プロローグ
こんちわ!! ネギま馬と申します。今作は自分の性癖に従い、性癖の思うままに描いてみました。
僕自身、創作を始めたのが五ヶ月前なので文が幼稚なところもありますが、それでもみてくれると嬉しいです!!
なんか違うなーって思ったらエタるかもしれないからそこは要注意です。
それでは本編どうぞ!!
「……シィ!!」
銀閃が巨躯を穿ち、切り裂いていく。
「……シィ!!」
鼻腔をくすぐるのは戦火で焦げた独特な匂いを放つ獣肉と、全身にこびりついた血の香り。だが、それ以上に強烈な異臭がジルドの鼻腔を蹂躙する。
それは目の前に二本足で地面に這いつくばって、ジルドの華奢な体躯を押し潰さん勢いでギラリと光った眼光でジルドを貫く豚人が放つ、
死の香り。
死の香りが今、最高潮に達した。
豚人が右手に持つ、こべりついた血によって錆付き始めている古びた手斧を掲げ、ジルドへ勢いよく振り下ろす。
およそジルドの身長の1.5倍ほどはある巨躯の最高点から振り下ろされるその鈍器は凶悪な威力と圧倒的な質量を孕んでいて。
地面を軽く右足で蹴り、横っ飛びで避ける。
振り下ろされた凶器はそのまま地面へと突き刺さり、そこを中心とした円状のくぼみを生み出す。
凶器が地面へと突き刺さり、引き抜こうと必死になっているところ、ジルドはその喉笛へと狙いを定める。そして左腰に備えた鞘を左手で支え、右手で柄を握った。
そして自身の愛剣が鞘から引き抜かれる。その剣身は戦場で酷使し続けたはずだが一滴の血痕も残っておらず一片も錆びついていなかった。
「……シィ!!」
銀閃一閃。
豚人の喉笛が切り裂かれ、気道に穴を穿ち、漏れ出た空気がなんとも無様な呼吸音を晒す。
壊れた蛇口のように喉笛だったところから鮮血が飛び、ジルドの大人びていながらもまだ幼げが残る顔面を血糊色で濡らしていく。
やがて全て吐き出した豚人が戦士として愚かにも敵の目の前で膝をつき、血の池と化した大地にひれ伏す。
それをただ無表情で見下すジルド。
やがて生命活動が停止したことを確認し、剣先に滴る鮮血を一振りして剣先から弾く。
そして左腰に備えた鞘に戻すとジルドはあたりを見渡して座るのに手頃な岩を見つけてそこに腰を下ろす。
そして改めて大地を見渡した。
そこは荒廃した大地。木一本、草一束も生えないただむき出しの大地。そこに戦火とそれによる黒煙が立ち上っていていかにも世紀末な風景になる。
そしてかつてはジルドとともに戦った勇儀隊の皆は動かぬ屍になり、それと同量に豚人の屍も道端に転がる小石のように転がっている。
その戦場に轟く、静寂。
この地にいる誰も生の咆哮を、悲鳴をあげることはない。
それもそうだろう、今この戦場で生存しているのはジルドだけなのだから。
「……ふふっ……あははははははははははハハハハハはははは」
不意にジルドは吹き出してしまう。
その理由なんて自分にもわからない。
ただ笑いたかった。
「あはははははははははははハハッははっはははは」
時に嗚咽を混ぜ込みながらジルドは戦場で笑い続ける。
その笑みは凶悪で、繊細で、張り裂けそうな笑みだった。
「──おい、今回の戦線も死神だけが生き残ったらしいぜ」
「マジかよ、あいつの噂は本当だったんだな、『あいつと一緒に戦場に出た奴らは全滅する』っていう」
人皇國ジールバ。その兵舎でジルドは自分に関する話題を横に演習用の兵服に着替え、鍛錬へ向かおうとする。
全部聞こえてるっつーの。
そう人間らしい悪態を口に出さずに心だけで止めておくのは彼の優しさからなのだろうか。
「死神」
ジルドにつけられている異名は不吉なものだった。
その理由にジルド自身も納得がいっている。ジルドが覚えている戦場を思い返しても共にジールバに帰還した兵士というのは本当に一握りだけだった。
時には元来の友人も、共に生き抜こうと誓った戦友も。
ジルドの目の前で死んでいった。
そんな気味の悪い思い出を断ち切るかのように鍛錬に使う刃の潰れた剣を振り回す。
しかしながらこの死神も一人の青年。彼にも隠し事があるもので、
──だいぶ長い時間この鍛錬を続けているのだろう、ひたいには玉の汗が浮かび上がっている。
やがて空が茜色から藍色に染め上がり、夕方になったことを確認できたジルドは鍛錬を終了する。
兵舎へと戻り、鍛錬用の兵服を脱ぎ捨てていつも通りの私服へと着替える。
石畳の整備された道路を長年履き潰した靴のかかとが叩く。その音は軽やかでジルドの弾みを抑えきれない心情を表しているようだった。
自然と笑みが浮かんでくる。その笑みは少年のように無邪気で、とても青年とは思えないほど幼げだった。
家路に着いたジルドは扉の前で深呼吸。
なぜ自分の家に入るのに緊張しているのだろう。
いや、緊張ではない。興奮だった。
今日、彼女はどんな姿をしているのだろう?
そんな疑問が今のジルドの興奮を生み出している。
扉を軽く二回ノック。そしてドアノブをひねり、扉を開ける。
「……た、ただいま!!」
玄関で自分が帰ったことを伝えると、床をトタトタと軽く叩く音。
「おかえり!!」
廊下を走る彼女は首が異常に長く、いつかバランスを崩してしまうのではと危惧してしまうほどにアンバランスだった。
「今日は首長なんですね」
「ええ、私自身もびっくりしちゃいました」
彼女が本当にびっくりしたようにいうため、本当にびっくりしたのだろう。
今日の身長差は大きく、顎を上に向けなければ視線が合わない。
しばらく玄関先で会話していると首が痛くなってくるがジルドの表情は終始穏やかだった。
戦場でかつて微笑んだ凶悪な笑みではなく、ただ一人の青年として、人間らしい笑みで。
これが死神、いやジルド青年の唯一の隠し事だ。
たとえ、この愛情が禁断だとしても、いつか壊れてしまう恋愛だとしてもジルドはきっと。
それでも彼女を愛している。
閲覧いただきありがとうございます!!
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