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第1話 春休み

 卒業式を終え、今は春休みとなっている。 4月から大学生になるんだと思うと緊張するが、今はただ限りある春休みを堪能しようと思っている。


「そういえば、明日じゃなかったけ? お兄ちゃん」

「ん? 何が?」


 リビングのソファーでくつろいでいる葵が、顔だけ向けて話しかけてきた。


「何って、お父さんとお母さんが帰ってくるのがだよ。 忘れてたの?」

「ああ、そのことだったのか、ちゃんと覚えてるよ」

「そっか、けど、帰ってくるの久しぶりだよね。 お土産とか買ってきてくれてるかな?」

「仕事で行ってるんだから、お土産はあんまり期待しないほうがいいじゃないかな〜」


 明日は久々に両親が帰ってくるのだ。 両親は同じ仕事をしており、世界を飛び回って忙しくしているそうにしている。 詳しく仕事については聞いていないので、なをしているのかは知らないが、仕事に対する姿勢は昔から尊敬している。


(尊敬はしてるけど、出来ればもう少し頻繁に会いたいよな)


 朝ごはんの食器を洗いながら、今も仕事を頑張っているであろう両親のことについて考えていた。


(明日会えるの楽しみだな。 能力なくなったこと、まだ言ってないからビックリするかな? 喜ぶのかな? 悲しむのかな? ……少しだけ不安かも)


―――ガチャ!


「「たっだいま〜〜!!」」

「「!?」」


 いきなり大荷物の両親がドアを開けて帰ってきたのである。 俺と葵は予定と違う両親の帰宅にビックして数秒固まっていた。


「おいおい、どうしたんだよ、我が息子に、娘よ。 鳩が豆鉄砲くらったような顔をして。 久ぶりの父さんと母さんだぞ? もっと喜べよ」

「元気に仲良くしてたかしら、2人とも」

「お、おかえりなさい。 2人とも帰ってくるの明日じゃなかったの?」


 俺がそう聞くと「「ん?」」と両親は顔を見合わせた。 父さんが小首を傾げながら 「え、ちゃんと今日だって母さんから連絡行ってたろ?」 と言うと、母さんは「ああ」といって人差し指を立てた。


「ごめんなさい、時差の計算忘れてたわ」

「はぁ、そういうことね、相変わらずお母さんはおっちょこちょいね」


 ため息混じりの葵に言われた母さんは「ごめんなさいね」と言いながら、葵の頭を優しく撫でた。


「なんで撫でるの?」

「ふふ、特に理由はないけれど、強いて言うなら、そうね、一緒にいられる間くらいは、沢山スキンシップ取りたいなって思ったの」

「そう」


 葵は照れながらも嬉しそうに俯向いていた。

 微笑ましい光景を少し後ろから見ていると、父さんがガシッと肩を組んできた。


「な〜に、離れたところから微笑んでんだ息子よ」

「ん、いや。 やっぱり家族っていいなって思ってさ」

「そうだな、確かに俺もそう思うが、感想が爺臭いなお前」


 父さんに苦笑されてしまった。


(あ、父さんって葵よりも温かいな。 代謝いいのかな)


 そんなことを思っていると「なぁ、お前……なんか変わったことなかったか? もしくはいいことでもあったか?」 と尋ねられた。


「ん、能力なくなったんだ」

「はぁ〜ん、そっか。 ん? 今なんて??」


 驚愕して汗を流す父さんに最近あったことを葵と2人で説明した。



 *



「そうか、いろいろあったんだな。 けど何はともあれ、良かったな、陽喜」


 父さんは涙目になりながら、俺を肩から抱きしめた。


「やっと、やっとだ、またこうやって息子にハグしても、悲しい顔をさせずに済むんだな」

「そうね、嬉しいことだわ。 あおちゃんも今までお兄ちゃんのことを支えてくれてありがとうんね、感謝しかないわ。 私達はずっと家にいることができないから、あなた達には寂しくて、辛い思いをさせてきたわね。 そんなあなたたちが、こんなに凄いことができるようになるなんて……嬉しくて、涙が止まらないわ」


 いつになく饒舌に話す母さんは、大粒の涙を流して葵を抱きしめた。 その腕の中で小さく鼻を啜る音が聞こえた。


(こんな温かい家族で、本当によかった)


 俺も父さんの胸の中で静かに涙を流した。



 *



「よし!! みんな一頻り泣いたし、楽しい話をしよう! 久々の休暇をマイスイートホームでゆっくり骨を休めようと思っていたが、中止だ!! お祝いに家族旅行に行こう!!」

「誰も泣いてないし、けど家族旅行いいね。 どこにいくの?」


 鼻をかみながら反論する葵の言葉に、父さんは「う〜ん、母さんはかいいところ知ってるか?」と母さん頼りだった。


「そうね〜、どこかいい所といきなり言われても困ってしまうわね。 う〜ん」


 人差し指を顎に当てて空を見て悩む母さん。 少し悩んだ末に「ああ、あそこはどうかしら?」と天井を見た後に、窓へ向かって指差しをした。


「ああ、確かに家族で行ったことなかったし、いいかもな。流石は母さんだ!」

「えへへ、そうでもないわよ〜」


 父さんの言葉に照れる母。 どこかわからぬ俺と葵は「どこ?」と聞くと。


「なんだわからないか、()()()()()さ。 北太平洋上空に()()()()()()()()。 今回の家族旅行は、海上浮遊国家 ザクトゥルに行くことにしたぞ!!」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


初主人公の家族登場回です! 理想の家族像ですね〜♪


悲しいお知らせですが、2章中メインヒロインの司ちゃんはお休みします……。

3章から復活するから! 司ちゃんを忘れないであげてください、お願いします。



次回予告!

  『家族』

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