第3話 海上浮遊国家ザクトゥル
「というわけで! やって来たぜ、ザクトゥル!」
「いえ〜い♪」
飛行機から降りてテンションMAXな父と母。 それを横目に恥ずかしがりる葵。
「ちょっと、今所で大きな声出さないでよ、恥ずかしいでしょ」
「ごめんなさいね、家族みんなで出掛けることなんて、年に何回あるかわからないから、つい。 許してあおちゃん」
「確かにちょっと、はしゃぎ過ぎたか、すまんな」
どちらが大人なのかわからないが、普段仕事で忙しい分、両親は存分に家族旅行を楽しみたい様に見える。
両親に謝られて、複雑そうな顔をしている葵。 葵も両親が今の状況を楽しみたいことを理解しているのだろう、だけど恥ずかしいから言ってしまった。 そんな感じの複雑な心境なのが伺える。
「楽しむのはいいけど、場所は考えようね、父さん、母さん。 葵も楽しむなって言ってる訳じゃなし、公共の場で注目を集めるようなことをしないでってことだろう?」
葵の代わりに言うと「うん」と頷きながら肯定する葵。 頭を撫でてやると、嬉し恥ずかしといった感じで「もう」と小さく声を漏らしていた。
「ふふ」
俺と葵の姿を見て微笑む母。 嬉しそうに、うんうんと頷く父。 2人の反応に頭にクエスチョンマークを浮かべる俺を見て「微笑ましいわね〜」と母は言った。
*
少し落ち着いて、ホテルに荷物を置き、観光へ出かける。 何度か来て知っている、父と母が先頭を歩き、その後に俺と葵がついていく。
海上浮遊国家ザクトゥルは、太平洋上に浮かぶ戦争の遺産。 今はその影はなく、文科的な街並みが広がっている。 見渡せばお土産屋さんやスーパー、酒屋、花屋、ケーキ屋、様々な種類の店が並び、特別変わった店ではないのだが、観光地効果なのか歩いているだけで、気持ちが高揚し、店を覗きたくなってくる。
「あれでかいな〜」
中央に聳え立つ、白い塔。
「―――。 何だ?」
あの白い塔、何だかとっても気になるな。 まぁ歴史的な建造物とかに興味が無いわけでもないからな。 妙に白いのはなぜ? どんな技術何だろう、中には何があるんだろう? と考えると興味はつきない。
「なんだ、陽喜、あれが気になるのか?」
父さんが後ろを向きながら行って来る。
「うん、何だか目を引くよね」
「そうさな、あんだけ馬鹿デカいと嫌でも目に入ってくるよな。 けどまあ、あそこには楽しい物なんても何もないぞ? 昔の日本で言うところの、国会議事堂ってところだな。 この国のお偉方がいるだけさ」
「そうなんだ……」
生返事を返した俺を見ながら、父は頬を搔く。
「あまり、気を取られすぎると――
ザクッ! 上を見ながら歩いていた俺は植え込みに突っ込んでいた。
――ぶつかるぞ」
「いっぁ……、遅いよ父さん」
お腹を抑える俺を見て「ははは、すまんな。 まぁアレにそんなに気を取られてると危ないぞってだけだ」と父は肩を軽く叩きながら言った。
「にして、人が多な〜」
「それは有名ですし、世間の学生さん達は春休みですもの。 観光する人も増えるわよ」
「逸れないようにしないとな」
「ふふ、そうね」
嬉しそうに手を繋ぐ両親を見て、葵も「確かに、逸れたら大変よね」と言いながら俺の手を握った。
「うんうん、やっぱり家族は仲良しが一番だな!」
父の言葉に微笑む松葉一家は、ザクトゥルの街を散策し始めた。
*
ザクトゥルは最新の能力研究、能力者に優し政策などがあるが、はっきり言って名物があったりするわけじゃない、強いて言うなら路上でのパフォーマンスだろうか。 俺等が住んでいる欧亜連邦、その他ほぼ全ての国で能力の使用の申請をしていない区域で、緊急を要さない能力の使用は禁止されている。 警察などに見つかり次第、罰金などの刑に処される。 しかし、ザクトゥルでは『人に危害を加えない能力の使用』は認められている。 その為、路上での能力を使用したパフォーマンスがあちこちで行われているのだ。
なぜ特出した名物があるわけでもないのに、観光地としても有名なのか、それは『自由』だたからだ。 パフォーマンスがあちこちであるように、他国で抑圧された能力者達はこぞってこの国に自由を求めてやってくる。
無論犯罪者達も中にはいるが、この国独自の警察組織が犯罪の芽を摘んでいる。 他国の警察も能力者の捕縛、市民の安全などの為に能力を使うことは認められている。ザクトゥルの警察は日々のパトロールなどでも能力の仕様が認められており、危険因子を発見し、必要とあれば強制送還が出来たり、他国の警察と連携を取り、逮捕したりする。
何処でも能力が使える国だからこそ、犯罪者達にはハイリスクな場所でもある。 その為、この国は安全と自由が共存する稀有な国なのだ。
*
一頻り観光をした後、ホテルに戻ったが、葵や父とゲームするときに食べるお菓子や菓子パンが欲しくなり、コンビニに買いに行った。
「父さんよく食べるからな〜、足りるかな? はぁ〜、春とはいえ、夜はちょっと冷えるな」
6人分程あるパンとお菓子を買い込み、コンビニからでる。 少し薄着の俺は軽くぼやて、ホテルに帰ろうと足を運ぶ。
「……はっ、はっ!」
ホテル街は夜だと人通りも少ない為、少し離れたところでバタバタと慌ただしく走る音と、荒い息遣いが聞こえてくる。
「た、た、す!」
「お姉ちゃん、ま、まっ…て!」
何か急いでる声の主は徐々に近づいてくる。 さっき居たコンビニの方から音が聞こえるので振り返る。
「……ぁ、助けて!」
「…!?」
目が合い、いきなりの声にビックリして数歩後退する俺。
急いでいる声の主達はコンビニの影から現れたのは2人の少女だった。
最後まで読んでいただ、ありがとうございます!
ラストに出てきた子達に今後要注目!
次回も読みに来てくれたら嬉しいです♪
次回予告!
『遭遇』




