黄金の錬金術師
「ただいまーっと」
行き先を思い浮かべ、行きたいと願うだけでもうすでに瞬間移動できるようになった。
テレポートし易くなったことで、無意識に移動しちゃうんじゃないかなこれ・・・。
制御の仕方も覚えておかなきゃな・・・。
そう考えながら俺は自室まで移動し、リュックをおろした。
そして、自室のカーテンを全て閉め、外から誰も見ることができないことを確認すると証明をつけた。
準備完了。
「んじゃま、始めますとしますか」
何を始めるのかって? そりゃあ実験ですよ、物を創れるかどうかの。
俺は手のひらが上を向くように手を出し想像する。
(まずは金を創ってみよう、できるかな?)
たしか金って、展性、延性に富んでてピカピカ光っててズッシリと重い。ああそれと、金っていわれたらやっぱり金の延べ棒を思い浮かべるな。それからーー。
俺はできるだけ金についての情報を思い出しながら、イメージを固めていく。
(・・・。・・・。 で、どうすんだ?)
イメージを固めることはできた。
で、次は?
さっきからできろとか、作れって思ってもイメージした金は姿を現さない。
どうやら作れとか思ってしまうと、せっかくイメージを固めたのに曖昧になってしまうらしい。
瞬間移動は行き先を思い浮かべながら行きたいと願うだけで簡単にできるのだが、どうやら何かを想像して作ることはかなり難しいらしい。
ちょっと恥ずかしいけどしかたない。
俺は再び金を想像して、イメージを固め始めた。
そして、ある程度イメージが固まると、こう口にした。
「クリエイト!!」
バチっという音とともに、一瞬稲光のようなものが手のひらで発生し、俺は目が眩んだ。
てかなんだよ、クwリwエwイwトwwwってとっさに思い付いた言葉がそれかよ。
やばい、自分で言っときながらものすごく恥ずかしい・・・次からは心の中で言うとしよう。
俺はそう誓った。
何かズッシリと重たい物が手のひらの上にあることを感じながら、恐る恐る目を開けると・・・。
「・・・。 ・・・・・できた」
手のひらの上には燦燦と輝く写真や映像で見たことのある金の延べ棒?がのっかっていた。
実験は成功したかのようにみえたのだが・・・。
「なにこれ、くっそ重てぇ」
たしかに金ってのは重たい物質なのだが、ここまで重いはずがない。
なんたって、体の大きさはさして変わっていないが筋肉ムキムキ状態のはずなのに手が震えるぐらい重いのだ。
これは10~20kgくらいでは済まない。もっと重い!
俺は金の延べ棒らしき物を両手で持ちながら脱衣所まで向かう。
脱衣所にくると、そこにある体重計にこれを乗せてみた。
ミシッ、パキッ。
ミシッという音は体重計が軋む音で、パキッは目盛りのところのプラスチックに罅がはいった音だった。
目盛りが指す数値を見てみる。
「は?・・・130kgオーバー?」
この体重計は最大130kg量ることができる。だが、この金の延べ棒もどきは、130kgという重さを超え目盛りの針を振り切らしたのだ。
・・・どうやら、この「想像(仮)」という能力は、今この世に存在している物質を作りだすのではなく、本当に自分の頭の中で想像したとおりの物を創り出してしまうらしい。
今回はめちゃくちゃ重いと曖昧に想像してしまったため、結果このような物質を創り出してしまったのだろう。
「次からは具体的な重さなどの数値を頭の中に入れて想像してみるのがいいかな。あと事前にネットとかで調べてから物は創るとしよう」
そう言いながらこの金の延べ棒もどきをどうしようかと考える。
ふと思った。
「俺・・・130kgオーバーの物を片手で持ったのか・・・・」
自分が段々人間離れしていることに少し鳥肌がたった。
金の延べ棒もどきは人目につかぬよう庭の隅に埋めました。