人の手を引いて、知らない夜の街を走る。 何処に行けばいいのかも、何でこんなに走ってるんだろうとふと思う、全然知らない子達の為に何をしているんだろう? 私服に血が付いている子達とか何らかの犯罪に関わってるに決まっている。 この子達の手を引いている俺も巻き込まれる可能性は十分有り得る。 少し怖い、息も切れるし、足も重い、頭に酸素が回らない、これが正しいことなのかもわからない。

 ぐちゃぐちゃと考えていたら、高い壁に道を塞がれてしまった。


「はぁ、はぁ、行き止まりか」

「「はぁ、はぁ」」


 必死に走っていたので後ろの2人の体力を全然考えていなかった。 俺以上に息が切れて、立ち止まった足が小さく震えている。


「ふぅ〜、少し休もうか」

「そうですね、多分ここまできたら、大丈夫だと」

「休みながら話を聞かせてくれるかな? 誰に追われているのかな」


 2人は少し息を整えて、お互いの顔を見合わせて



「―――結構遠くまで走ったね。 けれど、まさか君がここに来ているとは思わなかったよ、松葉陽喜君」



 月を背に空に立つ、見覚えのある背格好に声。

 そこには以前お世話になった“魔法使い”が俺達を見下ろしていた。


「ダリアさん、何故あなたが」

「割りとそれはこちらの台詞(セリフ)なんだけどね」


 ダリアさんはそう言いながら、ゆっくり地上に降りてくる。


 ――タンッ


 心地よいヒールの音が静かな夜に響く。

 俺は2人の前に出て話をする。 2人が息を呑む声が聞こえた、2人を追っていたのはダリアさんなのだろう。


「その通り」

「……考えを読まないでくださいよ」


 考えにレスポンスしてくるダリアさんの声、知っていたけど驚き背中に嫌な汗が出る。


「まぁ、そんなに気構えなくていいさ、別に私はそこの双子を悪いようにするわけじゃない」

「というと?」

「ふむ、そうだね、まだ無関係の君に詳しくは言えないが、その双子達を然る場所に連れて行かなければならないんだよ」

「2人とも怯えているようですが」

「……それは、その子達の生い立ちに関わる話でね、ここでは話せないのさ。 クライアントからも無闇に口外するなと釘を刺されていてね」


 やれやれどうしたものかと、いった感じで手を額に当てている。


「まぁ、知らない仲ではないんだ、多少信じてくれてもいいんじゃないかな? それに、私は利己的主義者(エゴイスト)だが、無闇に人を傷つけたりはしない。 それは私の最も嫌悪することだからね」


 普段の軽い口調じゃない、本気の声音に、そうなんだろうと思えて、納得しそうになる。


「そこは素直に納得して欲しいものだね」

「だから、心を読まないでください」

「ふむ、何が君の心で引っかかっているのかな?」


 依然怯えている2人を一瞥(いちべつ)し、右の掌をダリアさんの方へ向け、左手を横にの伸ばして2人を庇う体勢をとり、ダリアさんからの問に答える。


「2人が怯えて逃げている。 俺はあなたに恩義があるから、あなたの言葉なら信じます、だけど当の2人があなたを拒絶しているうちは、ここを退くわけにはいかない」


 俺の言葉を聞いた、ダリアさんが「ヒュー!」と口笛を吹く。


「格好良いね、惚れてしまいそうだよ。 欲をかくなら、守る対象が私でないことと、脚が小刻みに震えていなければ、更にプラスポイントだね。

 けど―――()()()とても危険な行為だぞ、少年」


 ダリアさんが真剣な眼差しで忠告してくる。 小声で「しかしそれを無意識やるんだね、もしかしたら君は将来、台風の目に成るかもしれないな」と不穏な事を囁いていた。


「どういうことですか?」

「そう遠くない内に解るさ。 まぁ、解ってしまった時には遅いがね。 少し無駄話が過ぎたかな、さぁ双子を渡して貰おう。 さっき言ったように悪いようにはしないさ」


 ダリアさんが右手を差し出しながら、一歩、また一歩と少しずつ迫ってくる。

 袋小路に入ってしまい、逃げ場は無い。 俺にはこの人を相手に善戦出来るほどの力も知恵もない。


(どうする! どうすれば、いい! 何をしたら……)


 頭に浮かんだ1つの言葉、事態の解決に成るかは分からない、むしろ何も変わらない可能性の方が高いだろう。


(けど、いまはこれしか無い!)


 深く息を吐いて、吐いた分以上に息を吸い、止める。


「あ゛お゛い゛〜!!!!!」


 夜の街に響き渡る俺の声。 苦し紛れに思い浮かんだのは、可愛い1人の妹の顔だったのだ。


(我ながらシスコンで参るね、こりゃぁ)


「ぷ、そう来たか。 ―――いや、いい考えだ」


 意外な俺の行動を笑うダリアさんは、一瞬で顔を引き締めた。


「……にぃ、ゃん!!」

「??」


 何か声が聞こえたので上空を見ると


「おにぃちゃーーん!!!」


 こちらへ向かって大空へダイブしている葵の姿だった。

最期まで読んでいただき、ありがとうございます!

ついに出てきました!

第2章のメインキャラクター達!

今後もどういう関わりをしていくのか、見守っていただけると嬉しいです♪



次回予告!

  『逃走』

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