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ギルドを追放された支援魔法士は悪魔※とギルドを創る  作者: るちぇ。
第2章:一筋縄でいかないギルド創設の道
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その支援、実にそれっぽい

 熾烈な戦いが始まった。


「いいか、アイリス! 変な気は起こすなよ!?」

「いや、ここは任せてくれ、旦那様! いざとなったら我が最強の装備が火を噴く!」

「えっ!?」


 誰よりも早く過剰に反応する自称ピュアッ子。


 その目はたちまち血走り、鼻息が荒くなる。


「や、やめて! 貴女の装備は過激なんだからっ!」


 言葉とは裏腹に、見せろ、さぁ、見せろというオーラをガンガン放つ。


「ちょっと、プル。空気を読んで下さい。流石の私でも引きますよ?」

「な、何を言っているの? 私は注意しているだけから!」


 何と熾烈な争いだろう。


 ――そういえばデッド・ニーズヘッグはどこへいったのか


 見ると、今まさにアイリスが素手で食い止めようとしていた。


「はぁっ!」

「はぁっ、じゃない! 待て待てっ!」


 咄嗟にルークは支援魔法をかける。


 継続ダメージ無効の魔法だ。


 お陰で、アイリスはデッド・ニーズヘッグの頭を両手で押さえ、食い止める。


「おぉ、何とかなるものだな!」

「いや、普通なら死んだからな?」

「なんと! では、これが私に秘められた力かっ!」

「……面倒だからそういう事でいいよ」


 ついでに筋力アップの魔法もかかったのだが、とことん勘違いするアイリスであった。


 とにもかくにも、足は止まった。


 このチャンスを逃すまいと、ルークは攻撃役2人に目を向ける。


「だから、私はピュアッ子なんだってば!」

「自分の欲望に忠実過ぎます! それじゃあ露出魔すらピュアッ子ですよ!?」

「私が裸族だとでも!?」

「もっと恥ずかしい何かですよっ!」


 頭痛を覚えながら、ルークは声をかける。


「おい、そこのお馬鹿2人組。何でもいいから強い魔法を撃ってくれ」

「2人組!? わ、私も含まれますか!?」

「それは私のセリフなんだけど!?」

「何でもいいから飛び切りのを撃ってくれよ。できるだろ、死神プルートなら?」


 一瞬、キョトンとした顔をするプルート。


 しかしすぐに合点がいったようで、力強く頷いた。


「ふふふ、遂にこの時が来てしまったようだね。さぁ、私の強さをとくと見せてやるから! 特に、ルーク! しっかり見ててね!?」

「え? あ、はい」


 プルートの周囲に魔法陣が展開され、漆黒の闇が浮かび上がる。


「告げる。常世全ての終末を統べし冥界の神よ、時は来た。今こそ契約に従いっ――!?」


 突然、プルートが倒れる。


 いや、地面に吸い付けられたというのが正しい。


 犯人はイブリース。


 悪魔契約によって、強引に中断させたのである。


「ふぅ……危なかったです。今世紀最大の痛さに失神してしまうところでした」

「な、何をするの!?」

「そうだぞ、イブ。詠唱があって然るべきだろ、いくら痛くても」


 そう、いくら痛い口上であろうとも、非力な身で魔法を使うには必要な代償である。


 イブリースはそのことをよく知っている。


 だからこそ止めざるを得なかったのだ。


「はぁ、忘れたんですか、ルーク。プルートは死神ですよ?」

「だから何だ? むしろ強い魔法を使ってくれそうだろ」

「頭が固いですねぇ。いいですか、冥界の神って詠唱にありましたが、それ、誰のことか分かります?」

「誰のことって……あ」


 冥界の神。死神。


 この2つのワードを並べて、ルークはようやく気が付いた。


「そうです、プルは闇魔法の担い手です。だから自分で自分に“告げる”だの、“契約に従え”だの、それはもう盛大に格好を付けて言ってくれやがったんです。これはもう万死に値しますよ」

「べ、別にいいじゃない! 私だって威厳を回復したいんだもん!」

「言っていたじゃないですか。以前、人間に面と向かって詠唱されて、”なぜだ、魔法が発動しない!?” とか驚愕されたって。自分で自分に攻撃する阿呆がいる訳ないのにって」

「わ、わぁーっ! 言わないで、言わないでぇっ!」


 プルートは赤面。地面を転げ回る。


「おい、旦那様! この後はどうすればいいんだ!?」


 一方、アイリスはデッド・ニーズヘッグを必死に食い止めていた。


 そういえば戦闘中である。


「あ、あー……準備ができたら魔法で葬る。それまで抑えられるか?」

「あぁ、任せろ!」


 ――そんなレベルで大丈夫なもんか


 心の中で突っ込みを入れてから、ルークはプルートの両脇を持って立たせる。


「おい、偉大なる冥界の神! シャキッとしろ!」

「う、うぅ……うぅーっ!」


 もはや禁句らしい。


 プルートは両手で真っ赤な顔を覆った。


「いいか、よく聞け! このままじゃ、お前が威厳を見せ付ける相手が死滅する! それでいいのか!? 孤独に詠唱を唱えて決めポーズを取って、それこそ一番恥ずかしいだろ!?」

「そ、そんなの……い、いやぁあぁぁぁーーーっ!」

「なら、イブリースなんて放っておけ! お前はお前自身のために、あれを何としても倒さなくちゃいけないんだ!」


 この言葉が響いたらしい。


 プルートの顔付きが変わり、これこそ魔王軍幹部というような雰囲気を醸し出す。


「そうだったね……そうだった。私が純粋無垢なピュアッ子でいられるのも、魔王軍幹部と恐れられるのも何もかも、人間たちが必要だった。そんな当たり前の事を教えられるなんて、まだまだだなぁ……私」

「ま、また何か始ま――っ!?」


 体にプツプツと蕁麻疹を出したイブリースは止めうとした。


 しかし、一歩遅い。


 ルークが後ろから口を押さえた。


「さぁ、いけ、プル! お前が全力を出せるように、俺はあらゆる支援を惜しまない!」


 字面は支援魔法士の鏡のような発言。


 これに対し、プルートは力強く頷いた。


「魔王軍幹部の力、とくと見よ! 暗黒魔法ダーク・フレイム!」


 奴の足元に漆黒の魔法陣が展開したのとほぼ同時だった。


 闇色の炎が巨体を包み込み、一瞬にして灰燼に帰す。


「永久に眠れ、闇の炎に抱かれて」


 最後にドヤ顔をプルートが決める。


 こうして長く苦しい戦闘は終了したのだった。


「勝った……のか?」

「すげぇ……すげぇよ、あの人たち!」

「俺たちは伝説を見たぞ、こん畜生!」


 たった4人でデッド・ニーズヘッグを討ち取った。


 この前代未聞の偉業は、今後、彼らに大きな影響を及ぼすことになる。


「い、イタタタッ! 痛い、痛いですぅうぅぅぅっ!」

「あ、暴れるな、イブ! もう終わった、終わったから!」


 ただ1人だけ、既に多大な影響を受けている。


 そんな憐れな悪魔は置いておいて、おおむね戦闘は終了。


 これにて一件落着といけば幸せだっただろうに。


 生憎と、この先に待ち受ける苦難を彼らはまだ知らない。

普段より長めになってしまい、申し訳ありません。

戦闘シーンは今後も長引く可能性があります。

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