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第3話 葵ちゃんはご機嫌斜め 1

今回もよろしくお願いします。

 竜胆さんに協力してもらえるようになった次の日の朝。 いつものように葵と並んで登校していると


「お、おはようございます、松葉君」


 竜胆さんが声を掛けてきてくれた。


「あ、おはよう、竜胆さん。 今日からよろしくね。 それでもし良ければ、放課後って時間あるかな?」

「はい、大丈夫ですよ。 取りあえずは今後の方針とか、方法を考えないといけませんね。 少し急ぎますので、また後ほど」

「わかった、また放課後に」


 最後にぎこちなく微笑み竜胆さんは少し早歩きで学校の方向へ進んでいった。


「…………随分仲が良さそうだね、この前までは挨拶するような関係じゃなかったのに。 それにもう放課後に予定入れてるし」


 竜胆さんとの会話中ずっと僕の後ろに隠れていた葵が、頬を膨らまして言ってくる。 基本的に社交的な葵なら竜胆さんとも挨拶くらいはするんだけどな。


「そんなに警戒しなくても竜胆さんは悪い人じゃないよ。 だから葵も仲良くなって欲しいな。 僕の能力のことで彼女の力を借りる事にしたから、これからも会うことはあるだろうからね」

「…………善処します」


 葵は僕の制服を掴んだまま、面白くなさそうにそっぽ向いてそう言った。 葵は嘘は言わないし、大丈夫かな。 そうして、再び歩き出して昇降口で葵とも別れクラスへ入ると今度は――


「おっす、陽喜。 お前今日の朝、竜胆と仲良さそうに話してたみたいだな」

「耳が早いな裕吾は、誰から聞いたんだ?」


 まだ、竜胆さんと別れてからそんなに時間は経ってないはずなのに、誰か知り合いに見られてたのかな。


「結城だよ。 今日は珍しく支度に時間がかかった結城がお前らの事を見ててな、教えてくれたんだよ」

「そうか、結城ちゃんに見られてたのか。 それにしても、案外仲良いよな、鶴間兄妹」


 結城ちゃんは外であまり裕吾に近づこうとはしないので、仲が悪いのかなと考えていたが、SNSでやり取りしたり、自宅では一緒に対戦ゲームをすることもあると聞いてからは、実は仲良し兄妹なんじゃないのかなと思ってる。


「そうか? 面白いもん見たら、誰かに教えたくなるもんだろ」

「まあ、確かにな。 ………………ちょっと待って、僕と竜胆さんが話してるのは面白い事なのか?」

「そりゃあそうだろうよ、陽喜は性格や見てくれが良いくせして、女っ気が葵ちゃんしかないシスコン野郎。 竜胆はあの奇抜な外見で、男っ気どころか誰かと話していること自体珍しい奴だ。 そんな2人が仲よさげに登校中お喋りしてんだから、気になるだろ」


 相変わらず阿呆だな「面白い事なのか?」の返答になってない。 それは気になることじゃないか。 


「それで、何があった?」


 裕吾は肩を組んで聞いてくる。

 僕はそれを軽く振り払い、席に座って1限の準備をする。


「別に何にもないよ、ちょっと接点が出来ただけで、何か特別な事があるわけじゃない」

「接点が出来るだけで、特別だとは思わないのかね~」


 自分の席に戻った裕吾は、ボソッと何か言ってたが良く聞こえなかった。



 *



 放課後になり、裕吾が「今日は前々から気になっていたゲームの発売日なんだ! じゃ、また明日な!」と慌ただしく教室を出て行った。僕は軽く手を振り裕吾に挨拶をする。 竜胆さんとの約束があるから、いつもよりはテキパキと荷物をまとめていると、ふと思い出した。


(そういえば、朝話したとき待ち合わせの場所決めてなかったな。 屋上にいるかな?)


 取りあえず屋上に行き先を決めて教室を出る。

 廊下を歩いていると聞こえてくるのは、教室で友達と話している生徒の声や、運動部の元気溢れる掛け声に、吹奏楽部の音出しをしている色々な楽器のバラバラな音。 放課後は色々な音が聞こえてくるから結構好きだ、静な所も好きだけど、賑やかな所は居るだけで楽しい気分になるから居心地がいい。

 屋上に着くまでに聞こえてくる色々な音に耳を傾けていたら、歩くスピードがゆっくりになってしまっていた。

 屋上のドアを開けると、竜胆さんがブルーシートの前で先生と話していた。


「はい、そうです。 けれど故意ではないんです」

「ああ、そこは疑っていない。 竜胆の普段の行動から見ても、こんなことをする奴ではないからな。 だが、事故だとしても流石にここまで派手に壊されるとお咎め無しって訳にはいかないんだ。 すまんな。 取りあえず、お前の身元保証人の方に連絡と修繕費の請求をしておく」

「はい……」

「そう落ち込むな、怪我人はいなかったんだ、不慮の事故として上には俺から掛け合って反省文程度で済むようにしておく。 保証人の人には竜胆からも連絡入れておけな」


 そう言って堤谷つつみや先生は屋上を去ろうとして、僕と目が合った。


「お、松葉、丁度良い所に来たな。 松葉も来い、言い方は悪いが加害者と被害者が丁度そろったんだ、今日でこの件片付けちまいたいからな」


 堤谷先生にそう言われて、僕と竜胆さんは目を合わせて苦笑いをした。


 その後空き教室で堤谷先生と僕と竜胆さんは昨日の出来事を話して、反省文を書かされた。


(何で僕まで反省文書かなきゃ行けないんだ)


 そんはこんなで時間は過ぎていき、気がつけば最終下校時刻になっていた。


「―――よし、反省文確かに受け取った。 すまないな、こんな時間まで残してしまって。 だがお陰でこの件は片が付く、後は俺が頑張る番だ。 大船に乗った気でいてくれ。 お疲れ様、気を付けて帰れよ」


 堤谷先生に挨拶をして学校を出た。

 竜胆さんと並んで下校していると、竜胆さんが口を開けた。


「結局何も話せませんでしたね」

「まぁ、仕方ないよ遅かれ早かれこうなってたさ。―――ねぇ、竜胆さん、良かったらLifeのID交換しない? そしたら今後の事とか相談しやすいからさ」


 スマートフォンを片手に竜胆さんへそう言ったら、少し驚いた目をしていた。


「いいですよ。 松葉君のQRコード表示してもらえますか?」

「ちょっと待ってね。 はい、お願い」


 Lifeの新しい友だちの項目に“つかさ”と表示されいた。


 [改めてこれから、よろしくお願いします。]


 と送ったら直ぐに既読が着いて


 [こちらこそ、至らないところが沢山あるでしょうが、よろしくお願いします。]


 お互い目の前に居るのに、Lifeでやり取りをしているのが可笑しくて、2人して笑ってしまった。


「目の前にいるなら、口で言えば良いのに可笑しいですね」

「確かにね、可笑しいね。 それじゃあ僕はこっちだから、後でLifeに連絡いれるね。 そこで話そう」

「はい、わかりました。 それでは、また後で」


 お互いに手を振って、別々の道を歩き始める。

 家に着くと、ご立腹の葵がソファーで膨れていた。


「お帰り、今日は随分お楽しみだったみたいだね、お兄ちゃん。 家でご飯を作って待ってる妹が居るっていうのに連絡もいれないで7時半まで帰って来ないとか」


 葵が座っているソファーの横まで移動して、テレビを消して遅れた訳を説明する。


「ただいま、葵。 ごめんな、堤谷先生に昨日の件で捕まって話しやら反省文書かされて遅くなっちゃって」

「……もうご飯出来るからお兄ちゃん温めてね、適温でお願い」


 葵がこんな事言うなんてな、終わった時点で連絡入れておけば良かったな。


「努力はする」


 その後2人で晩ご飯を食べて、一緒にオセロしたり遊んでいたら機嫌はいつの間にかいつも通りの葵に戻っていた。

 因みに葵に火傷させるわけにはいかないので、慎重に温めた晩ご飯の温度は 「生暖かい、ぬるい!」 と言われてしまった。 



 *



 風呂に入って後は寝るだけの状態にして、竜胆さんへ連絡をして今後の事をチャットでやり取りをしていた。



 [それで、協力といっても私は何をすればいいのですか?]

 [それは簡単だよ、僕に向けて竜胆さん息を吹きかけてくれればいい。 それできっの僕にとって丁度良い温度がわかるはず!]

 [えぇ~! そんな適当なんですか? ていうか、私自分の息の温度とかわからないんですけど……]

 [あ、それもそっか。 特殊な温度計とかどこかで売ってないかな?]

 [もしかしたら、三島さんなら作ってくれるかもしれません。]

 [ん? 三島さんって誰?]

 [私のマスクを作ってくれてる特殊装備技能士の人です、こだわりが強いけどいい人ですよ。]

 [それじゃあ悪いけど聞いてみてくれる? お金は出すから。]

 [私も能力の制御のためにお願いしようとしていましたから、お金は大丈夫ですよ。]

 [う~ん、けど僕も使うわけだし、半分だすよ。]

 [松葉君って結構頑固ですね(笑)

 わかりました、では半分だけいただきます。]

 [うん、よろしく。 出来上がる時と金額わかったら連絡してね。

 それじゃあ僕はもう寝るね、おやすみなさい。]

 [わかりました。

 おやすみなさい。]


 そこでやり取りを終えて、ベッドの上に寝そべる。


(僕ってそんなに頑固かな? 明日起きたら葵に聞いてみよう)


 そんなことを思いながら、僕の意識は沈んでいった――――

ふぇ~疲れた……(;´Д`)

今回は棒付き飴を舐めながら書いてました。


何だか今回はラブコメしてる気がする!!

多分!


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


次回タイトル!

   『葵ちゃんはご機嫌斜め 2』

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