第14話 心象世界へ
松葉君の妹さんと話し合い後、私はダリアさんと電話で話していた。
『どうやら、上手く事は運んだようでなによりだよ。 それで何か私にようかな?』
「もうわかっているとお思いですが、これからが本番なんです。 松葉君を救いに行く」
『救いに行く、か。 君に声をかけたときから一応考えてはいたんだけど、私のプラン聞いてみるきはあるかい?』
(流石は魔法使い、そんな時からここまで見通せていたなんて。 まだ、気に入らない部分はあるけど、考えても良い方が思いつかないから電話をかけたのだから、良いプランなら願ってもない)
「はい、お願いします」
『良い返事が聞けて嬉しいよ』
ダリアさんは本当に嬉しかったようで、上機嫌にプランを聞かせてくれた。
魔法使い、ダリア・アダモフが考えたプランとは魔法を使い松葉君の深層心理へ潜り、本能の松葉君と対話などをして、解決しようっというものだった。
「なんだかざっくりし過ぎじゃないですか? 本当に上手く行くんですかね」
『そんなのわからないさ。 深層心理へ行くのは手伝ってあげるけど、その先は君1人、私は手を出す気はないわよ。 だから、君が望む結果が得られか否かは、君次第っというわけさ。
まぁ一応私もハッピーエンドになるように祈っておくよ。 それじゃあ、決行日が決まったらまた電話してね、バイバ~イ』
―――ツーツーツー
この人の軽い感じ少し苦手だなっと思いつつも、確かにっと納得する部分もある。 ダリアさんに頼っていてはいけない、あの人に深い信用を寄せてはいけない気がするし、今回は私が頑張らないといけないのは確かだ。
(明日にでも、妹さんといつするか話してみよう)
これからのことに不安と緊張感じ、胸をドキドキさせながら眠りについた。
*
Side : 陽喜
最近妹の葵と竜胆さんが仲がいい様に見える。
放課後や休み時間に2人で話しているところを見かける。 近くを通りかかった時に、僕が何の話してるのっと聞くと「なんでもないよお兄ちゃん」「そうです、そうです、ただの世間話ですよ」っといわれて何か誤魔化されているような気がする。
(何だかちょっと僕だけ蚊帳の外って感じで、寂しいな)
竜胆さんとの特訓も最近はやっていない。
僕のここ最近の放課後は1人か裕吾と一緒に下校するかの2パターンで少し味気ない、だからなのか、その反動で自宅では葵と今まで以上に遊ぶようになった。
「葵、今日もご飯美味しかったよ。 食休みに一緒にゲームでもしない? 大戦乱スマッシュシスターズの新作買ったんだよ、葵好きだったよね」
僕は晩ご飯の食器を洗いながらソファーでくつろいでスマホをいじっている葵に話かける。
「やった~! やるやる! 準備しておくから早くこっち来てね、お兄ちゃん」
葵はソファーから飛び起き、ゲームの準備を始めた。
僕もパパッと洗物を済ませて、2人分のジュースを持ってソファーに座る。
「はい、オレンジジュース」
「ありがとう、お兄ちゃん。 さあ、やるよ! 今夜は寝かさないよ、お兄ちゃん!」
お気に入りのゲームの新作でテンションが上がった葵と一緒に夜通し対戦ゲームをして過ごした。
*
―――カチャ、カチャ、カチャ、ガチャ、ガチャ
コントローラーを押す音とキャラクターのバトルボイスがリビング響く。
朝日がカーテンの隙間から差してきた。
『Win』
「う~ん、そろそろ終わりにする? 今日は学校無いとはいえ、昼くらいまで寝てよう」
「そうだね、丁度勝負も着いたし。 お兄ちゃ~ん、部屋まで運んで~。 流石に眠くてもう指しか動かせない」
横にいた僕に撓垂れかかってくる葵。 仕方ないのでゲーム機はそのままにして、葵をお姫様抱っこする。
「流石はお兄ちゃん、妹の扱いが良くわかってるね。 そのまま、頼むよお兄ちゃん」
「はいはい、わかりましたよ」
本当に眠かったようで、僕の腕の中でうとうとしている葵。 なるべく揺らさないようにゆっくり歩いて部屋に向かう。
(お姫様抱っこ中に部屋のドア開けるの、難しいっ!)
葵の部屋に入り、ベッドの上で降ろして布団をかける。
「それじゃあ、お昼頃に起こしに来るね。 今日は外に食べに行こうか」
そう言って僕も部屋に戻ろうとすると、
―――ぎゅ
「起きる時間も同じなんだし、一緒に寝ちゃおうよ。 ダメ?」
服の裾を掴みそ甘えた声で言ってくる葵。
(何だか今日はいつも以上に甘えっ子な気がするな)
「仕方ないな、今日だけだよ? 葵は甘えっ子なだね」
「なっ、甘えっ子じゃないよ! ただ、お兄ちゃんが最近寂しそうにしてるから、慰め代わりに添い寝してあげようかな~って思っただけだよ」
「………全く、葵には敵わないよ」
昔から葵には隠し事はできない。 何でか直ぐに僕の気持ちを察知してくれる。
(葵には多分、一生頭上がんないんだろうな)
僕は葵のベッドに入って、葵と向き合って目を瞑る。
「ありがとう、お兄ちゃん。 おやすみなさい」
「おやすみ、葵」
そうして僕は徹夜でゲームした疲れがどっと出たのかすぐに寝入ってしまった。
*
Side : 葵
「本当………わかりやすいんだから」
ベッドの中に入ってきた途端、寝入ってしまった兄の頬をゆっくり撫でる。
竜胆先輩が行ってた通り兄は時折寂しそうな顔になる。 この顔は何年経っても慣れない、胸の奥が締め付けられたようになる。 あの時私が泣かなければ、兄がホットケーキを作ろうとはしなかったどろう。 あの時私がもう少し大人ならば、早く火を消せていたかもしれない。 後悔と罪の意識がじわじわと奥底から溢れて来る。
(苦しいよ、お兄ちゃん)
(でも、もう直ぐ、私たちで何とかしてあげるからね。 もう、そんな顔させないからね)
兄の乱れた前髪を左右に指で分ける。
竜胆先輩と決めた、来るべき日の決意を固めるために、兄の頬を右手で軽く触りながら、反対の頬にそっとキスをした。
*
Side : 陽喜
葵と夜通しゲームをした日から、数日後の放課後、僕は竜胆さんに屋上に呼ばれていた。
まだ、明るい放課後の屋上へ歩いていく。
屋上の扉を開けると、竜胆さんと葵、もう1人知らない不思議な格好をした女性がいた。
「ん、どういうこと? なんで葵もいるの? それと、隣の方はどなた?」
「色々聞きたいみたいのはわかりすけど、事情は用が済んだら話します。 でもまずは、松葉君ごめんなさい。 叱責などは後ほど確り聞きますから、まずは―――ダリアさん、お願いします」
いきなり竜胆さんに謝られて、困惑していると、ダリアさんと呼ばれていた不思議な女性が半歩前に出て、何かを漫画である魔法の呪文の様なものを唱え始めた。
「我は人の心の奥底へ無断で踏み込む開拓者なり、深淵を覗くものよ我を導け―――『迷宮への篝火』」
不思議な女性の手には炎の玉が浮いていた。
「術式凍結、使用者改変”リンドウ ツカサ”」
炎の玉は竜胆さんの方にゆっくりと進んでいった。
「使用権限の譲渡、使用者改変、成功。 術式凍結解除。 行ってらっしゃい」
竜胆さんの掌で浮いている火の玉が、球体から紐に変化し竜胆さんの全身を覆う炎の繭のようになった。 そして、繭から1本の炎の紐が僕の方に伸びてきて、左手の小指に巻き付いた。
「何が起きているの?」
僕は状況が呑み込めず戸惑っていると、急に眠気が襲い、フラフラになり倒れそうになる。
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。 危ない事ではないから。 起きたらきっと全部終わってるよ」
倒れそうになった僕を支えて、ゆっくりと体を降ろし自分の太ももの上に乗せ膝枕をしていた。
近くに葵がいることに安心して、ゆっくりと僕の意識は闇に落ちていった。
投稿遅くなりすみませんm(_ _)m
これからも不定期に更新しますが、応援していただけると嬉しいです(*^-^*)
次回予告!
『松葉陽喜』




