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第12話 2人の想い

凄く久し振りの投稿になります!

お待たせしてもうしわけありませんでした!

今回もよろしくお願いします。

 見渡す限りの白く広い空間、そこに浮遊する神々しい輝きを放つ少女。

 私は彼女から少し距離を取って、大きく空気を吸って肺に溜める。 空間を埋め尽くし全体に炎が広がり逃げ場を無くす様に息を吐く。


「なっ! くっ!!」


 いきなりで虚を突かれた妹さんは後方へ大きく飛び退きながら、翼を大きくはためかせて風圧で炎の勢いを抑えて無傷で回避する。

 流石に炎による広範囲攻撃は簡単に避けられてしまう。

 私の攻撃を避けてから、もう少し上空へ上がり体勢を立て直してスカートの埃を払い、私を見下ろしてくる。


「少し焦ったけれど、その程度で私を傷つけられるとは思わない方が良いですよ先輩。 次は私の番ですね。 これは挨拶代わりです、軽くいなして下さいね。

 蒼天()よ! 偉大なる天の支配者よ()! 我が声に耳を傾け御力を御貸し下さいませ!」


 私の【竜の息吹】で所々焦げた白い空間に、幾重もの輝ける光の矢が私に矛先を向けて出現していく。


(避けなきゃ、マズイ!)


 妹さんの攻撃を止めようと、手筒を作り口元に当てて炎の範囲を抑え、妹さんに向けて先程よりも高温にした炎を吐く。


「しまっ! くっ、熱い! い、い、一切の障害を粉砕し! 我が愛しき者を救い、邪なるものを滅せよ!!

 彼女に慈悲を―――『救済(Gospel)(of)福音(Salvation)』」


 不老であるっても、見た目が神々しくても痛みは感じるはず。 そのれなに、一度は炎に身をよじらせ、痛みに顔を歪ませ言葉も一瞬止まったが直ぐに立て直した。


(松葉君のため………だよね、やっぱり。 凄いな)


 そして回廊の天井を埋め尽くさん程の黄金の矢が、私目がけて一斉に飛来してきた。


(あの矢が炎で溶けて無くなるとも思えない。

 けど、負けたくないっ!!!)




 ――――ズガッガッガッガッ!!!!!




 白廊の壁、床が黄金の矢によって穴が開き、粉々に砕き、煙が上がってくる。


「何もしなかったのかな? 息巻いていた割には味気ない終わりだったね先輩」


 ――ガラッ


「なに? っ!?」

「いっ! い、痛くない? どういうこと?」


 白牢を易々と粉砕する黄金の矢に蜂の巣にされたと思ったけれど、痛みには無く、それどころが普段よりも力が湧き上がってくる様にすら感じる。

 怪我がないか腕を目視で確認してみると、そこには真紅の鱗に覆われて、指先には鋭く尖った爪があった。 全身を見える範囲でみてみると、お腹以外は鱗に覆われ、背中には大きな翼が生えているし、自分の意思で動かせる。 鱗のないお腹には不思議な模様があった。


(こ、これって! ド、ド、ド、ド、ドラゴン!? 私ドラゴンになってる!?)


「どうなってるの?! 何で? 妹さんが何かしたの?」

「い、いいえ。 私は何もしていません。

 先輩も能力の一部しか見せていなかったんですね。 驚きはしましたが、それだけです。 図体が大きくなって攻撃が当てやすくなりました」

「どういうことなの? 何で私」


『ほーう、竜胆君それはきっと《進化》だろうね。 能力の進化は別段珍しくはないが、進化の瞬間に出会うことは初めてだよ。 良い物をみさせて貰った』


 (進化? 私の能力が進化したの?)


「能力の一部隠蔽ではなく、《進化》ですか。 けれど、関係ありませんね、進化しようがしなかろうが戦って勝つだけです。 貴女の状態なんて些細な問題です。 しかし《進化》したと言うことは先程よりは本気になっても良いかもしれませんね。 次は立っていられますかね、竜胆先輩!」


 妹さんが何も持っていない手で弓を構える様なポーズをとると、徐々に妹さんの手には発光する何かが集まってきて弓と矢の形に変わっていく。 完全に弓と矢が手に握られ私を射貫く為に構えている。 その時妹さんと目が一瞬合った――


 (いけない! あの矢はさっきのとは別格だ、放たれればこの体では避けきれない!)


 妹さんの目から伝わる凄味の様な物を感じ取ると同時に私は辺りの空気を吸い尽くさん程の勢いで深呼吸して、大きくなったお腹に目一杯溜めた。

 そして、一気に溜め込んだ全てを炎にして吹き出した。

 すると妹さんは、声を上げる間もなく――――――塵になった。


「え、妹さん?」


 血の気が引いて行くのがわかるほどに焦り、驚愕した。


「―――やってくれましたね。 先輩」


(痛みを感じる事も、何が起きたかも理解できなかった。 気が付くと死んでいて蘇生していた。 強くなったって話じゃない、さっきの炎とは次元が違う。 まだ痛みを感じる暇が無いのが救いだ、仮にジワジワと体を焦がされていたら肉体的には再生して耐えられるけど、流石に精神が耐えられない)

(え、どういうこと!? 妹さんが塵になって、塵が妹さんになった?! 死んでないのはほっとしたけど、再生するとか! 勝てる気がしないよ!)


「私じゃなければ死んでいましたよ、まったく」


 妹さんは塵から瞬時に再生して距離を取りながら、素早く矢を構えてい連射してくる。


「わっ! あ、あれ? 痛くない」


 放たれた黄金の矢は私の鱗に辺りキンッと音を立てて突き刺さることなく弾かれて地面に落ちる。

 少し押された感覚はあったけど、痛みは全く無い。


「嘘、かすり傷一つ出来ないなんて。 ………ただ図体が大きくなっただけではなく、かなり強くなってますね。 改めましょう、貴女には本気で挑まないといけないみたいですね。 ただ乱発しても決定打には程遠いですね」


 動きを止め、黄金の瞳を閉じ深呼吸する。 妹さんの手には今までの比にならない程、眩い光を放つ矢が現れていた。


「神よ、現世全ての悪を穿ち、貫く力を此処に!!

 これを先の矢と同格と思わない方が良いですよ、質を高め威力を飛躍的に向上させていますから。 その硬い鱗も()()射貫きます。 神の加護と言われるものです。 この矢は今、形ある全てのものを射貫く」


 眩い矢を持ちピンっと背筋を伸ばして、白牢の瓦礫の上から見下ろす彼女の目は、神の加護を受けている矢よりも強い光を放つ、冷たく鋭いモノだった。


 (私の体は今全長約3メートル、横幅は両翼を合わせると約6メートル強、この白牢の高さは約5メートル、横幅約8メートル。 ギリギリ過ぎてまともな回避行動が取れない。 妹さんに体の中央を狙われたら一巻の終わり。

 この体では避けきれない、妹さんの全身から伝わってくる気迫、堂々たる言動、今まで対峙した感じから嘘は付いていないと確信している。 この現状を打開できる策は何か無いだろうか、なにか



 ―――そうだ、昔何かの本に獣化能力は自分のイメージしやすい言葉を声に出すことで、獣化中にその特徴的な身体機能や部位を遺し”獣人化”することが出来るっと読んだことがある。 今は、それに賭けるしかない。

 出来なければ”死”あるのみ、死ねば8割の確立で精神は肉体へと戻らずに植物状態の人になって、この精神がどこへ行くのかはわからない。

 なにより、元の世界に戻れないと彼に会えなくなってしまう、それは嫌だし、そうなってしまえば松葉君を救えない。

 松葉君に直接助けを求められたわけじゃない、私がただ好きな人に心の底から笑っていて欲しい、ただそう思うから、戦っているんだ。 協力してもらうと断言してしまった以上、無様に負けるわけにはいかない、妹さんに認めてもらうまでは! やるしかない、頑張れ私!)



形態(Mode )変化(change)竜人化(Dragonewt)!!』



 私の体はカッ!!っと真紅に輝き徐々に体が小さく、人の形に戻っていく。

 身体の重要器官を守るように真紅の鱗が展開して、手足の爪は大きく鋭利になっている、背中には両翼合わせて約2メートル強の大翼、頭には鋭い2本の角、お尻には太く長い尻尾、おへそには竜化の時と同じ模様が現れた形で私の体は変容した。

 衣服は竜化した時に引き裂かれてしまったため、鱗に覆われいない部分は素肌になっている。 少し気恥ずかしさはあれど、大体は鱗に覆われているため、今は気にしない。


 (何はともあれ、覚醒した直後に竜人化が成功してよかった! 人の時よりも機動力・戦闘能力が飛躍的に向上し、竜化の時よりも体が小さくなり小回りが利く様になった今の状態なら、あの矢の回避もきっと出来る!)


「消えなさいッ!!」


 ―――シュ!!!!


 光の矢が空気を切り凄まじい速さで迫ってきた。

 私も力の限り床を蹴り、不器用ながらも大翼を広げて、妹さんの方へ向かい全力で飛んだ。

 ギリギリまで瞬きせずに矢から目を逸らさず、眼前で翼を使い素早く全身を傾け紙一重で回避した。


「ッ!」


 回避はできたけど、左頬と翼に少しかすめて出血してしまった。


 (痛い! 少し切れただけだけど、傷口が焼けるように熱い!)



 ―――頬を伝う血の熱さが、痛みが

 ―――私の心の奥底にある()()が沸々と静かに湧き上がってきていた



 (凄く痛い、だけど、避けることはできる。 回避が出来れば戦える!)


 回避してそのまま、妹さんへ全速力で追突していく。

 接触まであと数秒に差し迫った今、私は肺に空気を溜めてブレスの準備をする。


 (竜化の時よりも肺が小さくなっているため、範囲は落ちてしまうが能力はそのままのはず!)


 さっき妹さんが一瞬で塵になったのは、ただ温度が上がっただけじゃ瞬時に塵にはならない、きっと進化した竜化の能力により【竜の息吹】に付加価値が付与されたと私は思っている。 炎に触れた部分が塵になるのか、炎に少しでも触れた物体そのもの全体が塵になるのかはわからないけれどとりあえず、塵にしたいものを全部炎で覆えば問題ない。


 (直線状にいる妹さんに向けてブレスを吐く!)


「そのブレスはもう受けませんよ!」


 接触寸前に妹さんは自分の目の前に数本の長い矢を縦一列に展開して、高速回転して大きな盾のようにして、先頭から順に塵になりながらもブレスを受け止めきった。


「これなら、どうです!」


 最後の矢の盾を貫通して、特大の光の矢が迫ってきた。


(息を全て吐ききってしまって直ぐにまた炎を吐くことが出来ない! 避けようにも近すぎるし、大きすぎる! これは、避けきれない!)

約3か月振りの更新です。

覚えていない人もいるでしょう、そんな人はよかったら最初から呼んでみてください!


次回予告!

  『兄に似ている人』

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