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異星界漂流記  作者: 笑わない道化
第一章~能力開花編~
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能無しの鷹は爪をさらす

 あの金の延べ棒もどきを創造してから一ヶ月くらい経った。

 

 

 その後も暇があればいろいろなものを想像して創ったり、瞬間移動のテレポートであっちこっちとびまわっていた。

 

 おかげでものを創る際は、具体的な重さや長さ、大きさの数も大まかに考えて創ると、おかしな物なんかできず現実世界にあるものができるようになったし、テレポートも回数をこなすことで瞬間移動する意思表示みたいなコツも分かったかもしれない。


 そして、この超能力の悪い面についても少しずつ分かってきた。

 まず、テレポートなんだが長距離の瞬間移動、もしくは多用すると激しい頭痛を引き起こすことが分かった。この前、テレビの特集でイギリスのロンドンが映っていたので行ってみようと思い、テレポートしたら激しい頭痛と眩暈でその場でうずくまってしまった。多くの人が集まっている広場のど真ん中で。まるで酒をがぶ飲みした翌日の二日酔いのような感じだった。おそらく、移動する距離には限度みたいなものがあってそれを越してしまうと頭痛が起きてしまうのだろう。しかし、長距離の移動も回数こなすと頭痛が次第に起こらなくなり、今じゃ地球の裏側へいっても大丈夫なくらいにはなった。でも油断はできないな・・・

 もう一つ、これは間抜けなことなんだが、いつも自宅と大学をテレポートで行き来している例のトイレなのだが・・・・人が頻繁にくるようになってしまった。なぜかって?・・・・そりゃあ天井も床も隙間がない完全密室なはずのトイレの個室が、中に誰もいないのに鍵がかかっているのからだ。その現場を用務員さんに見つかってしまった。ほとんど誰も使用していないのに用務員さんは毎日綺麗に掃除してくれていたんですね・・・・いつもありがとうございますちくしょう!・・・・・・おかげで噂が広がり、今そのトイレはちょっとした心霊スポットと化し、オカルト好きな生徒がたびたびやってくるのだ。もうあのトイレは使えない。テレポートする際はいろいろと気を付けなければな。


 とりあえずそのことはおいといて今日は8月3日、前期最後の期末試験があった日だ。

 二週間くらい大学を休んだことがあったので、正直期末試験の内容がとても恐ろしくて眠れなかった日が多かった。

 けど、案ずるより産むが易し・・・いざ受けてみると意外と手応えはあった。

 唯一苦戦したのは数学だった。まあ単に高校の内容を忘れてたせいなのだが・・・

 ともあれ、大学1年生の前期はどの科目も簡単なのだろう。

 この分だと落とす単位はなく、尚且つ好成績で前期を終えられたはずだ。やったぜ!


 これで心置きなく自分の超能力について研究の続きができる。

 そう思いながら、自宅へと向かう・・・・・・・徒歩で。



 


_________________________________________







 すこし大きな交差点に差し掛かったところふと思い出す。

 

 (ここ、俺があの事故に遭った場所だな・・・・・)

 

 あの事故の後、テレポートのおかげで、一度も通らなくなった交差点・・・・久しく通っていなかったので事故に遭った場所を忘れていた。

 

(もう事故は勘弁してほしいな)


そう思いながら信号が”青”の横断歩道を渡る。

対面から小さな女の子とその母親らしき女性が手をつないでやってきた。


「みさき、お昼何が食べたい?」

 

「ハンバーグがいいなー」


そんな会話が聞こえてきた。平和だなーと思いながらその二人の横を通り過ぎた・・・・・・・その時


「ブオオオォォォオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーン!!!!!」


猛スピードでそれはやってきた。スポーツカーなのだろうその車は信号が赤にもかかわらず、俺たちが渡るその横断歩道に突っ込んできた。

その暴走車は俺の方に・・・・・・・・・・・・向かってはいなかったが、同じく横断歩道を渡っていたその親子に向かっていた。


「危ない!!!!!」


俺はとっさに叫ぶ。だけどその母親は暴走車に気づくと娘を庇うようにしてその場所で蹲ってしまった。

このままでは、ぶつかってしまう。何とかしなければ・・・・・何とか・・・・・そう刹那に思った瞬間











世界が止まった










否、わずかではあるが少しずつ風景が動いている。まるであの時見た走馬灯のようだ・・・・・・いや、あの時とは少し違う。あの時よりも世界が遅く動いているし、なにより自分の体が動ける。

これなら、あの親子を救えるかもしれない。そう思い、すぐに行動した。

まず、親子のもとへ向かう・・・ワンステップで。そこで親子を担いでその場を離れようと思ったが、親子は蹲っていてとても担げそうにない。ましては自分の体格で二人同時に担ぐのは無理があった。

そうなると方法は一つしかない。


(あの車を・・・・・・止める!!)


その鉄の塊はもう俺の目前にいる。3mくらいだろうか。自然と恐怖が湧き上がってくる。当然に決まっているだろう!!!生身の人間が暴走する車にかなうわけがない!そんなの自分がよくわかっている事じゃないか!!


(じゃあこのまま逃げればいいじゃないか・・・・今なら逃げれるぞ)


そんな囁きが頭の中から聞こえてくる。その甘い言葉に一瞬誘われてしまう。でも、後ろを振り返ると

未だにその親子は蹲っていた。当たり前だ、こんなの動けている俺の方がおかしい。


もし、俺が逃げたらこの親子はどうなる。二人とも死ぬ?それとも、娘は助かる?

ダメだ!!家族を失う辛さはお前もしっているだろ!?残される悲しみをこの子にも味合わせるのか!?


もう車との距離は1mもなかった。やるしかない


(信じるんだ!自分の力を。テレポートなんて芸当もできるし自身の肉体も変えられた。だから想像するんだ!!)


そして、目をつぶりとっさに思い付いたことを叫んだ。






「俺に車の衝突にも耐えられる体をくれえええええええぇぇぇぇぇぇぇーー!!」










「グッッッシャアアアアーーーーーーン!!!!!!!!!」


軽い衝撃とそれに似合わない轟音が鳴り響く、まるで至近距離に雷が落ちたみたいだ。

音がなくなったので恐る恐る閉じてた目をゆっくり開ける。


そこには、フロントがくの字に変形した、原型がもうわからないほど大破した車があった。


辺りは、不気味なほど静まり返り、音が全く聞こえなかった。









_________________________________________









「次のニュースです。横断歩道を渡ってた親子に暴走した車が突っ込みました。しかし、突如現れた男性が車の前に立ちはだかり生身で車を止めました。」


「今日、午後12時34分ごろ、○○県××市□□町の交差点で、横断歩道を渡っていた歩行者と信号無視の暴走車とが接触する事故が発生しました。接触した男性は同じく渡っていた親子を守るかのように一瞬で車の前に現れ、暴走車を体で止めました。大惨事になるかと思いきや車だけが大破し、運転手の男性は意識不明の重体、接触した男性は平然と立っていたそうです。その男性は辺りを見回した後、忽然といなくなりました。○×県警は接触した男性の行方を追っています―――――。」





ナニコレまるで犯罪者じゃん・・・・


あの後、親子の様子を見る間もなくテレポートで家に帰ってきちゃいました。大勢の人の前で。

かんっぜんに気が動転していてとっさに使ってしまった・・・・うわぁやっちまったなー。

他にも助ける方法あっただだろう!?なんで一番目立つようようなことしてんだよ!僕のばか!

どうしよーもうこれで今まで隠し続けた意味がなくなってしまったじゃん。頭痛もするし、もういいや知るか、どうなろうと知らん! 寝る!


そう不貞寝して、起きた後にテレビをつけたらこれだよ・・・

え、なんで俺が犯罪者みたいに追われているの??おかしいでしょ?オレオヤコヲタスケタンダヨー

テレビには暴走した車の対向車側に止まっていた車のドライブレコーダーが映し出されていた。その映像には、はっきりと事故の一部始終が映っていて、俺が人間じゃない動きをしていた。こんな風に見えていたんだすげー。



・・・・・・・・・・。



そうじゃねぇよ!!どうするんだ全国放送だよこれ!!俺の顔、はっきり映ってんじゃねぇか!全国に指名手配だよ俺!


うわぁーーーーっと自分の中で苦悶の叫びをしながら頭を抱えていると





ピンッポーン



インターホンが鳴った。


やっべぇ絶対に出たくないやばいやばい見なくても分かる面倒ごとだよ嘘だろはやすぎるだろーーー。


そうは思いつつも恐る恐る玄関前が映っているモニターを見る。

そこにはしらないおっさんがいた。

そのおっさんはまるで俺が見ているのをわかっているかのようにタイミングを見計らってしゃべり始めた。


「わたくし、MHKの記者の佐藤と申します。こちらに星野 光輝さんはいらっしゃいますでしょうか?もしいらっしゃれば先ほどの事故で是非取材をさせていただきたいのですが――――。」



俺はすぐに部屋の照明とテレビを消した。

そして、2階にある寝室に飛び込み布団にくるまり、居留守を敢行した。(手遅れだと思うが)



何度かインターホンが鳴ったが、しばらくすると何も聞こえてこなくなった。さすがに今午後9時過ぎだから記者もすぐに諦めて帰ったのだろう。 でもこれから昼夜問わずにいろいろな奴がやってくるかもしれない。マスコミだけではない。興味本位でやってくる奴や、頭のおかしい奴、俺の力を利用しようとしてくる奴。もしかしたら、アニメや漫画に出てくる謎の機関がやってくるかもしれない。


「これからどうしよ・・・・・まいったなぁ・・・・」


そうつぶやいたけど、もうだめかもしれない。自分の中は諦めとどうとでもなれという感情が渦巻いていている。

ベットの上で布団にくるまっているとだんだん眠たくなってきた。さっき起きたばっかりなのにな。疲れているのかな?




睡魔がじっくり、じっくりと忍び寄り、やがて意識を手放した・・・・・・明日も何も変わらない日常がくると信じて。








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