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ギルドを追放された支援魔法士は悪魔※とギルドを創る  作者: るちぇ。
第1章:愉快でトリッキーな仲間たちと
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その者、純情につき※

 魔王軍幹部、死神プルートの来襲はギルド内を騒然とさせた。


「お、おい、あの子だ!」

「本当だ! あれは間違いないぞ!」

「畜生! こんな時に、どうしてカメラを忘れて来たんだっ!?」


 それはもう騒然としていた。


「あれがコスプレってやつだろう!?」

「なんてそっくりなんだ! 手配書と瓜二つだぞ!」

「もう目に焼き付けるしかない! 俺、一生分のエネルギーを使ってもいい!」


 いや、もはやお祭り騒ぎであった。


「ふっふっふ、どうですか、ルーク? 私の凄さが理解できましたか?」


 ルークは無言で近寄ると、頭に拳を振り下ろした。


「いっ、いったぁ……っ!? な、何をするんですか!? 飛び切りの子を連れて来たのにっ!」

「人間界の、それも王都のギルドに、よりにもよって魔王軍幹部を連れて来る!? お前はどこまで馬鹿なんだ!?」

「ば、馬鹿って言った方が馬鹿なんですぅ! このバーカ、バーカ! 悔しかったらあの子を倒してみなさい!」


 これに最も敏感に反応したのはプルートだった。


「えっ!? 酷いよ、イブ! 私を売るつもりなの!?」

「やれればの話ですから、貴女は黙っていて下さい! さぁ、ルーク!? やれるものなら、やってみさらせぇっ!」


 魔王軍幹部という単語が悪かったのだろう。


 憲兵までやって来る事態に発展した。


 しかし、幸いにも周囲はコスプレ娘の来襲とお祭り騒ぎである。


 ルークはこれに便乗するため、アイリスにとある作戦を耳打ちした。


「いいのか、旦那様? 浮気にカウントされないだろうか?」

「大丈夫、同性はノーカンだ」

「そうか、ならやってやろう!」


 アイリスがプルートへにじり寄る。


 方や、本気で魔王軍幹部を捕えようとする。


 方や、再び両手で顔を覆うものの、もはや容赦なし。


 指を限界まで広げて、目以外の部分を全力で隠している。


「何だ、その目からビームでも出そうな構えは?」

「そ、それ以上近寄らないで! この露出狂!」


 言葉と行動が全く一致しない彼女の目は、親の仇でも見るように険しく、真っ赤に充血している。


「旦那様のお願いだ。是非も無しっ!」


 抱き締めようと襲いかかるアイリス。


 これを華麗に避けるプルート。


 流石は魔王軍幹部。


 魔法職とはいえ、レベル1の冒険者に遅れは取らない。


「し、しまった――っ!?」


 しかし、何がどうしたというのだろう。


 プルートはわなわなと震え出し、膝から崩れ落ちてしまう。


「こ、ここ、ここで避けると私は見ていたという事に!? つまりエロい子という事にっ!?」

「次は逃がさん!」

「かくなる上は――キャーーーッ! 何も見えないから捕まったーーーっ!」


 この騒ぎを見た憲兵たちは、


「やれやれ、またあいつらかよ」

「もう放っておこうぜ。仕事にならねぇよ」


 呆れ返って立ち去って行く。


 ホッと胸をなで下ろしたルークであった。


「おい、イブ。俺の勝ちだ。あらゆる意味でな」

「く……くぅ、この短時間でプルの弱点を見抜くとは」

「バレバレだったから安心しろ。それよりも、本当に魔王軍の幹部なのか――あれで?」


 くんずほぐれつの状態になりながら、まるでエロ親父のように鼻を伸ばすあの子――プルート。


 本人曰く魔王軍幹部らしい。


「こ……今回ばかりは私も認めましょう。あの子を選んだのはちょっと失敗だったかもしれません。でも安心して下さい! 実力だけは本物ですから!」

「まぁ、お前はこの手の事で嘘を吐かないだろ。でもな、どうして幹部候補生のお前が連れて来られるんだ?」

「ふっふっふ、私たちの間には契約が交わされていますから!」


 イブリースは羊皮紙を取り出す。


 そこには、プルートと交わしたらしい契約が記されていた。


 プルートはイブリースにお菓子を守って貰う代わりに、彼女の言いなりになる――と。


「お菓子を守って貰う……あ」

「そうです。あのゴブリンたちからお菓子を守る時、プルの分も死守してあげたのです! お陰で私は幹部昇格試験を欠席してしまったのですから、このくらいの代償は然るべきですよ!」

「お前……本当に悪魔だったんだな」

「失礼な、やっと認めたんですか?」

「そういう意味じゃ……いや、何でもいい」

「よくわかりませんが、今回は私の完全勝利という事ですね、はっはっは!」


 高笑いするイブリースはひとまず放っておいて、ルークは揉みくちゃにされて嬉しそうなプルートへ近付いた。


「なぁ、君。何て言われて来たのか知らないけど、本当にいいのか? 仮にも幹部なんだろう?」

「うぅ……本当は私も反旗を翻すような事はしたくないの。でも悪魔の契約が働くから抗えなくて……」


 一時の気の迷いだったのだろう。


 お菓子如きで縛られる魔王軍幹部とか、もう憐れでしかない。


「待てよ、お前は幹部なんだろ? 自力で何とかできないのか?」

「で、できたら苦労しないから! 変な事をしでかすと、うぅ……何をされるかわからないし……」

「あと何をしてくれるのか分からないし、でしょ?」


 ニヤニヤしながら意地悪そうに言うイブリース。


 プルートは髪が乱れるほど必死に首を振って否定する。


「ち、違うから! どうしてエッチな子にしようとするの!? 私は健全な子! 純情な乙女なんだから!」

「「「――え?」」」


 こうして、ルークのパーティーに闇魔法のエキスパートである魔王軍幹部、死神プルートが加わってしまったのだった。

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