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俺、馬になる


 


 「楽しそうだね。君にピッタリの世界があるんだけど、こっちに来ない?」


______________________________


 ここはどこだ?

 

 突如頭の中に聞こえてきた声に、ノリとテンションだけで「行きます!」と即答してしまった俺は、気付けば見たこともない場所にいた。


 これは、ワープというやつだろうか。

 眼前に広がるは、見渡す限りの大自然である。


 こんな綺麗な景色を見たのはいつ振りだろう。

 いや、もしかしたら初めてかもしれない。


 って、そうじゃない。そうじゃないだろ。


 何だここは。

 俺はさっきまで自分の家にいたはずだ。

 正確には家のドアを開けたばかりだったはずだ。

 あれはどこでもドアだったのだろうか。

 だみ声で「アマゾンの大自然~~~!!」とドアを開けるとき、俺は言っただろうか。

 いや、そんな記憶はない。


 待て、落ち着くんだ。

 ここに来る前に何か声が聞こえてきたよな。

 確かに、そう、確かに聞こえてきた。

 いい声だった。

 世界良い声ランキング三年連続第一位に輝いたことがあろう声だった。


 確かそいつはこう言った。


 「こっちに来ない?」


 ああそうだ。覚えている。

 俺は、つい、その声につられて「行きます!」と頷いてしまったんだ。

 

 「なんてこった。パンナコッタ。」


 …。


 とっさに思い付いたダジャレを披露しても、歓声一つ上がらない。 

 大自然、恐るべし。


 しかしあれだな。

 これは夢だろう…。


 良くあることだ。

 さぁ、出かけようとドアに手を掛けた瞬間、疲れた体がお出かけを拒絶して突如眠りについてしまう。

 うんうん。あること、あること。


 全く、俺様よ、そろそろ起きなさいな。


 俺は、夢の中で頬をつねるという古典的なことをやってみたが、痛い。


 むぅ…。 


 痛いじゃないか。

 夢じゃない…。と言った方がいいだろうか。


 というか、いつもと頬の質感が違う。


 ああ、そうだ。

 家を出る時、俺は馬の被り物を被っていたんだっけ。


 そうだ。そうだよ。俺はこれから友達の誕生会に行くはずだったんだ。

 ただ登場するだけじゃ面白くないから、インパクトのある格好で行こうと、ちょいとおめかしをしたんだった。


 白馬の被り物を被り、服は着物に虎の刺繍の入ったスカジャンを羽織り、靴は下駄。

 そして、手には真っ赤な蛇の目模様の番傘を差していたんだった。

 

 まったく。

 やはり俺は中々のエンターテイナーだぜ。

 人を祝う気持ちってやつがあふれてやがる。


 ふぅ…。


 まぁ、取りあえず、この被り物を脱ぎますか。

 

 …。

 

 あれ?


 …。


 何だ?付け根のところが、付け根の…。

 

 ん?

 

 えーっと…。


 今度は無理やり引っぺがそうと、頭のところを引っ張ってみた。

 

 「イデデデデデデ!!!!!!」


 あれ?


 ちょっ!ええ??あれ???


 「これ、くっ付いてね??」


 ヒュルリと風が吹き抜けた。


 じょ、冗談じゃない!こんな見たことも聞いたこともない世界で、馬の被り物が取れなくなり、キチガイみたいな恰好をしていれば、原住民に射殺されても文句は言えない!


 「落ち着け、俺!落ち着け!」


 「取りあえず、自分の今の格好を確認しよう。」


 そう独り言を漏らし、俺は近くにあった湖へと駆けだした。


 湖に着いたと同時に、湖面に写った自分の姿を見る。


 「嘘だろ?おい…。」


 湖に映し出されたのは、本物の馬の顔をした男だった。


 「おいおいおいおい!!!!」

 「どうなってんだこりゃ!」

 「いつから俺は、白馬の王子様になっちまったんだ!?」


 「おい!だれか!」

 「いねえのかよ!!」

 「俺にこっちおいでとか言った奴はどこだよ!コラ!」

 「なめてんじゃねえぞ!!」


 『落ち着け相棒!』


 「馬鹿野郎!これが落ち着いていられるかってんだ!」


 『まぁまぁ、そう熱くなるなよ。お前異世界召喚って知ってるか?』


 「なにぃ?いせかいしょうかんだぁ??」


 って待てよ。

 さっきから俺は、誰と喋ってんだ…?


 周りを見ても誰も居ねえ。

 

 ただ、ここに飛ばされる前に聞いた声とは別の声だ。

 さては、あの声の奴の仲間だな?

 

 「おい!てめえ、勝手に人を呼び出してんじゃねえよ!まずは姿を見せやがれ!そして、俺を元の世界に返せ!人間に戻せ!」


 『おいおい、相棒。どこに向かって喋ってんだよ。ここだよ、ここ。』


 「そこかぁああ!!!!」


 声のする後ろを高速で振り返ってみたが誰もいない。


 『違う違う、ほら、背中背中!』


 何だ何だ。

 背中が後ろに引っ張られてる。

 背中に何か入り込んだか?


 そう思って、スカジャンを脱いでみると。

 居たよ。声の主が。


 『よう!』


 信じられるか?

 スカジャンの刺繍の虎が俺に向かって話しかけていた。

 「異世界召喚~俺じゃなくて、持ってた晩飯に特殊スキルが付いちゃった件について~」のスピンオフ作品です。


 当初、本編で閑話として書く予定だったものですが、長くなりそうなので別作品といたしました。

 

 登場人物は、本編にも、これから登場予定でございます。


 本編は、こちらになります。 https://ncode.syosetu.com/n4951dw/


 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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