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第2話 家族

 能力者の国、浮遊国家ザクトゥル。

 第二次世界大戦(異能大戦)の遺産。 世界の敵となった『超新生国』を世界連合と共に討ち滅ぼし、能力者の迫害、実験動物にされることを危惧した、能力者達の最高指導者、日輪牡丹(ひのわぼたん)(能力)や、高いカリスマ性によって統治された国である。

 上記が世界史に記載されていること。 現代は能力者のみならず、非能力者にとっても理想郷だと言われている。


「ザクトゥルか〜、確かに一度は行ってみたいと思ってたんだよね〜。 けど宿とか取れるの?? 常に全世界から観光とかで来る人が多いのに」

「ふっふっふ、心配ないぜ、我が息子よ! その辺、父さんちょっとコネがあってな〜、何とかなるさ!」


 腕を組みながら、不敵な笑みを浮かべる父をちょっと「うざいな〜」と思ったことは内緒にしておこう。


「お父さん言い方ウザ」

「ぶふ!!」


 葵の容赦ない一言でつい吹き出してしまった。 娘にウザいと言われたら父は「葵が、葵にウザいって言われた……。 これが反抗期というやつか」膝を付いて悲しんでいた。


「お父さん、元気だして、かっこいいわよ」

「ああ、ありがとう、母さん。 よし、そんなわけで、父さんはこれから電話して宿とか、飛行機のチケットとか取ってくるから、期待して待っててくれ!」


 父さんはリビングを出ていった。

 

「本当に、慌ただしい人ですね〜。 まぁそこがいいのだけれど」

「お母さんも変わってるよね〜」

「そうかしら?」

「そうだよ、うるさいし、ウザいし、何がいいんだか」

「そんなこと言うけど、本当は悪く思っていないんでしょ?」

「ふん、まぁね。 ウザいのは確かだけど、感謝はしてる」

「お父さんにもそう言ってあげたら、声を上げて喜ぶのに」

「それが、ウザいんだったってば」


 母さんと葵は父さんのことで会話が盛り上がっていた。

 俺はいそいそとお昼ごはんの準備をしている。 普段は葵がご飯を作ってくれるが、今日の朝に「お兄ちゃんのご飯久しぶりに食べたい」と言われて、レタスチャーハンと中華スープを作る予定だったのだ。


「よっちゃんは何しているの?」


 いつの間にか後ろにいた、母さんが声をかけてきた。


「お昼ごはんの準備。 今朝葵に久しぶりに俺の作った料理が食べたいって言われたから」

「あら、よっちゃんご飯上達したの? 楽しみだわ〜」

「葵ほどじゃないけどね、まだまだ葵には敵わないよ」


 俺の言葉を聞いて、嬉しそうに微笑む母さん。 「一人称とか、色々変わったと思っていたけれど、やっぱりよっちゃんは、よっちゃんね♪」そう言いながら、俺の頭を撫でてくる。

 ちょっとくすぐったい気持ちになったけれど、母さんの少しひんやりして、けれどほんのりと温もりを感じる手はとても優しい。


「やっぱり、家族はいいわね。 どれだけ離れていても、しばらく会えなくても、帰ってきたらいつも通りになれる。 得難いものだわ」


 少し大袈裟にも聞こえる、母さんの感想だが、俺も同じように思っていた。 さっき父さんには「爺臭」と言われたけど、母さんも同じことを思っていたことを知り嬉しくなった。


「お兄ちゃんと母さんって、考え似てるよね」


 先程の俺と父さんの会話を聞いていたらしい葵が、少し呆れたような、けれど羨ましいような複雑な顔をして言った。


「ふふ、当たり前じゃない、家族ですもの」



 *



「諸々予約取れたぞ!」


 扉を勢いよく開けて、嬉々とした表情で戻ってきた父さん。


「あら、早かったわね?」

「超特急で電話しまくったからな!」

「それで、いつから旅行なの?」


 葵の問いかけに、父さんは嬉しそうに「明日だ!」と目を見開いて答えた。


「えぇ、明日?! ちょっといきなりすぎるでしょ! もうちょっとこっちの予定も考えてよ、バカ!」


 葵のもっともな意見に「ぐふぅ!」と声に出してダメージを食らっている父さん。


「確かに突然ね、準備間に合うかしら?」

「手伝うよ母さん」

「あら、ありがとう、よっちゃん」

「お兄ちゃん、私の準備も手伝って〜」

「いいよ」

「父さんも手伝ってやるぞ!」

「間に合ってます」

「ぐふぅ!」


 哀れ父。

 その場で崩れる父さんの肩に手を当てて「俺の荷物まとめる手伝ってもらてもいい? 父さん」と声をかける。


「お前は本当に優しい男になったな……父さんは嬉しいぞ。 そして任せろ! なにかないものがあれば、超特急で買ってくるからな!」


 目を輝かせて、俺の両肩をガシッと掴み夫婦部屋へ戻って行った。


「よっちゃんは、お父さんの扱いが上手いわね〜」

「甘やかしてるだけでしょ、まったくもう。 お兄ちゃんは誰にでもいい顔するんだから」

「それが、よっちゃんのいい所じゃない」

「そうなんだけどね、はぁ〜」


 微笑む母、やれやれと手を額に乗せてため息をつく葵。


(そうかな〜、八方美人ってやつなのかな? 悪いことではないと思うんだけどな……はっ! まさか、葵は父さんにヤキモチを焼いてるのか? それこそ、まさかだよね)


 「そろそろお昼にしようか〜」


 みんなに声を掛けて、お昼ご飯をよそってテーブルに持っていった。


「「「「いただきます」」」」


 ゆっくり話をしながらお昼ご飯を食べていき、予想以上に評価が高くて嬉しかった。

 食べ終わった後、少し頬を染めた葵が、父さんと母さんのお皿を集めて持ってきてくれた。


「美味しかったよ、また作ってね、お兄ちゃん」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

松葉一家温かくていいな〜。

後方オタク面でこの一家を見ていたい。


次回予告!

  『海上浮遊国家ザクトゥル』

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