表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異星界漂流記  作者: 笑わない道化
第三章~魔法学院編~
29/29

入学試験Ⅰ



メイドさんに案内され、しばらく廊下を歩き続けていたが、やがて一つの両扉にたどり着く。

メイドさんがその両扉に数回ノックしてから扉を開ける。

扉を開けたその先には、赤い絨毯が敷かれた応接室のような部屋に背中を向けた金髪の成人男性が見えた。


「やあ、遠路はるばるよく来たね。コウキ君」


その男性はこちらを見ずに言うと、ゆっくりと振り返る。


「僕の名前は、ジャスティン・アルバートという。アルバートは初代侯爵の名前でね。世襲性で代々の侯爵たちが名乗るようになってアルバート侯爵と呼ばれるようになったんだ。だから気軽にアルバートと呼んでほしい」


「は、初めまして。アルバート侯爵。私の名前は、星野 光輝と申します・・・よ、よろしくお願いします・・・」


金髪で瞳が翡翠色、小顔で艶のある長い金髪を後ろでひとまとめにしてある・・・イケメン・・・。

アデルさんや皇帝に引けを取らないイケメン・・・。まじでこの世界に住んでる人たちって俺がいた地球の人間と絶対、種が違うだろ・・・。おかしいよこんなの・・・顔が整いすぎてる。

さっきまでこちらの世界の女性に邪念を抱き、今は男性に対して顔を比べて絶望してる。自分の心境のコロコロ変化しているところに思わず苦笑いしてしまう。


「どうかしましたか?」


「いえ、すみません。ちょっと・・・考え事していました。あ、これ陛下からの手紙です」


何を考えてたか聞かれる前に、さっさとマクスウェル陛下の推薦状を渡す。

推薦状を受け取った侯爵はいかにも良質な木で作られたであろうデスクの上からヘラのようなものを手に取りだし丁寧に推薦状の封を開ける。


しばらく中の手紙を無言で読み、やがて口を開く。


「君のことはマクスウェルから魔水晶での会談でいろいろと聞いているよ。魔術について興味があるんだよね?」


「は、はい。ここには魔法学院があって、そこに行けば魔術のことをもっと深く知ることができると言われてやってきました」


「確かに、この魔法都市タールターニャには世界最高峰の魔法学院がある。魔術のことを知るには最も適した場所だ・・・。ただ、本心では君の推薦入学は諦めて欲しいと思っているんだ」


「え!? そ、それはどうしてですか?!」


そんな・・・せっかくここまで来て入学拒否なんてそりゃあないよー。こっちは推薦で入れてくれるって言われたから来たのに・・・。


「もちろん、この推薦状と私の口添えで学院には問題なく入学できる。そう入学は簡単なんだ。問題は入学後の生活だ」


「入学後の、生活?」


「さっきも言った通り、魔法学院には・・・正確にはオーギュスト魔法学院って言うんだけど、世界最高峰の魔法学院なだけあって世界中の貴族や高貴な者たちが魔術の深淵を知ろうとやってくるんだ。だから、学院内での持つ者と持たない者とのヒエラルキーが非常に厳しい。学院側も人死にが発生しそうなことに対しては決闘というものを用意するだけで、それ以外のことは競争力を高めるということでそういった差別や階級も黙認している。つまり、君にとって非常に居心地悪いところなんだ。」


なるほどな・・・もし、俺が入学したら周りの人間はほとんど貴族や王族などの上の人間たち。そんな位の高い人と良い人間関係が築けるだろうか・・・いや、無理だな。うん無理。

正直、アニメや小説の知識だけなんだが、身分が違いすぎる人間と良い関係ができる場面はほとんど見たことがない。歴史が物語っている。やはり、対等な立場がよい人間関係を築く一歩だと思っている。


「それに今は時期が悪い。多くの国に影響力を持つイリス教の総本山、マナ法国お抱えの聖女様も近頃入学する噂が流れているそうだ。そうなると学院内のヒエラルキーも一層厳しくなるだろう」


聖女様?わーおまじか、聖女なんて実在するんだ。ちょっと見てみたいかも。



「マクスウェルに頼まれて君には良くしてほしいと言われている。親友がお願いするのは滅多にないから驚いたよ。それほど、君は彼にとってとってかけがえのない存在だと思う。そんな君をむざむざあの場所に送るのは少し抵抗がある。どうかな? 一度立ち止まって考えてみてはくれないか?」


言動、立ち振る舞い。この人は本当にマクスウェル陛下の親友であり、俺のことを心配してくれて言っているのだろうと直感した。

行く先は人間関係最悪の地獄かー。昔の俺だったら避ける一択であったが・・・今の俺には力がある。どんなに不条理な壁があってもぶち壊せる力が。


「ご忠言ありがとうございますアルバート侯爵。ですが、せっかくここまできたので何か学んでから帰りたいものです。確かに、学院内ではよい環境には恵まれないと思いますが、魔術についてはもっと知りたいです」


「よろしいのですか? もし、もめごとなどが起きた場合、こちらは一切手をお貸しすることはできませんよ? この国は基本、中立の立場を取ります」


「構いません。もし何か起きたら、それは自分で解決してみせます」


「・・・意志は固そうですね。分かりました。遠路はるばるやってきた親友の御客人を手ぶらのまま帰すのも忍びありません。できる範囲でサポートいたします」


「ありがとうございますアルバート侯爵。短い間になると思いますがよろしくお願いします」


俺と侯爵はしっかりとした握手をするのであった。




「あ、そうそう。入学にあたり、コウキ君にはやってもらわなければならいないことがあります」


「え、それは何ですか?」


「それは――」



_____________________________________________



コウキ殿がこの邸宅を出たことを窓から確認した後、私はテーブルの上に常時置いてあるベルを鳴らした。


「お呼びでしょうか? ご当主様」


ベルを鳴らして間もないのに、一人のメイド姿をした部下が一人入ってくる。


「仕事だエマ。君直属の部下数人とともに先ほどの客人、コウキ殿を監視せよ」


「かしこまりました。監視のみでよろしいでしょうか」


「ああ、あとコウキ殿はかなりの手練れだ。尾行する際はエマ、君だけで行うように。他の者もサポートとして学院の関係者にまぎれさせる。準備は一任する。以上だ」


私がそう言い終わると、エマはうやうやしく一礼した後、音もなく部屋をあとにした。


私はただ一人いるこの部屋の中でぼやく。


「マクスウェルめ、本当にとんでもないモノを押し付けやがって」


手紙の内容と事前に魔水晶で話した内容では半信半疑であったが、今日直接会ったことで完全に納得した。


アレはやばい奴だと。


一見、自信がなさそうなオドオドとした覇気のない青年に見えたが、瞳を見て理解できた。

魔鳥レイヴの体色に似た黒い髪よりも、さらにどす黒い何かが瞳の奥にいた。あれは人族が決してなってはいけない瞳だった。幼少の頃から様々な人と関わってきた私ぐらいの実力者でなければ気づけないだろう。


対面してたときはなんとか平静を保っていられたが、一瞬でも気を抜いたら汗で顔が大変なことになっていただろう。自分の忍耐強さと実力に今なら自画自賛できる。


ともかく、今やることは彼に対しての対応だ。この国にいる間は何としてでも揉め事は起きないようにしなけば。一日中監視することは困難だが、日中は常時誰かが監視する体制にしなければ。

本当ならば厄介ごとに巻き込まれやすそうなあの学院に置きたくはなかったのだが、本人に魔術を学ぶ確固たる意志があるならば断わりづらい。


はぁ・・・っと無意識にため息が出てしまう。これから忙しくなるな・・・。


私は机の上に置いてあったコウキ殿からもらった手紙とはまた別のマクスウェルの手紙を拾い、再び目を通す。




=============================================


親愛なる我が友 ジャスティン


君が私の戴冠式に来てくれたことは記憶に新しいことだが、改めてこの場でお礼を言わせてほしい。我が晴れ舞台に来てくれてありがとう。

これから我が国メルランテ帝国は、混乱した時期が続くだろう。今は、敵対勢力の排除や城の復興。周辺地域の意識改善などすべきことが多く、忙しい日々を送っている。

いつかは再び君を招いて、素晴らしい国になっている姿を見せたいと思っている。


さて、唐突で大変申し訳ないのだが君にお願いがある。親友である君にしかできない頼みだ。

今、私の国には一人の異邦人がいる。その者は今回此度の革命で多大な功績を残し、革命の成功に最も貢献した者だ。名をコウキという。

彼は途轍もない力を宿している。君も知っている我が国最強の騎士バゼットとも渡り合える者だ。いや、バゼット以上に危険な人物だと思ってくれ。今、彼が私の国にいると、もしかしたら敵対勢力に利用されてしまうおそれがある。それだけは何としてでも避けたい事態だ。

そこで、コウキ殿をしばらく君の国のオーギュスト魔法学院に預けてはくれまいだろうか。最低でも3ヶ月くらいはそこに留まらせてほしい。最低3ヶ月で我が国を堅牢で盤石な国家に再建させてみせる。


君の国に厄介ごとを押し付けてしまうことについては申し訳なく思っている。だが、もうこれしかないのだ。側近以外で信頼できるのは君しかいない。それに、これは君の国にとっても後々メリットに繋がることだと私は信じている。

コウキ殿と友好関係を築ければ、必ず我々の強力な味方になってくれるだろう。また、今回の頼みに応えてくれれば、貿易の方面でいくらかそちらの条件を3年間呑もうと思う。いい返事を待っている。

魔水晶越しではあるが、また定例会談の場で会おう。


メルランテ帝国とエルト公国の更なる繁栄を願って

                        

                        

第11代皇帝 マクスウェル・デラ・メルランテ


=============================================


_____________________________________________



アルバート侯爵と面会した翌日。

侯爵の家から少し離れたそこそこ高そうな宿で一泊し、朝食を食べ終わって間もなく外へ出た。

早速ではあるが、オーギュスト魔法学院に向かうことにした。


「まさか、この歳で再び入学試験をやらされるとはな」


昨日のことを思い出す。

アルバート侯爵から言われた入学するにあたってやってもらわなければならないことは、試験だった。

いや、てっきり王族クラスの推薦状を持っているから、何もせずに学院にすんなり入れてもらえると思っていたから完全に出鼻をくじかれた。

アルバート侯爵が言うには、学院への推薦入学でも、コネや大金による入学でも、試験を受けなければならないらしい。もちろん、どんな成績でも入学はできるらしいのだが、学院側が入学後のクラス分けのため、その者の実力を知っておきたいとのことだ。


「しゃーない。面倒だけどやってやるか」


なんとかやる気を出して俺は空を飛ぶのだった。




タールターニャの都市部から離れ、しばらく空を飛行して、別の山まで来た。

先程まで人工物に囲まれた景色から一変、ここは木々が生い茂る自然界の景色であった。


オーギュスト魔法学院は、大きな湖の近くにある崖の先に建っていた。いや、なんでかなり高い標高にこんな大きな湖があるのか知らないが・・・。うわ、よく見ると湖の奥に滝まであるよ・・・。


建物はどこかの国の城と言えば納得するくらい立派な建造物であった。あちこちに塔みたいものが建っており、どの建物も天辺が尖っているからなんか刺々しい。


城の中には大きな庭園があり、遠目から見てもその大きさを実感できるくらい色とりどりの花の色が確認できた。

そして、タールターニャと同じく学院周辺では人が箒やらなんやらで空を飛び、行き交っていた。


今日は入学試験の日だからおそらく自分と同じ受験生が多いのだろうと思う。俺は人が並んでいる正門前に降り立ち、受付を済ませる。


アルバート侯爵からもらったやたら豪華な受験票を守衛に見せたら学院内には簡単に入れてもらえた。結構周りの人間と違って質素な格好だったが、怪しまれないのだろうか。

正門から入ってまっすぐに見える建物が試験会場だ。

会場から正門まで続く幅広くきれいに舗装された道を歩くとき、ふと周りの受験者を見る。


見るからにどこかの王侯貴族であるかのような整った身なりをしているのが大半だが、中には俺と同じ平民が着る質素な服装の者もちらほらいた。どの受験生も他人のことなど気にしていないのか、気にする余裕がないのか会場を真っ直ぐ見据えて歩いていく。そういえば、推薦入学でなければこの学院に入るのはかなり狭き門だってアルバート侯爵は言ってたっけな・・・。


「おら、どけよ!そこの平民!」


ドンっといきなり後ろから押されたような衝撃を受ける。

振り返ると、そこには身なりは良いけど柄の悪そうな男が俺を睨みつけていた。


「・・・ちっ!ゴブリンみたいな顔しやがって・・・平民風情が堂々と道の真ん中歩いてんじゃねえよ!邪魔なんだよカスが!」


「えぇ・・・あ、すみません。すぐにどきますね」


道幅は数十人が横一列に並んで歩いても余裕があるのにわざわざ俺だけに突っかかってきたのはどうしてだろうか・・・。


まあ、こんな単細胞の猿はあっちの星でも死ぬほど見てきたし、どうせ大した理由でも無さそうだから心を読む力を出さず、素直に道を開ける。反抗したら面倒になりそうだ。


俺のその澄ました態度が気に入らなかったのか、男はさらに怒り出し、突っかかる。


「てめえ! なんだその態度は! 俺はあのマナ法国の司祭補佐官を歴代務めているダス家の長男オゴーリ様だぞ! 分かったのならさっさと跪いて許しを乞え!!」


えー・・・困ったなあ。


・・・。


めんどくさいし今この場で殺すか。

いやいや、いやいやいや!待つんだ星野光輝。なんでもかんでも上手くいかなくなるとそのすぐ殺そうとする短絡的思考はやめよう!


でもどうやって切り抜けようか・・・むーーダメだなんも思いつかない。

俺は何か打開策がないか周囲をキョロキョロする。

だが、見えてくるのは、聞こえてくるのは受験者たちの俺に対する憐みの目や侮蔑の言葉だけだった。


「ダス家の人間に目をつけられるなんて、かわいそうな平民だ・・・」


「おい、あまり見るな。俺たちも目をつけられるかもしれないぞ。ダス家ってマナ法国の重鎮じゃないか。敵に回したらどうなることか」


「それにしてもブサイクな平民ねー。ほんとにゴブリンの亜種かなんかじゃないの?」


「クスクスやめてよ、本当にゴブリンに見えてきたわ。ゴブリンが魔法学院に入ろうとするなんて・・・クスクス」


ひでー・・・ひでーよ・・・

いくら異能を持ったからって中身はただの人間だ。まだ人間の心は持っていると思っている。

そんな陰口みたいなこと言われたら普通に傷つく。豆腐メンタルは健在だ。


「おい!何ぼーっと突っ立ってんだよ!さっさと跪いて許しを請えって言ってだよ!」


とりあえず言うとおりにして跪いてごめんなさいするか・・・

謝っても何か要求したりしてきたらその時は逃げて、後日誰も見ていないところでぶっ殺すか。


俺は素直にその場で跪いこうとしたその時


「おやめなさい、オゴーリ様」


突然、耳にいつまでも聞いていたいぐらい清涼で美しい声音が入ってきた。

声のしたほうに振り向く。


そこの見目麗しい美少女がいた。

歳は10代くらいだろうか、俺よりも年下なのは見た目で何となく予想できた。陽の光に当たると煌めく銀色の髪を長く伸ばし、白を基調としたドレス服を身に纏い、凛とした佇まいでそこに立っていた。


「マ、マリア様! こ、これは身分をわきまえない平民を懲らしめていただけで、何も悪いことはしておりません!」


「オゴーリ様、ここは魔法学院です。教会の場でも宮殿の場でもありません。魔法学院は全ての才ある者に対して門が開かれており、身分は関係ありません。己の身分を笠に着る傍若無人な振る舞いは恥と知りなさい!」


柄の悪い男に対して物怖じしない、はっきりとした声で叱りつける。


「で、ですが・・・この平民が」


「見苦しいぞ、オゴーリ。 それでもマリア様の側近の一人なのか? 聖女のお付きとしての自覚がないようだな」


いつの間にか四角い眼鏡をかけた、神経質そうな男がマリアなる美少女の隣にいた。

よく見るとマリアの周りには側近であろうか、身分の高そうな服を着た若い男女が数人守るように囲んでいた。


「ナバス! 俺に向かって今なんと言った! 俺はマナ法国の司祭補佐官であるダス家の長男でーー」


「黙れ。 それ以上その汚い声で喋るな。これ以上マリア様の評判を落とそうとするなら、貴様の父上にこのことを話して聖女のお付きから外してもらうぞ」


「グっ!」


それを言われた瞬間にオゴーリは押し黙る。聖女のお付きという役はよほど重要なのだろう。

何か言いたげな顔した後、諦めたようなため息をしてこちらに顔を向ける。


「・・・フン。運が良かったな、平民」


オゴーリは、見事な捨て台詞をした後にその場から立ち去った。

何が運が良いだ。最悪だよ、さ・い・あ・く!変に周りの受験者から目立ったし、俺の脆すぎる心も傷ついたわ!覚えていろオゴーリ!

俺は心の中で一人憤慨していた。


「もし?もし? お怪我とかございませんか? 私の側近がすみません。あの者から何かされておりませんか?」


マリアと言われてたあの美少女が俺に声をかけてきた。聖女とも呼ばれてたしこの子が聖女かぁ。

近くで見るとヤバい。あいやーほんとに美しい髪だ。染料とかで髪を染めてない銀髪は初めて見た。髪自体が本当の銀でできているかと思うくらい輝いていた。見惚れてしまう。俺は銀髪萌えなんだ。


「もし? 大丈夫ですか?」


何も答えずただぼーっと突っ立っている俺を心配したのか、マリアは再び声をかけてくれる。

その声でやっと我に返った。


「あ!え!? あ、あ、大丈夫です。何もされていません大丈夫です!」


「よかったあ。あ、申し遅れました。私は、マナ法国の聖女を務めさせていただいおります、名をマリアと申します。先ほどは私の側近が失礼なことをしてしまい、大変申し訳ございませんでした」


「い、いえいえいえ!マ、マリア様が謝ることではないです!き、気にしないでください!あ、俺―、じゃなくて、僕はコウキと言います」


「コウキ様というのですね。とても素敵なお名前です。ふふ、様はつけなくてよいですよ。よろしくお願いしますね」


何この子すごくかわいい。可愛すぎて直視できないわ。

自分は様と敬称をつけるのに、他人にはつけなくていいと言う。高貴な身分なのに

誰でも平等に扱う気さくさがポイント高い。


「それにしても珍しい服装ですね。どこからいらしてきたんですか?」


聖女マリア様は目を輝かせながら俺の出身地に興味ありげに質問してくる。

おそらく、俺の出で立ち含め顔立ちとかもかなり珍しいのだろう。

そういえば、この世界では黒髪も珍しいんだっけか。


「あ、あのあの、えっと僕はですね・・・えーと」


どう答えたらよいか悩んでしまい、しどろもどろになってしまった。

正直に異星からやってきました!って答えてもおそらく冗談だと思われてしまうだろう。

そうなると、テンプレの遠い遠い東の小さな国からやってきた的な感じでいいかな。

頭の中で回答ができ、俺が口を開こうとしたとき。


「マリア様、そろそろお時間です」


「ああ、そうでした。試験前でしたね。ごめんなさい、ナバス様。ついつい興味本位で・・・。それではお互い試験頑張りましょうね!コウキ様」


俺が手をこまねいている間にマリア様は、側近に囲まれて行ってしまった・・・。

せっかく喋れる機会だったのに残念だ。おそらく聖女という立ち位置は非常に高いのだろう。

もう関わる機会はない、そんな現実に少し寂しさを感じながら、聖女御一行の後姿を見送る。


見送った後、未だ周囲からの視線をを感じながらも、俺も試験会場へとトボトボと向かうのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ