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第25話 魔法使いは笑う

『やあやあ、哀れで愉快な子羊諸君。 みんなの美人魔法使い、ダリアさんだよ。 何やら悩んでいるそうじゃないか、頭脳明晰な私が聞いてあげよう』

「げ、魔法使い、盗聴でもしてたの気持ち悪い」


 噂の性悪女(葵から聞いた)、ダリアという人から電話がかかってきたようだった。 葵は明る様に嫌悪感を出していた。


「あ、はじめまして、先日お世話になりました、松葉陽喜です。 よろしくお願いします」

「お兄ちゃん! 別にこんな奴に挨拶しなくていいんだよ!」

『何だい何だい、松葉のお嬢ちゃん、そんなに私君に酷いことしたかな? 君のお兄さんのトラウマ克服に尽力してあげたじゃないか』


 なんとも掴みどころのない喋り方をする、ダリアさん。 喋り方が気に入らないのか、葵のこめかみに青筋が立っている。


『君たち3人が揃っているということは、松葉陽喜君のトラウマ解決の糸口が掴めず悩んでいるのかな〜?』

「流石ですね、ダリアさん。 そのとおりなんです。 どうしようか悩んでいて、なにか良い案はありませんか?」

「ちょ、ちょっと竜胆先輩! いきなりオープンに喋らないでくださいよ!」


プリプリと怒る葵の頭に手を乗せて撫でる。

普段は冷静で、頭のいい葵だが、一度感情が高ぶると落ち着くのに時間がかかる。 そんな時には撫でるのがいい。 感情が高ぶった葵も、ほらこの通り、落ち着きを取り戻して……恥ずかしそうにこちらを睨んでいた。


「恥ずかしいよ、お兄ちゃん」

「一旦落ち着いて葵。 あと怖いから睨まないで。 笑顔のほうが可愛いよ」


―――ボン!


 そんな音が聞こえそうなほど、一気に葵の顔は赤くなった。


『すけこましめ』

「……」


 竜胆さんにジト目で見られた。 ちょっと気恥ずかしかったので、コホンっとわざとらしく咳払いをした。


「さ、さあ、話を続けましよう。 ダリアさんはなにかいい案はありますかね?」

『話のそらし方が下手だね〜君。 まぁいい。 そうだね、いい案はあるよ』

「本当ですか!」

『あぁ、簡単な話さ、心の中の松葉陽喜に勝てないのであれば、()を用意すればいい』


(鏡? どういうことだ)


 向かいにある鏡を見た僕は、ハッとした。


「そうか、鏡か」

『お、気がついたようだね』

「はい、つまり、僕が()()()()をすればいいんだ」


 心の中の僕が強いのならば同じ土俵に立てばいい。 僕が僕の中に入れば、竜胆さんの話のように自由にものを出したりできるはず。 僕も同じ僕なのだから。


「え? そんなことできるの? お兄ちゃんの中に、お兄ちゃんが入るなんて」

『あぁ、できるとも。 竜胆君が遭遇した松葉陽喜は……君たちにわかりやすく言うのなら、松葉陽喜の知性だと思うといい。 そして目の前が感情の松葉陽喜だ。 厳密に言えば2つは別物だからなんとかなるのさ。 まあ、小難しい話は今はいい。 結論、松葉陽喜が松葉陽喜の中に入るのは可能だ。 さぁ、私のいい案は察しがついたろ、どうするんだい? やるか、やらないのか』


 ダリアさんが少し楽しそうな声で言っていた。 まるで僕らがどんな答えを出すか楽しみで仕方がないといった声音だった。


「もちろん、やります」

「もっとよく考えたのお兄ちゃん? 前回の竜胆先輩みたいになるかもしれないんだよ? 危ないんだよ?」

「そうですよ、松葉君まで怖い思いをするのは、嫌です」


 僕の方を見る二人の表情や声音色から、本当に心配してくれているのがひしひしと伝わってくる。 とても嬉しいけど、やっぱり僕がやらないといけないと思った。


(二人にだけ大変な思いはさせたくない、これは僕の問題なんだから)


『本当に、いいんだね? 少年』

「はい、お願いします」


 ダリアさんの持つスマホがカタカタ揺れて、ダリアさんの声が少し漏れていた。


『ふふっふ、ふふあははははは!! いや〜失礼、ここで笑うと君の覚悟を笑ったと思われそうです堪えてたんだがね。 抑えきれなかったよ、君の覚悟を笑ったわけではないことはわかって欲しい。

 ああ、けど、楽しくなりそうだ! 君たちといると本当に飽きないね! いいだろう、その願い承った。

 では、明日の朝8時に君たちの学校の屋上で待っているよ。 また私を楽しませておくれよ、じゃあね〜』


――ツーツー


 上機嫌で話す、魔法使いからの電話は切れた。

 僕は一度小さく息を吐き、心を落ち着けソファーから立ち上がり、二人の顔を見て言った。


「勝手に決めてごめん、けど僕やるよ。 勝手だけど2人の力を貸して欲しい」

「真剣な顔をして何を言い出すかと思えば……当たりませでしょお兄ちゃん」

 

 葵は呆れながらそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。 本当に僕の妹なのか疑わしいくらいに頼もしい。

 竜胆さんは僕の手を両手で掴んで、真剣な眼差しで口を開いた。


「勿論ですよ、どんなことでも力になります。 だからこれからは遠慮なく頼ってね」


 言ったあとに、恥ずかしくなったようで、頬を染めて「あはは」と苦笑いしていた。


「てい!! 何どさくさに紛れてお兄ちゃんの手を握っているんでか竜胆先輩!」


 僕と竜胆さんの手の上からチョップして断ち切った葵は、僕と竜胆さんの前に立って両手を広げて竜胆さんを睨んでい言った。 まるで威嚇している猫のようだった。


「ご、ごめんね、つい」

「つい〜、じゃないですよ! 油断も隙もないあったもんじゃないですね全く!」

「まぁ、まぁ、そんなに葵も怒らないの。

 言いそびれちゃったけど、ありがとうね二人とも。 明日はよろしくね」


 改めて僕が言った言葉に二人は「はい!」「またせて!」と同時に元気に言ってくれた。

 

「被さないで下さい、竜胆先輩!」

「うう、ごめんね」

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


いよいよい1章ラストが見えてきました!

これからもよろしくお願いします。


次回予告!

  『対面』

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