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異星界漂流記  作者: 笑わない道化
第二章~帝国革命編~
24/29

未知なる闘争心



城の正門を抜けた俺は、皇帝がいるであろう城のてっぺんに向かって、ただひたすらに城内を駆け巡っていた。


城内はいまだに起こっている爆発音でパニックになっている。メイドさんや帝国の兵士、従者など多くの人が慌ただしく動き回っている。


その中を俺は


「俺は石ころ、俺は石ころ、俺は石ころ、俺は石ころ、俺は石ころ、俺は石ころ、俺は――」


ただひたすらに、念仏を唱えるがごとく自分が石ころであると言い聞かせながら行き交う人たちの間をすり抜けるようにして走っていた。

見つかったら即戦闘。この騒ぎだ、こちらは相手を殺すことはできないが相手は必ず俺を殺そうとするだろう。それに非戦闘員であるメイドさんや執事などここで働いている人に危害を加えたくないし、さけられるのであればさけておきたい。


だからひたすら念じる。念じながら、走り続ける。

テレポートの方が移動手段としては早いのだが、テレポートできる場所の条件は一度行った場所か正確な位置を知っていて映像でもなんでも現地の状況が分かる場所、そして自分の視界に入ったところまでだ。この城の構造なんて知らないし、皇帝の居場所も分からない。俺の索敵で一個人の場所を特定するなら少なくとも名前だけでなく顔を見ていないと特定できない。てか、現皇帝の名前、なんだっけ?

結局、一階から順に探していかなければならないのだ。おそらく城上部らへんにいると思うけど、この騒ぎだ、いつもとは違う場所に避難しているのかもしれない。


だが、俺の計画はすぐに破綻した。

広すぎんだよなんだよこの城の一階!! 何部屋あるんだよ!

常人では不可能な速さで走っているのだが、それでも全ての部屋をまわりきれない。

軽く100ほどの部屋を周って・・・俺は一階から順に探していくことを諦めた。城というものを甘く見ていた。外見は単純そうな構造に見えて、内部は結構広くて複雑なんだな・・・。


ということで、次は階段を探すことにした。階段を探し、登り、当初の計画通り上階をひたすら目指す。豪華絢爛な絨毯が敷かれた廊下や回廊を走り回り、階段を見つかれば駆け上がっていった。


階を重ねるごとに城の内装がどんどん豪華さが増し、装飾の宝石や貴金属が眩い光を放ち始める。

当初の予想通り、偉い奴は城の上層部にいるようだ。移動していなければ皇帝もここにいるだろう。自分の予想が的中し、さらに走るスピードを上げる。


そして、城上階の開けた場所の前で俺は止まり、念のため近くにあった柱の陰に身を潜めた。

その開けた場所はアニメや漫画で見た謁見の広間に似ていた。部屋は縦長で奥に豪華な装飾の椅子が二つある。この部屋の入り口から椅子まで赤色が主とした絨毯が敷かれ壁には大きな垂幕のようなものが取り付けられていた。椅子の前には人がいた。

数は14・・・いや、15か・・・。全身白銀の鎧と武装を着け、全員兜を被っているので顔、表情が見えない。


「あれが・・・帝国騎士団なのか・・・?」


雰囲気からみておそらく間違いないだろう。明らかにこれまで見てきた兵士とは風格が違った。兜をかぶっていて顔は見えないが、身体に身に纏うオーラのようなものを感じた。


「これで全員揃ったのか?」


椅子の後方に取り付けられた垂れ幕の影から豪華な服を着た老人が姿を現した。

皇帝かと思ったが、雰囲気からしてどうやら違うようだ。


「大臣、現在メルランテ城に在中している騎士団のメンバーはこれで全てです」


「うむ、では皇帝陛下からの勅命を下す! 現在、我が帝国に反旗を翻す賊どもが城の地下牢獄を襲撃している。おそらく重罪人として捕らえられている陛下の子息マクスウェルを救出して革命の旗頭にする気なのだろう。これ以上帝国の内部を揺るがし、不安定にさせることは防がなければならない。帝国騎士団は直ちに地下牢獄へ急行し、鎮圧に図れ!!」


「「「「「了解!!!!!!!!」」」」」


ここにいる帝国騎士団全員を地下牢獄に向かわせる気か。何としても革命を防ごうという意思を感じるな。

というか、お前ら皇帝直属の騎士団なんだろ?皇帝を守らなくていいのか?


「それでは地下牢獄へ向かう! 出撃するぞ!!」


俺が考え事している間にも帝国騎士団の奴らが行動に移そうとする。

まずい、帝国騎士団のメンバーは一騎当千の力を持つと聞く。一人でも地下牢獄に行かせればエリやアデルさん達が危険にさらされる可能性が高くなる。

ここで食い止めるしかない!

でもどうやって・・・相手は15人、ごり押しでは全てを相手にはできないだろう。




・・・。これはあまり使いたくないが・・・仕方ない!


俺は創造する。

空間を把握し、直方体を想像し、創造し、入れ物として大きさを決め、具現化させる。


次の瞬間、目先にいた帝国騎士15名は突如として姿を消した。

まるで神隠しのように唐突に、何の前触れもなく、消えた。


「こ、これは・・・! いったいなにが・・・お、起きているのだ・・・!?」


目の前で突如帝国騎士団の連中が消えたことに大臣は尻餅をつきながら驚愕していた。


ふっふっふ、さぞ驚いただろう。神隠しみたいだろう? 本当は空間ごと切り取って帝国騎士団ごと亜空間にしまったのだ。わざわざわが家がある亜空間とは別に創って。

亜空間では時間の概念がない。帝国騎士団の方々には革命が終わるまでおとなしくしててもらおう。





こ、これ、で・・・・一安、心・・・・・。



ズキン





「い、いっでえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」


あまりにも強烈な頭痛に俺は叫びながら床にのたうち回る。

能力の酷使した時に発生する頭痛である。能力を酷使すればするほど痛みは倍増する。空間を断裂し、創ることはかなり能力を酷使しているのだろう。前にも家を持ってくるため空間を切り取ったが、その時も能力使用で耐えられない頭痛が発生した。

頭がかち割れそうだ。


「な、なんじゃ!? 誰じゃ貴様は!」


痛みに耐えきれず叫んでしまった結果、大臣とやらに俺の存在を気づかれてしまった。

俺は身を起こし、なんとか痛みに耐えようとしながらも名乗る。


「お、俺は・・・通り、すがりの・・・て、テロリストだ!悪いが・・・・この、帝国はほ、滅ぼさせてもらう・・・か、覚悟しろ!」


目一杯かっこつけたつもりが、刺した指はプルプル震え、痛みのせいで何回も噛んでしまったのでなんかかっこ悪い決めゼリフになってしまった。俺、めっちゃダサ・・・。


「何を訳の分からないこと言うておる!? さては貴様が帝国騎士団を消したのだな? 騎士団の連中に一杯食わせるとはなかなかの実力者だろうが、残念だがここまでだ! お前は今ここでつぶさせてもらうぞ!」


そういうと、大臣と言われた老人はローブのポケットから何かを取り出す。

まさか大臣・・・お前が戦うのか?


取り出したのは・・・黒一色の石ころであった。

大臣はその黒い石に向かって声を出す。


「バゼット! おるかバゼット! 今陛下の警護中だろうが謁見の間まで下りてこい! 手強い賊がすぐ近くまで来ておる。早く来い!!」


どうやら、あの黒い石ころは攻撃する道具ではなく、遠くの誰かと通信する機能を持っているようだ。てっきり大臣自ら攻撃してくるのかと思ったわ。

とういうかバゼット? 誰だろう・・・。この城にいた帝国騎士団の連中は先ほど全員亜空間に閉じ込めたけど・・・他にもいるのか?

まあいいや。一人くらい何とでもなる。とりあえずこの大臣をとっちめて皇帝がどこにいるか吐かせよ。


俺は大臣に近づこうとした、その時。


ズシン・・・。    ズシン・・・。 ズシン・・・。

大きな地鳴りが上の階から聞こえ始め、やがて、その大きな足音はこちらに近づいてきた。


「お呼びですか、大臣?」


そして、それは垂幕の後ろから姿を現した。

体長は2・・・いや、3メートルほど・・・嘘だろ?・・・これほんとに人間????

全身白銀の鎧を身にまとい、左腕にはその体躯を半分以上隠せるほどの大盾がつけられている。腰にはこれはまた巨大な大剣を佩き、圧倒的な威圧感を出している。大きな腕と脚、胴体を持ちながら頭だけは異様に小さかった。顔はこれまた表情を表に出さないクール系のイケメンで、顔だけ見れば俺と同い年、もしくはそれよりも年下だと感じる若さだった。

頭と胴体で少し違和感があるのだが、それはまさしく武装した巨人であった。絶対人間じゃないよこんなの・・・。



「おお、バゼット!来たか!  あいつが賊だ、早く倒してくれ!!」


「大臣、我には陛下をお守りする命があるのですが・・・」


「そんなもの、あいつを早く倒せばすぐに元の護衛の任に戻れるだろうが! たった一人だ、さっさと殺して陛下をお守りしろ!」


「ううむ・・・・」


バゼットと呼ばれた巨人はしばらく黙り込んだ後、「承知」と短く応え、俺の方を向いた。


「貴様・・・何者だ?」


「え、お、俺ですか?・・・・俺は、テロリストだ!」


バゼットから放たれるあまりの気迫に圧されてしまった俺は思わず敬語を使ってしまった。その後、何とか持ち直して虚勢をはったしゃべり方をする。


「てろりすと? なんだそれは・・・いや、そんなことは今はどうでもいい。 貴様からは強い魔力を感じられなければ武人として纏うオーラも感じられない・・・・。どうやってここまできた?どうやって我の部下を消した?」


腰に佩いた大剣を抜きながら俺に問う。こわっ!剣を抜いて質問しただけでこの圧力。こんなのがいるって聞いてないよアデルさん・・・。

いつもなら余裕を持って戦えるのだが、今まで相手にしてきたやつらとは明らかに格が違う。正直いって怖い。逃げたい・・・。

・・・でも負けられない。ここで負けたらおそらくこの革命は失敗するだろう。そうなると森にいるエルムの人たちや他の種族のみんなが今後も虐げられ続けるだろう。


そうはさせるか!


「普通に走ってここまで来たさ! あなたの部下をどうやって消したかは秘密だ!! 知りたかったら俺を――」


倒してみろよって言いきる前に、俺の視界が一変した。二回ほど近くで轟音が鳴り、しばらくしてやっと視界が安定した。

気づくと右半分が真っ暗な視界で、左半分は高らかな壁と城外の街並みと晴れやかな空が見えた。



・・・ここ外じゃん・・・。


体の体勢を整え、下に足場がないため、浮遊の能力を使う。

辺りを見渡す。


視界のはるか先に、先ほどまでいたメルランテ城らしき建物のシルエットが見え、そして後ろには俺が半分めり込んでいた半壊の城壁があった。

俺・・・ここまで飛ばされたのか・・・。

周囲の状況を理解してやっと気づく。ここまで飛ばしたの、あいつがやったのか・・・。

予想通り、相手は強かった。ダメージはないが、俺が纏っていたバリアにひびが入っていた。このバリア先輩で宇宙を渡ってきたんだがなあ・・・。


思わず身震いをする。

それは恐怖から起こるものではなかった。武者震いというものなのだろうか。俺の頭の中では、すでに逃げたいという気持ちから闘いたいという思いに変わっていた。

いつの間にか頭痛はなくなっていた。おそらく脳内からでるアドレナリンで興奮状態になっているのだろう。いや・・・・そんなことはもうどうでもいい・・・そんなことよりも・・・・・・・・・・早くあいつとタたカイたい。


歯をむき出しにしてにやける。









俺の中の闘争心に火がついた。




_____________________________________________



「おお! よくぞやってくれたバゼットよ! さすが帝国騎士団の長!」


我の傍らで喜んでいる大臣をほっといて思考する。

魔力も武人のオーラすらも感じられなかった先ほどの賊、どうやってこの謁見の間までこれたのだろうか。先の襲撃で警備は薄くなっているが誰もいないわけではないはずだ。そして、我の部下をどこにやったのだろうか・・・。


賊を倒せば戻ってくると思っていたが、いまだ部下たちは姿を現さない。ということはおそらくあの賊はまだ生きていると考えられる。

確かに剣に当たった感触に違和感があった。賊の胴体を真っ二つにするよう、念入りに魔法は使っていた。思いの力で魔法と身体能力、武器の強化ができるマインドアップのさらに高度で限界を超えた究極魔法デザイアを使用したのだが、横腹に一撃が当たった瞬間、鋼鉄の壁のような硬い感触とともに賊は真っ二つになることなく吹っ飛んでいった。


本当はこのまま賊の追撃を行いたいのだが、今は陛下をお守りすることだ最優先だ。そして、今もなお地下牢獄への襲撃が続いている。そちらも鎮圧しにいかなければならない。

まずは陛下をどこか安全な場所へ避難させなければならない。次は地下牢獄の鎮圧だ。今この城にいる帝国騎士団のメンバーは我一人となってしまったが城内にいる兵士を集めていけば何とかなるだろう。

最後になってしまうが、先ほどの妙な賊を今度こそ討つ。部下たちを救出しなければ・・・。


「はぁ・・・・」


やることが多くて思わずため息がこぼれる。しかし、我はこの国の騎士団のトップ。責任ある立場であり、我が命に代えても国を守らなければならない義務がある。国のため、家の名のため、己の責務を全うしなければ・・・。


「大臣、早く陛下を安全な場所にお連れしたい。このままでは身動きがとれん」


「おお、そうじゃな。 お主には他にもやってもらいたいことがたくさんある。急ぎ兵を集めて例の場所に移動だ!」


例の場所とは城の上層階にあるとある部屋の隠し通路しか通じていない、皇族貴族専用の避難所である。その避難所は帝都外の隠れた用水路にもつながっている。要は緊急時の脱出通路だ。

そこに陛下をお連れすればとりあえずは安全だろう。


早速、我は陛下の下へ行こうと垂幕の裏にある最上階への階段に向かおうとする――


「やあ♪」


まるで古くからの友人に気さくに挨拶するような軽快な声が突如我の足元から聞こえた。奴だ。奴の声だ。

脳で瞬時に反応できなくても体は既に反応していた。声の出た方へ振り返り、姿は確認せずとも声の出た場所に大剣を振るう――。がしかし


「ガッ!?!?」


顎に強烈な衝撃と共に我の身体は宙に浮き、天井に頭をめり込ませた。

すぐに天井から頭を引っこ抜いて体勢を立て直そうとするが、視界が安定しない。


「ぬう・・! マインドアップ! リカバリー!!」


視界を安定させるため、とっさに魔法マインドアップとリカバリーを使用。立て直しを図る。

視界は安定、身体も強化されたが肝心の賊の姿が確認できない。辺りを見渡す。



ガッッッッキイイイイイイイイイイイイイ――――――――ンン!!!!!



腹部に強い衝撃と甲高い金属音が鳴り響く。衝撃によって体が後方に吹っ飛ばされそうになる。


「ぬううううううん!!!」


その場でなんとか踏ん張り、吹っ飛ばされるのを防ぐ。そして、ようやく賊の姿を確認することができた。


「うーーん・・・。 この星の裏側までぶっ飛ばす気持ちで殴ったんだけどなあ・・・硬いなあその鎧」


右腕を突き出した状態で賊はそんなふざけたことをぼやいている。この鎧はこの世で最も硬い鉱石、幻硬石(げんこうせき)で作れられた帝国の至宝であり、世界最強の防御力を誇る鎧である。さらに我の魔法で常時エンチャントしている状態なのだ。ダメージどころか衝撃すら与えられないはずなのに・・・!


「やめだ・・・」


「何?」


「やめだやめだ・・・あなたを抑えるには手加減なんてできなさそうだ。殺すつもりでいかなきゃあ・・・ダメだよなあ・・・」


物凄い醜悪な笑顔でこちらを見る。明らかに正気を失っている。この男には正に狂気という言葉がふさわしい。


「ここからは全力で殺しにいくから・・・死なないでくれよ、バゼットさん♪」


最初、なにも感じられなかった賊から敵意をすっ飛ばして明らかな殺意がヒシヒシと伝わる。

常人なら怖気づき、気を失う程の殺意だ。現に近くにいた大臣は泡を吹いて失神している。

しかし・・・だからなんだというのだ? この程度の殺意、戦場で何回も経験してきた。臆するにあたわず。


・・・。


冷静に振舞って見せているものの、実際は自分の中の気持ちの高ぶりを抑えられずにいられなかった。

今日この頃、陛下の護衛ばかりで戦場から遠のいた生活を送っていたのかひどく退屈していた。この国では我よりも強いものはいない。いつからだろうか・・・戦場や日々の仕事で退屈を感じ始めたのは・・・。いつからだろう?自分よりも強い人間がやってきてほしいと願ったのは・・・。

隣国であるエルド王国には英雄や勇者がいるらしいが、おそらく戦争にでもならない限り相対する機会はほぼないだろう。

我は心のどこかでまだ見ぬ強敵を欲していたのかもしれない。そして、一方的ではなく退屈でもない闘いに飢えていたのかもしれない。



・・・・。・・・・。・・・・。







「貴様、名はなんという?」


「俺か? 俺はコウキだ」


「そうかコウキという名か。 ではコウキよ、闘う前に我も名乗らせてもらおう! 我が名はバゼット・マクガフィム!! メルランテ帝国騎士団団長であり、武でこの国の頂に君臨する者である!! 我が栄光と名誉のため、貴様はここで討たせてもらう!!!    では・・・・参る!!!!」













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