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異星界漂流記  作者: 笑わない道化
第一章~能力開花編~
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ここにいる意味







「星野さん!一言だけ、一言だけでいいですからなにかしゃべってください!!」


「星野さん、あれは何だったんですか!? 手品ですか? 魔法ですか?」


「あなたが地球外生命体という噂が世間に広まっていますが、そこんところどう感じていますか?」


「星野さん―――」


「星n(ry」




(うるせええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!)


(なんなんだよさっきから! 人のプライベートなんか気にせず、ずけずけと入り込みやがって!!)


(家から一歩出ただけでこれだよ、たく、お前らは死肉に群がるハイエナか!!ハゲタカか!!俺は死肉ってか?うっせーよばーか!)







事故が起きた翌日、現実逃避をすませた俺は買い物に行こうと意気揚々と玄関を出たのだが・・・・そこはハゲタカやハイエナがはびこる弱肉強食のサバンナ地方だった。


まず玄関前の道路に報道陣、マスコミ関係らしい奴らが数人。俺の顔を見るや否やマイクやらカメラやらを片手に突撃してきた。


その他にも野次馬が2人か3人、あの映像がほんとかどうか知りたがりな奴らも遠くからこちらの様子をうかがっている。鬱陶しい・・・




「星野さん、何とか言ったらどうなんですか?このままではあなたは本当にエイリアンだと思われてしまいますよ。それとも、なにか後ろめたいことがあるから黙っているのではないですか?・・・・たとえば麻薬によるドーピングとか――」


(何を言っているんだこの阿呆は。全く見当違いもいいとこだ。つーかこいつらの言い回しってほんとイライラさせるよな。)



マスコミという奴らは相手の失言を誘うため、相手を挑発する。そして、見事罠にかかった者は大衆が飽きるまで総攻撃を受け、それはもう悲惨な末路をたどる。自分のマスコミに対する認識はそんなかんじだ。


頭ではそう理解しているつもりなのだが、やはり人間というものは褒められれば喜ぶし、逆に馬鹿にされればむかつく。






俺はそんなハイエナども瞬間移動で振り切り、人気がいなさそうな近くの公園のトイレに移動した。自分が瞬間移動できるなんてもう周知の事実になってしまった今、いまさら隠す必要はない。逃げるためにはどんどん使っていこう。


公園のトイレから出て、もう家に帰ろうかと考えていたそのとき、



「星野、光輝さんですよね?」


突然サラリーマンの格好をした中年のおじさんが現れ、話しかけてきた。


「いいえ、違います。人違いでしょう」




俺は即答する。絶対にかかわっちゃいけない相手だ。誰だよこいつ、どっから湧いてきた?


「いえいえ、あなたは間違いなく星野さんですよね?私はとある機関の者でして、ぜひ星野さんには力を貸していただきたく参上しました」


「さっきから何をいっているんですかあなたは。私は星野という方ではないといっているではないですか。言いがかりもよしてください」


「まだお認めにならないですか・・・まあ、あなたの意志に関係なくついてきてもらいますけどね」


「なにを―――」 「やれ」



街灯の影や道路の角、公園の遊具から茂みにまで、いたるところからグラサンをつけた黒服の人たちが現れ、ぞろぞろと俺を囲むように逃げ道をなくすかのように近づいてきた。


どいつもガタイがよく、高身長で強面・・・いくら力が強くなった俺でも、いかにも場慣れしてそうなこいつら全員に勝てる自身はない。逃げよう。








俺はテレポートを使いさっさと家に戻ってきた・・・が、そこでも問題が発生した。



さっきみた黒服の人がいるではありませんか・・・家の中に。



「つかまえろ!!」



黒服の一人が叫ぶと同時に他の二人が突っ込んでくる。





プツン





俺の頭の中で何かが切れる音がした。



(いくらなんでもやっていいことと悪いことがあるでしょ・・・)


外で追っかけ回すのはまだいいよ。まだ許せる。でも人ん家に土足であがりこんでくるのはさすがにひどすぎるでしょ。ここには、唯一家族と言えた母との思い出がある家だ。勝手に汚してんじゃねぇよ糞どもが!!


俺は突っ込んできた黒服の一人の懐に入り、左手でわき腹の肉を引き千切んばかりにつかんだ。


「ぐぇあああああああああああああああああああああ!!!!!」


「ぎゃーぎゃー喚くな、ゴミが!」


うるさいので、心臓がある部分におもいっきり拳を打ち付ける。


「ああああああああああああああああ ゴフッ・・・・・・・・・」


くぐもった呻き声がした後、そいつはもう声も発さず、受け身もせず倒れぴくりとも動かなくなった。


「お、お前ぇーーーーー!!」


近くでその一部始終を見ていたもう一人が我に返り、再び襲いかかる。

今度は右腕を相手の胸部に突き刺した。



ドシュッ



そんな音がしたとともに俺の右腕は、そいつの体を貫通した。引き抜くと大量の血が溢れ出てきた。


「床を汚しちまったじゃねぇかよ・・・たく」


そう言いながら、腕についた血をなるべく落とそうとパッパッと手を振るう。


「ひ、ひぃぃぃい。ば、ばけものぉ」


最初に叫んでた最後の黒服が俺を背にして走り去ろうとしていた。


「逃がすわけねぇえだろ、ボケ!」


俺はテレポートを使い、逃げる相手の背にしがみついた。身長差があるので実際には、ほぼ頭を覆うかんじで背中に乗りかかった。で、そいつの頭を両手でつかみ、無理やり回した。



ゴキュ




目と目が合う。でも、そいつは一言もしゃべらなかった。だって体の向いている方向と、頭の向いている方向が逆なのだから。





__________________________________________________________










「やっちまった・・・」


思わず溜息が出る。この歳で殺人を犯してしまったからだ。


今朝からマスコミに追っかけまわされて、自覚せずに追い詰められていたのかもしれない。

加えて、身の丈に合わない強大な力を手に入れ、気が強くなっていたのかもしれない。自宅に侵入していたことと、襲いかかってきたというだけの理由で人を殺めてしまった。もっとやりようはあったはずだ。


今になって冷静に物事を考えることができるようになった。でも、もう遅い。


俺は取り返しのつかないことをしてしまった。犯罪者、特に殺人を犯したものにはもうまともな人生をおくることはできない。残りの人生をずっと地べたを這いずるように生きていくのだろう。

もう俺の居場所はどこにもない。"犯罪者"というレッテルを貼られてどこでも疎まれてしまうのだ。




「・・・居場所・・・居場所・・・・・・・・居場所? なんで俺はここにとどまる前提で考えているんだ?」




そうだよ。どうせこの国に居場所がなければどこか遠くへ逃げればいい。そう、海外とかに・・・・・、いや、それじゃダメだ。面倒くさいのが追いかけてくるかもしれない。もっと遠くへ...............そうだ、いっそのことこの星から出てみようかな。



それはあまりにも無謀で後先のことを考えないものであった。しかし、初めて人を簡単に殺してしまったのが原因なのか、俺は一種の混乱に陥っていたのかもしれない。そして、自分に秘めたこの力でなんでもできるかもしれないという根拠のない確信が俺の頭の中を埋め尽くしていた。






(そうと決まれば早速行動しよう。まずは.......)




「まずは家を切り取ってみるか」



_________________________________________________________









「この近くですか? 対象がいる住宅街は」


「ああ、そうだ。 もうすぐ到着する。準備しろ」


深夜、怪しげな黒のバンが3台列を成して住宅街の街道を走行していた。そのバンはかなりの大型で一台につき屈強な男たちが10人ほど乗っていた。






「対象は一般人ですよね? たった1人に対してこれほどの大部隊が必要だったのですか?」


「対象に接触した隊員3人からの連絡が途絶えている。加えて、妙な事をしてくると報告されている。未知が多すぎるので用心に越したことはないと上からのお達しだ.........目的地付近に到着したな。 総員降車準備!! 作戦どうりにいくぞ!」



隊長はそう叫ぶ。まったくついてない、今日は非番だってのに急に呼び出されたと思ったら大学生のガキ1人連れて来いとかいうキナ臭い任務押し付けやがって冗談じゃないぜ。


隊員の一人、笹島 徹はそう心の中でぼやく。それでも作戦準備を進める。どんなにキナ臭かろうが仕事は仕事、割り切っていかなければこの仕事はやっていけない。この仕事以外もう自分みたいな社会のゴミを雇ってくれるところはもうないのだから。




住宅街の一角、全身黒ずくめで一般人から見ればモデルガンの様なものをもっている男たちが足音立てずに移動する。


そして、目的地にたどり着いた彼らなのだが、そこで皆一様に驚くことになった。




「対象の家宅はここで本当に間違えないはずだよな!?」


「ま、間違えありません 隊長。ですがこれは一体――」


「ではなぜここは空き地なのだ!!」



周りが住宅で立ち並ぶ中、そこだけが空き地となっていた。まるで、つい先ほどまであった建物が切り取られたかのように。その空き地には何もなく、街灯で照らされたそこは、土色の地面が周りの人工色により異様に浮き出ていた。



間違えるはずがない。事前調査をした仲間の諜報員は長年任務を共にし、ここにいる者たちの誰もが彼の優秀さを知っている。


隊長も気づいているはずだ。間違いなくここには対象の家があり、そこに住む何かもいたはずだ。


その何かがこのような芸当をたやすく行える存在だ。決して人間ではない。上層部は俺たちに何を捕縛させようとしていたんだ!?



笹島 徹は安堵したとともに、仲間に気づかれないように冷や汗を流す。

彼の頬から顎につたった汗が地面に落ちる音は、不気味なほど無音なこの住宅街でかすかに聞こえた。











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