第24話 作戦会議?
年末年始のお泊り会の後、僕ら3人は今……カラオケ店にいる。
「今年が始まって初めてのカラオケだよ、お兄ちゃん。 2人で楽しもうね」
「ナチュラルに私をのけ者にしないでくださいよ、妹さん」
「しっし、竜胆先輩はお家に帰って雑煮でも一人ですすっててください」
「ひどいですよ〜」
5から6人は入れるカラオケルームにいるが、僕を中心に左に葵、右に竜胆さんが座っている。 僕が適当に座ると、まず葵が僕の左側に座り腕に抱きついてきた。 それを見ていた竜胆さんは初めは1人分離れた所に座っていたが徐々に近づいてきた。
葵と竜胆さんが言い争いをしている最中僕は何故ここに来ることになったのかを1人考えていた。
*
カラオケルームに入る1時間前に遡る。
僕と葵は2日間お世話になった竜胆さんにお礼を言って、帰路につこうとしていた。
「り、竜胆さん、泊めててくれれてありがとう」
「どうしたのお兄ちゃん? 『泊めてくれれて』になってるよ。 そういえば、今朝から二人揃って変な感じだったよね? 昨日私の知らない間になにかあったの?」
疑惑の眼差しを向けてくる葵から視線をそれす。
「い、いや。 特になんにもないよ?」
「怪しすぎるでしょ、ごまかせてるとでも?」
「ごまかすも何も、何もないんだから。 ね、竜胆さん」
「え、は、はい! なんにもありません!」
竜胆さんはそういうと、頬を緩ませてしまった。 葵がそれを見逃すはずもなく「ほら、やっぱり! 絶対なにかあったよ! 白状しなさいお兄ちゃん!」と再び迫ってきた。
葵の質問攻めをなんとかやり過ごし、やっと帰れるとこになった。
竜胆さんに再び挨拶を済ませて、家を出ようとすると、葵が竜胆さんに呼び止められた。
「あ、妹さん。 帰られる前に少しいいですか?」
「ん? どうしたんですか、竜胆先輩」
「いえ、今度時間があるときにまたトラウマ解消の対策を話し合いたいなと思いまして」
「ああ、そうですね前回は完敗で尻尾巻いて引きこもってたんですもんね。 改めてどうするか決めないといけませんね」
「……妹さん辛辣です」
「事実ですから」
2人がコソコソと話しをしているのを尻目に靴紐を結んでいたら「お兄ちゃん」と葵に声をかけられた。
「ん? どうした葵」
「これから時間ある? 寄り道してもいいかな?」
「まだお昼すぎだし大丈夫だよ。 買い物か何か?」
荷物持ちでもさせられるのか? と思った僕は葵に聞くと「ううん、今日は違うの、かこれからカラオケに行こうと思って、3人で」と言った。
「「カラオケ?」」
「そ、カラオケ。 竜胆先輩は文句ないですよね?」
「は、はい、文句なんてありません」
葵が振り向き竜胆さんに確認をすると、ぺこぺこと頭を下げていた。
竜胆さんは葵に何か弱みでも握られているのかな? まあ、葵は使えるものは使うが悪いことはしないから大丈夫かな。
「お兄ちゃんは?」
「あ、僕も行くの?」
「あったりまえだよ、お兄ちゃんのことだもん話し合いに入れないとね」
「わかったよ」
葵と竜胆さんは素早く靴を履き何処のカラオケに行くかを決めている。
2人でスマホを開き地図を見ながら店を探している姿を見て、微笑ましく思い何も言わずに静かに眺めていた。
「お兄ちゃん? 聞いている? 近くに良さそうなカラオケ店あったから、行くよ」
「い、行いきましょう松葉君」
葵が堂々と僕へ手を伸ばし、竜胆さんも少し恥ずかしそうに手を伸ばして来てくれた。 どっちの手を掴むか少しの迷いがあったが、僕は特に何も考えず、2人の手を取った。 僕は2人の力を借りて立ち上がって外に出た。
―――そして、カラオケルームで2人に挟まれている今に至る。
結局何で僕がここにいるのかがわからないでいる。
1人で悩んでいると、葵がタッチパネルを渡してきた。
「はい、次はお兄ちゃんね」
「ねぇ、葵。 歌うのもいいんだけど、僕は何でカラオケに来たの?」
「それは……あ、お兄ちゃんのトラウマ解消の話し合いにだった」
(今「あ」って言わなかった? 本題忘れてカラオケ楽しんでたな、まあいいけど)
「そっか、僕の能力のことを話し合いに来たんだね」
「そうそう、そうなんだよお兄ちゃん!」
「……対策考えましょう、妹さん」
竜胆さんがジト目で一瞬葵を見て言った。
「わ、わかった、じゃあ本題に入ろう。 今日はお兄ちゃんの能力をどうやったら消せるのか、即ちどうしたらお兄ちゃんのトラウマを解消できるのかを考えよう!」
マイクを片手に葵は立ち上がって言った。
「と言っても何をすればいいのかわからないのが現状。 まずは情報の共有から初めましょう。 ではまず竜胆先輩、以前お兄ちゃんの中に入ってどん感じだったのか話してもらえますか?」
葵がマイクを竜胆さんに渡した。 竜胆さんは以前のことを思い出して顔を一瞬曇らせたが、すぐに元に戻り葵からマイクを受け取って、そっと電源を切りマイクを膝において話し始めた。
「わかりました。 まず心の中に入った私が目にしたのは闇です。 私の足元以外は真っ暗闇でした、しばらく心の中を歩いて松葉君を探しましたけど、見つからずにいたので試しに名前を呼んでみたんです、そうしたら、目の前に松葉君がいきなり現れました。 それで、松葉君と話したのですが、心の中の松葉君も優しかったですよ。 私と戦うのをあまり良い気持ちはしなかったのでしょう少し悲しそうな顔をしていました」
膝上においたマイクを眺めて竜胆さんは語ってくれた。
僕の心の中で戦うことになった竜胆さんと心の僕は、一方的なまでの完敗だったそうだ。 心の僕は突然大きな刃を出現させ操ったり、指を鳴らして大鎌を出して途轍もなく速く移動したりしていたらしい。
(勝てる気がしないな。 僕はただ熱に強いだけだし。 どうしたらいいかな)
腕組をして考える僕ら。
カラオケのCMが流れるばかりで状況を打破する考えは誰も浮かばなかった。
『♪〜♫〜』
「誰かのスマホなってるよ?」
スマホの着信音に気がついた僕が言うと、二人は自分のスマホを確認した。
「あ、私でした。
もしもし? どちら様でしょうか?」
スマホを片手に話し始める竜胆さんは、電話での社交辞令を口にしたあと、驚いていた。
「え! ダ、ダリアさん? どうして私の番号を……、あ、そういえば私から電話したことありましたね。 それでご要件はなんですか? え、スピーカーに、はい、わかりました」
どうやらダリアさんの指示でスマホを机の上に置き、スピーカーマークを押す竜胆さん。
『やあやあ、哀れで愉快な子羊諸君。 みんなの美人魔法使い、ダリアさんだよ。 何やら悩んでいるそうじゃないか、頭脳明晰な私が聞いてあげよう』
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
次回もよろしくお願いします!
次回予告!
『魔法使いは笑う』




