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ギルドを追放された支援魔法士は悪魔※とギルドを創る  作者: るちぇ。
第2章:一筋縄でいかないギルド創設の道
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ウェルカム王城! ウェルカム王城!

 4人は王城へ招かれた。


 国王と王女を前にして、冷や汗ダラダラのルークである。


「なぜか出現したデッド・ニーズヘッグだったが、偶然にも通りかかったお主たちのお陰で討伐できた。ひとまず感謝しよう」

「あ……あはは、それはどうも」


 余りにも出来すぎな話。


 悪行がバレたと冷や冷やする場面かもしれない。


 しかし今に限っては違った。


「まぁ、そう固くなるでない。ところで、ギルドを創設したいそうだな?」

「は、はい、恐れながら」

「うむ、ならば実に良い話があるぞ」


 国王の背後には“ウェルカム王城“と書かれた上りが乱立。


 側の従者たちはペンと何かの書類を多数所持。


 一方、後ろの扉の前では完全武装した憲兵が隊列を組んでいる。


 まさにウェルカム、絶対に逃がさない意思表示である。


「幸運なことに、王国ギルド長の籍が空いておる。どうだろうか?」


 普通なら悩む話かもしれないが、ルークに限ってそれはない。


 このパーティーは人間1人、他は魔族とハーフ。


どうして受けられるだろう。


「え、えーと……その、申し訳ありません」

「な、なぜだねっ!?」

「お父様、無理を言ってはなりません」


 食ってかかりそうだった国王。


 それを、隣の王女が嗜める。


「どうでしょう? 私たちが婚姻を結び、王家に迎え入れるというのは」


嗜めるとは一体。


「お……おぉ、流石は我が愛娘。なんと名案だろう。これで強い冒険者を逃がさな……んんっ、口が滑った」

「あらあら、本音がポロリですよ、お父様」


 イブリースは思わず、ルークに耳打ちする。


「ねぇ、ルーク。人間ってこんなに積極的なものなんですか? 慎ましさが美徳って聞きましたが」

「まぁ……うん、基本的にそうだな。でも中にはアイリスみたいなのも――」


 その危険に気付いたルークは、恐る恐る目を向ける。


 どこ吹く風の様子だ。


「あれが正妻の余裕ですかね?」

「待てこら、決まった訳じゃない」


 ところで、ヒソヒソと話しているためだろう。


 何かを察したらしい王女が確認してくる。


「なるほど、唐突な申し出のため受け入れられないと?」

「は……はい、そう解釈して頂けると」

「そうですか、では仕方ありませんね」


 ――国王は終わっているけど、王女は”まだ”まともで助かった


 ルークが安堵しかけた次の瞬間、


「では妥協案として、私と新たな国を作るのはどうでしょう?」


 更に突拍子のない話が飛び出した。


 イブリースですら目を丸くする。


「わーお、カエルの子はカエルですねぇ。どうするんですか、ルーク?」

「逆に聞きたい。どうすればいいんだ、この状況」

「受け入れちゃえばどうです? 私のご飯はより確実に、より豪華になりますし」


 ルークは苛立ち、反撃に出た。


「確認したい。お前は美少女だよな?」

「え? えぇ、勿論ですよ! 遂に私の魅力に気付きましたか!」

「あぁ、たぶん王女様も同じように思うだろうよ。さて、聞こう。普通に考えて、夫の傍に美少女がいることを良しとするか?」

「き、危険ですっ! こんな美少女がいたら発狂しますっ!」


 即答である。


 なんと厚顔無恥なのだろうと頭を抱えつつ、ルークは付け足す。


「いきなり追い出されなくても、素性は調べられるだろうよ。お前が何者かバレたら終わりだと思わないか?」

「ぜ、絶対絶命じゃないですか! どうするんですか、ルーク!?」

「だから最初に聞いただろ、どうすればいいかなぁって」

「私が知るもんですか! でも何とかして下さい!」


 無意味にマウントを取り終えて、さて、どうしたものかとルークは考える。


 結果、逃げることにした。


 そろりと後ろへ一歩、動く。


「逃げられると思いますか? 空気読めます?」


 直ちに見抜かれた。


 恐るべし、女の目。


「さ、さぁ、何のことか――」


 ルークが背後へ目を向けると、


「早く頷けよ」

「別にいいじゃねぇか」

「こんな謎任務はさっさと終えたいんだよ」


 憲兵たちが殺気立っていた。


 仕方なく視線を戻すルークだが、


「王女様、こちらになります」

「はい、ご苦労様」


 いつの間にか、メイドたちが湧いていた。


 手にはタキシードや白い靴、指輪ケースなどなど。


 挙句、牧師まで登場する。


「永久の愛を誓いますか?」

「気が早過ぎるだろっ!」


 突っ込んでしまったルークと目が合った王女は、


「善は急げと言うでしょう?」


 ニッコリとほほ笑んだ。


 この流れを脱するのはほぼ困難だろう。


 ルークが絶望し、諦めかけた時だった。


「ねぇ、イブ。私、気になる事があるんだけど」

「……そ、それです! やりますね、プル!」


 何かを思い付いたらしいプルートが耳打ち。


 イブリースは王女に提案する。


「王女様、ルークなんかよりも優れた冒険者がいま――」

「――聞き捨てならん」


 それを遮り、仁王立ちするアイリス。


 憐れ、イブリースは涙目になってしまう。


「旦那様こそ最強だ。嘘だと言うなら……分かっているな?」

「な、何なんですか、この妙に恐ろしいプレッシャーを放つレベル1はっ!?」

「ふぅ……仕方ない、ここは私に任せて」


 イブリースを庇うようにして立つプルート。


 強キャラ感を放つものの、それは果たして誰のためか。


 熱い視線を向けているのは言うまでもない。


「と、とにかくです! 強い冒険者が欲しいなら、勇者ニルスが適任ですよ! この人はやめておくといいです!」


 これに難色を示したのは国王だった。


「勇者は我が愛娘を要らんと断言しおった。それに痛過ぎる」

「あぁ……なるほど」


 これには同意してしまうルーク。


「その点、お主の評判は聞き及んでいる。実力はあるのに永遠に独り身だと」

「喧嘩を売っていますか?」


 これには怒りを覚えたルークだった。


 こうして激論は続き、そして――大変な事態になった。

2018年12月1日 表現を修正しました。物語に影響はありません。

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