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第11話 魔法使い

今回もよろしくお願いします。

「私の名前はダリア・アダモフ。 ()()使()()さ」


 どうしよう、凄く胡散臭い。 黙っていた方がそれっぽい雰囲気出てのに。


「胡散臭いとは失礼な」

「こ、心を読まないです下さい!」


 この人の前では変なこと考えないようにしよう。


「それで、さっきの私の提案だけど、どうする? 今回は無料で手助けしよう。 君は松葉君とやらを助けたいんだよね? 詳しく教えてくれたら、何か力になれるかもしれない、良かったら話してくれないかな?」


 出会ったばかりのこの人に話しても良いだろうか、そもそもこの人が私に力を貸してくれる理由はなんなの? それにこの人が名乗ったダリア・アダモフという名前も本当かどうかすら判らない。 やっぱり信用が出来ない、話すべきじゃない。


「ふむふむ、いや~わかるよ、確かに突然現れた謎の美女を直ぐに信用してあれこれ話すのは良くないことだよ。 君の信用を勝ち取るために、私の事を教えよう。 まず君に力を貸す理由だけど、ズバリ言うと暇潰しだね。 悩んでいる君には失礼なことだけど、私は今ちょっと暇を持てあましていてね、ブラブラと面白いことがないかな~っと歩いていたら、奇抜なマスクを付けて神妙な顔をしている君を見つけたと言うわけさ」


 本当に失礼な人だ、私はこんなに苦しんでいるというのに、それを暇潰し手助けしようなんて。


「まあ、申し訳と思ってはいるよ、反省はしないけどね。 私はね利己主義者(エゴイスト)なんだよ。 私は暇を持てあましているから君に力を貸す。 これは善意でやっているわけじゃない、君と松葉君、それに君の善意を偽善と言った人も、私の予想だけどいるのかな? 君ら3人の行く末を観ていくのが面白いそうだから力を貸すんだよ。 私が力を貸した結果、君たちが幸せになろうと、不幸になろうと私にとってはどうでも良い事なんだよ。 私はね君たちが問題に向かって立ち向かうその姿勢、行動が観てみたい、だから結果かどうなろうと私は構わない、結果に行き着いた時点で私の暇は潰せているだろうからね」


 整った綺麗な顔でウィンクしながらクズ発言を堂々とする魔法使い。


(余計に信用できなくなった…………)


 私は帰ろうと身を翻して歩き始める。


「そよ風よ、彼女を導け――『風の導き(Breeze)』」


 ――ふわっ


 私の体は重力が失われたかのように風に乗って宙を浮いた。 突然だったので驚き、手足をジタバタと動かし藻掻いたが全く意味は無く、そのままゆっくりと魔法使いほ方へ進んでい行った。


「もう少し年長者の話は聞いておくべきだよ。 それに女の子がそんなに藻掻くのははしたないと思うよ? パンツ丸見えだったし」


 バッ!っと制服のスカートを抑えて赤面した。


「変態……!」


 まあまあっと言いながら、指先を動かして私を地面に降ろす。

 魔法使いは私の考えを読み、呪文の様なモノを唱えて私を浮かせた。 能力とは普通、一人に一つしか発現しない。 ごく稀に幾つかの能力を保有してる人はいるけれど………。


「まだ疑っているのかい? 用心深いことだね」


炎よ(Flame)

氷よ(Ice)


魔法使いは溜息をつきながら、右手に炎を、左手に氷を出した。


(え? 読心に、風に、炎に、氷? 三つの能力? それか本当に【魔法を操れる能力】を持っている人なの?)


 魔法使いは人の私の考えを読んで頬を吊り上げ。


「ようやくわかってくれたか。 君の予想通りの能力だよ。 扱い方に慣れるのにはかなりの年月がかかったけどね。 慣れてしまえばこの能力程便利なモノはないよ。 時間と労力をかければ、この能力に出来ない事は無いんだから」

「貴女の能力が凄いことはわかりましたけど、今のところは貴女の力を借りるつもりはありません。 怪しすぎます」


 正直な気持を言うと、魔法使いは腕を組み「どうしたものかな」と困っていた。 困り顔をした魔法使いを後にゆっくりと帰ろうとすると、そうだっとわざとっぽく手を打った。


「もし、君が私の力を必要になればここに電話しなさい。 いつでも力になるよ。 バイバ~イ」


 手を振りながら「白銀の翼を広げて、空間を翔よ――『瞬間(Telepo)移動(rtation)』」と呟き、杖を地面に軽くコツンっと突くと魔法使いの体は白銀に輝き始め、背中に煌々とした翼が広がり、ニコッと微笑んだ瞬間羽ばたき閃光に包まれ、姿が掻き消えた。 後には銀色の綺麗な羽が舞い散っていた。




 *




 魔法使いが私に渡した、名刺には『魔法使い ダリア・アダモフ ℡○○○-○○○○-○○○○』と簡潔に書かれていた。 家に帰りソファーに転がって見ていた。


「何でも出来る、ね」


 今仮に彼女の力を借りたとして、松葉君を助けてあげられるのかな? 何かをしてあげれるかな。 あの顔をなくすことが出来るかな。 でも、どううやって? もし仮に何でも出来るとして、どうしたら松葉君を救えるのかな。


 能力を消す? ――違う。


 記憶を書き換える? ――意味が無い。


 記憶を消す? ――違う。


 能力が発現する前に戻る? ――本当になんでも出来るなら良いかも知れない。


 どうしたらいいんだろう? なにをしたら、なにを変えたら、どうしたら、いいんだろう……。

 そもそも、どうして【耐熱】の能力が発現したんだろう、彼に何があったんだろう。 後天性能力には精神的あるいは肉体的な負荷がかかる様な出来事があったという事。 知りたいけど、松葉君は教えてはくれなかった、妹さんには突っぱねられた。


 ――――もうやることはもう解ってる、どうしたら良いのかも、理解はしているけど策が無い。 松葉君を助けるにしろ、事情を聞くにしろ妹さんを説得しなければいけない。

 けれど、どうすれば良いかはまるでわからないんだよね、どうしよう。


 説得はできそうにない、ならどうしたらいいのか――――う、腕っ節なのかな? 力で証明するしかないのかな。 あの目に勝てる気はしないなけど、やるしかないよね。


 なら、頼んでみよう。


「――――こんばんは、私です。 ええ、貴女にようして欲しいのですが、出来ますか?」




 *




「昨日の今日でなんですか? 今度は何の用ですか、竜胆先輩」


 昨日に引き続き屋上に妹さんを呼び出した。 今日は、


「私のことを認めてもらうために、呼びました。 単純かもしれないけど、貴女を倒して協力してもらいます。 松葉君を助けるために」


 夕日に背を向け、妹さんに言い放つ。 私は今日、ひどいことをします、大好きな人の大切な妹さんを全身全霊で叩きのめす。 そう心に誓った。


「はぁ? 意味が解りません。 単細胞にも程があります」


 はぁっと溜息をついて、帰ろうとするので、思わず手を掴んで止めた。


「待ってください。 今日は逃がしません、絶対に認めさせます! 妹さんに勝って力を貸してもらいます!」

「例え貴女が私に勝ったとして、貴女になんて力を貸すわけないじゃないですか! 兄の古傷を土足で踏み込むようなことをする、貴女なんかに!」

「確かに無神経かもしれない。 けど! 松葉君を好きな気持ちは誰にも負けない! 彼を救うためなら誰に恨まれても、たとえ彼に嫌われたとしても構わない。 偽善だと言われても、否定されても、誰になんと言われても必ず救うって決めたの!! ――――ダリアさん!」


 私の影からダリアさんが出てきて、杖を天に掲げた。


「はいは~い! 任せなさい。

 次元を裂いて、咎人を封じ、牢獄に鍵をかけよ」


 ダリアさんの言葉で屋上に数多の陣が生まれ拡がり、徐々に輝き始める。


「愚者を惑わす無限の迷宮、彷徨う愚者は此処に二人、道は今開かれた! ――開錠せよ!! 『夢幻白牢』」


 天に掲げていた杖を私と妹さんの方へ勢いよく振り下ろすと、私たちの周りに陣が集まり目の前が白く発光した陣で埋め尽くされていった。




 *




 次に目を開けるとそこは、屋上ではなくただただ白い壁と、白い床、白い天井がどこまでも続いている不思議な空間にいた。


 《そこは私の創った夢幻白牢の中、君たちの精神だけを移送させた。 ここで注意事項だ、精神だけだからといって無理はしない方が良いよ、今の状態で怪我をしたら肉体へ戻ったとき傷があった部分に多少違和感が残るよ、まあ精々半日程度だけどね。 けど仮に死んでしまったとしたら、8割の確率で精神は肉体へ戻らず植物状態になるから気を付けて》


 スピーカーも無い空間にダリアさんの声が響いた。 打ち合わせの時に説明は受けてたけど、あんまり怪我をしないように気を付けよう。


「……行くよ妹さん」

「やってくれましたね、満々とやられました、まさか第三者の力を借りるなんて思いもしませんでしたよ。 けれど、ここまで来てしまった以上仕方ありませんね――――殺す気で行きます。 これ以上兄の事を詮索しないよう、徹底的に」


 怒気を露わにして躙り寄る妹さん。

 背中からは白銀の翼が生え、眼は黄金に輝き揺らめいている、頭上には眩い光を放ち浮遊する輪が出現した。 その姿はまるで、



「天使」



「私の能力は家族にも【不老】としか言っていないから、ここでの事は墓まで持って行って下さい。 この前の騒動で兄にはバレてしまいましたが、公にはしたくないので」


 翼を羽ばたかせ上昇していく妹さんを観て私は、勝てるのか不安になっていた。

 松葉君からは以前妹さんの能力は【不老】と聞いていたので、あの目は怖いけど、きっと勝てるだろうと高をくくっていた、けれど今私が対峙している人には勝利するイメージが……湧かない。



 ―――――――――――――――――――………。



 ――――――――――勝ちたい。



 ―――――――彼の笑顔を守りたい。



 ――――諦めたくない。



 ――私は松葉陽喜を愛しているのだから



 立ち止まってはいられない!



 そうだ、もう決めたんだ。 どんなに成っても勝ちは諦めない。 砂を噛み、泥を啜ろうとどんなに惨めになっても! 私は!!


「――絶対に負けない! 彼の笑顔のために、妹さんには協力してもらいます!」

最後まで読んでいただき、ありがとうごさいました。

遅くなってもし訳ありませんでした……。


次回は葵と司の本気の戦いです!

お楽しみに!!


次回予告!

  『2人の想い』

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