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第19話 初詣

今回もよろしくお願いします。

 2人が風呂から上がり私服に着替えて初詣に行く。 竜胆さんの親御さんも忙しく自宅にいないので、帰省はしないとのこと。 このままお正月は竜胆家に泊まることになった(葵が無理くり取り付けた)。


「ま、まさかこんなことになるなんて(嬉しような、そうでないような)」

「何か問題があるんですか? 竜胆先輩?」

「ううん、問題はないよ」


(やっぱりお風呂の前後で、2人の関係が変わっているような。 お風呂で何があったんだ?)


 2人の変化に気なるも、葵に聞いても「乙女の秘密をずけずけ聞かないの」と言われてしまっているので、諦めるしかない。 深夜23時過ぎ、さっき見ていたテレビのニュースでは、気温はかなり低くなると言っていた。 僕が冷えていると感じるので、今は氷点下だろう。


「今年の大晦日は冷えるね、2人とも寒くない? 大丈夫? カイロとかいる?」

「そんなもの持ってきてたの、お兄ちゃん。 嬉しいけど、大丈夫! 私はお兄ちゃんにくっつくから」


 葵が僕の右腕に抱きついてくる。 妹に抱きつかれて少し嬉しいお兄ちゃん心。


「転ばないようにな」


 僕の言葉を聞いて、葵は笑顔で頷いた。

 甘えん坊の妹だな。 そこが可愛いのだけどね。


「竜胆さんは大丈夫?」


 葵の横にいる竜胆さんに話しかける。


「あ、は、はい、大丈夫です」


 俯きながら言った。 竜胆さんはこの前のように僕を見て叫ぶことは無いが、まだ少し怖いそうなので葵の横を歩いている。


「そう、寒くなったら遠慮なく言ってね」

「ありがとう、ございます」


 軽い言葉のやり取り、以前は色々話すことが出来たけど今は長く続かない。 他の人とはいつもこんな感じで、短い会話しかしないのだけれど、竜胆さんは友達だからとても寂しい気持ちになる。 まだ神社には少しあるので、寂しい気持ちを紛らわすために話を変えた。


「………今年はいろいろあったね」

「そうだね、お兄ちゃん」

「………」


 夜空に浮かぶ月を眺めて呟いた。

 竜胆さんと出会い、攫われて葵に助けられて、2人が僕の為に頑張ってくれた。 とてもいい年だったなと僕は思った。 この2ヶ月は怖いこともあったけど、人の優しさが感じられる日々だった。


「もう直ぐ2028年も終るね」

「来年はどんな年になるか楽しみだね、お兄ちゃん」

「そうだね。 けど、どんな年になっても、二人が居ればきっと楽しい年になるよ」


 僕の発言を聞いて2人は、一度僕のことを見てから、竜胆さんは右目を前髪で隠して少し俯き、葵は「ふ~ん」と言った。


(あれ? 思ってたリアクションと違うな。 もっとこう、そうだね的な言葉が返ってくると思ってたのに、スルーされてしまった)


 スルーされた気恥ずかしさがあり、2人の顔を見れずにいた。 暫く無言で歩いていくと賑やかな音が聞こえて来た。


「あ、お、お兄ちゃん、出店見えてきたよ。 私さお腹空いてきちゃったから何か買って」

「ん? ああ、そうだね。 何か買おうか」


 葵に言われ視線を前に戻す。 蒟蒻串に甘酒、牛串、お好み焼き、綿飴いろいろあった。 どれも美味しそうで迷ってしまったが、少し風が出てきたので、湯気が出ている焼きそばと甘酒を買った。

 出店近くは人が大勢いてゆっくり食べられる所が無いので、少し神社から離れた場所に設置されていたベンチを見つけて腰掛ける。


「座れる場所あってよかったね」

「そうだな」


 三人で座り、手を合わせた。


「「「いただきます」」」

「焼きそば暖かいですね」

「美味しい! 何でこういう焼きそばって美味しく感じるんだろうね。 家に持って帰って食べても美味しくないのに」


 葵が焼きそばを食べながら不思議そうに首をかしげた。


「それはきっと、食べている場所の雰囲気とかに影響されてるんじゃないかな」

「そっか、楽しんでるから美味しいってことなんだね」

「きっと、誰と食べているかも、関係している、と思います」


 葵の隣で竜胆さんが答えた。


(そう答えてくれるってことは、竜胆さんも少しは楽しんでくれているってことかな。 そうなら嬉しいな)


 嬉しい気持ちになって焼きそばを食べ、甘酒を飲む。


(この甘酒や焼きそばも、温度が感じられたらもっと美味、しい、の、か、な……)


 目の前にある焼きそばと甘酒を見ながら考えていると、社のほうでカウントダウンをする声が聞こえていた。


―――5!


「もうこんな時間になっていたんですね」


―――4!


「あ、今年は年越しそばじゃなくて、年越し焼きそばになちゃった」


―――3!


「…………………」


―――2!


「ちょっと、お、お兄ちゃん? 聞こえてる?」


―――1!


「くぅ~~~」


―――Happy New Year!!


「って、寝てるし!?」


 陽喜は突如として現れた眠気に抗いきれず、深い眠りについてしまったのだった。

19話最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


学生時代に私がやってみたかった年越しですね~。

門限があって出来ない願いでしたが。

その分、家族と一緒にテレビ見ながらゆっくり過ごしてました。


因みに私は年越しそば、年明け前に食べる派です。 時間的にね(汗)

あたたか~いそばに、七味ととろろが個人的にジャスティス!!


次回予告!

   『願い』

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