英雄の息子のダメな方
初投稿、初心者です、つまらない物です
享年37歳、俺は病で死んだ。
『この魂は弱いな、これじゃあすぐ死んでしまいそうだ。どうするか……、とりあえず強者に敏感にして勝てない戦いは避けれるようしておくか。さあ行け……その使命を果たすのだぞ』
俺は何とか言う難病になって死んだはずだった。
家はそうゆう家系だった様で、4年前にも母さんが同じ病気ポックリ逝っちまってる。最後は笑顔で死にたいなんて言って死んじまった。まぁ30越えてたから俺も泣きはしなかったが、俺も医者から母さんと同じ病気だって診断された時は運命だって覚悟決めたんだよ。
それが気付いたら赤ん坊になってて、しばらくしたら母さんらしき女性がでかい屋敷に忍び込んていき、なんか手を輝かせたと思ったら、 混乱する俺を他所に母さんは堂々と部屋に入って行ったんだ。
中にいる人達は皆糸が切れたように眠っていた、どうやらお産を終えた直後らしい。真新しい毛布に寝かされた男の赤ん坊が目に入った。
あれ?まさか、と思っていたら母さんはその赤ん坊を抱き抱え、代わりに俺を毛布に寝かせる。そして最後に泣きそうな表情で俺の額にキスをすると部屋を後にして行った。
誰か…………ちょっと説明してよ……。
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あれから十年が立った。
月日が経つのは早い、あの日から驚きの連続だった。
特に驚いた事が三つある。
一つはこの世界は俺の元いた地球とは違う世界だったこと。
簡単に言えば剣と魔法のファンタジーの世界だ。魔物が居て、妖精が居て、王国があって、貴族が居る。そんな世界だったのだ。
「レインッ!!ボケッとするなッ!!」
怒号と共に木剣が振り抜かれ、俺は防ぎ切れずに右肩を強打した。
「アギッ!」
「そらッ!どうした!?レイスならばそれぐらい防ぎ切るぞ!」
この木剣で俺を痛め付けている炎の様な真っ赤な髪を短髪に刈り込んだ頭をしたマッチョなナイスガイを紹介しよう、名前をレオン·グランツ、この世界の貴族であり残念な事に俺の父親である。まぁ……義理だけど。
「あはははは!兄さんは相変わらず鈍臭いね!」
「ってぇ……うるさい!お前が出来がいいんだよ!俺は普通だ」
屋敷のやたらと広い庭で特訓というシゴキを受ける俺を、近くに座り込んで笑う真っ赤な髪の俺とほぼ変わらない歳の少年はレイス、俺の産ま……すり変わった一年後に産まれた、いわば弟だ。義理の……。ちなみに髪は父さん譲りだ。
「普通ではならん!レイン!貴様は自覚しろ自分が誰の子であるか!」
そうこれが驚いた事二つ目。
グランツ家は貴族だが、ただの貴族じゃなかった。レオン·グランツは英雄だったのだ。
幾多の魔族との戦争をその個人の力だけで勝利に導いき、戦神とまで言われた生きた伝説。俺はその英雄の息子になってしまったのだ。不本意だが。
「あなた、そろそろ夕食ですよ」
屋敷の方から母さんの声がかかった、やっとこの地獄の特訓が終わる。
「よし、ならば最後の打ち込みだ!心しろレイン!!」
「えっ!っちょ!?グフッ!!」
終わったと思って油断した隙に、腹にモロ父さんの木剣を食らって俺は吹っ飛ばされた。
「あら?情けないわよレイン?もっとしっかりなさい」
屋敷から足音が近づき俺を一人の黒髪の美女が見下ろした。この美人だがどこか日本刀の様な怖さを持つ女性はクレア。レオンの奥さんで俺の母親に当たる人だ。義理ですけど。
「まったく、鍛錬が足らんぞレイン精進しろ」
「父さん今日ぬるかったよ?明日から僕もう少し強くていいよ!」
「まぁ、レイス無理はいけませんよ。母さんが回復出来ても怪我は痛いんですから」
地面に転がったまま動けない俺を放って3人は屋敷に歩いて行く。父レオンは英雄、母クレアは回復魔術の使い手、そして弟は二人の才能を受け継いだ天才。
そんでもって俺は今じゃもっぱら『英雄の息子のダメな方』なんてメイド達からも言われる有様だった。そりゃそうだ、だって英雄の息子ですらないんだもんよ!
痛みが引くのを待ちながら、俺は憎々しげに思った。最初は言葉を覚えて、魔法みたいなもんがあるのを知って浮き足立った、訓練が始まってからは心が熱くなった。
だが現実ってのは甘くなかった、魔力量はさほど多くなく魔術の才能も剣の才能も乏しかった。
両親が弟を可愛がる様になるのは必然だった。
「レイン様、大丈夫ですか?」
「ミレーユ……」
そんな俺に優しい言葉を掛けてくれる唯一の人、メイド服を身にまとった柔和な雰囲気の少し垂れ目がちな黒髪の女性。
「ただ今、回復魔術を掛けます」
「いいよ、もうそんなに痛くないから」
彼女に強がりを言って立ち上がり、土を払って歩きはじめた。
ミレーユも俺の後に続いて屋敷に向う。
彼女が驚いた事の三つ目だ、正直数ヶ月前ミレーユが屋敷のメイドとして働き出した時は度肝を抜かれた。
チラッとミレーユの顔を横目で覗きみる。
彼女は優しい微笑みで俺の事を見つめていた。
本当に度肝を抜かれたよ、母さん。
まあ、そんなこんなで俺はグランツ家で生活していた。あの日までは……。
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朝早く、 ガシャァン!と何か陶器が割る音が屋敷に響いた。
何事かと様子を見に行けば、ドアを開けた先には顔面蒼白のミレーユが床に散らばった何かの破片が凝視している所だった。どうやら何かを壊した様子だ、あそこにあった物は確か壺だったかな?
「ミレ……」
ミレーユに声を掛けようとした瞬間「何事だっ!」と父さんが乱入してきた。そして中を一瞥すると顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
あとから知った事だがミレーユが壊した壺は父さんが大事にしていた高価な壺だった様で、この時の怒り具合いはまるで火を噴く悪魔の様であったとメイド達が感想を述べていた。
「貴様……!よくも!!ええい!!クビだとっとと出て行け!!」
クビ?たかが壺ぐらいでそんな、と俺の思いとは裏腹にミレーユは反論の一つもせずにさっと部屋から出ていき、父さんは肩を怒らしながら自室に帰っていった。
急展開だった、先程は現場にいたにも関わらず、空気のような扱いだったが、このままじゃあマズイ。このままじゃあミレーユが……母さんがクビにされる。
俺は知っていた今ミレーユ母さんの家計はそれほど裕福でないと。今グランツ家のメイドをクビになれば、近いうちに今住むいえから立ち退かなくてはならない事を。
そしてそれは死と直結するほどの一大事だと。
動くなら今しかない、俺にできる手は少ないやるなら早く動かなきゃ行けない。
覚悟を決めろ、勝機はある。グランツ家のルールでやるあるなら!
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「父さん、決闘をして下さい」
父さんが夕食の席に着いた瞬間俺は言い放った。言って少し後悔した、もう引き返せない。
「決闘……、というとグランツ家のルールでのという事か?レイン?」
「はい、そうです。どうしても聞き入れて貰いたい我儘があります」
グランツ家の決闘、決闘と言っても命の取り合いではなく、あくまで意地の通し合いのようなものだ。
当時レイスが8歳の頃、どうしても真剣が欲しいと駄々をこねた事があった。
父さんも母さんも反対し、どうにか説得しようとしたがレイスは聞き入れず、父さんがならばと取った手段が決闘である。
レイスは父さんに一撃でも入れたら勝ち我儘を通す事が出来る、父さんは相手に負けを認めさせなければ勝ちにならない。そんなルール上で決闘を行う。
しかしルールはあっても決闘だ父さんは甘くなかった。レイスは訓練をするような感覚で父さんに向かっていって木剣で滅多打ちにされた。ふだんよりさらに鋭く痛い打ち込みにレイスは見る間にズタボロにされ、最後は利き手を折られ、止めに傍らで観ていた俺まで腰を抜かす本物の殺気を浴びせられ心をへし折って父さんは勝利した。
8歳の実の子にこの仕打ちである。グランツ家では我儘一つで命を掛けなきゃいけない。まぁ、レイスは次の日からリベンジに燃えてより鍛錬するようになったから、この親にしてこの子である。
話を戻そう。しかしならば逆説的に言えば一泡吹かせられれば我儘一つどんな事でも聞いてくれるのだ。
「ちょっと、兄さん本気?やめときなって、はっ!ヘタしたら死んじゃうよ?」
承知の上さ、ルールは上記の物のみ、どんな卑怯なてでも一撃入れればいいんだろう?仕込みはバッチリ、落とし穴、草輪、括り罠、設置式ボウガン、絶対に一撃入れて見せるさ。ミレーユ母さんは俺が救う!
「ならレイン、外に出ろ。覚悟を済ませてな」
ザワッ!と全身の細胞が泡立つ様な感覚に包まれた、生まれ付きそうだった、絶対に勝ち目がない敵を前にするとなる感覚、相手が強ければ強いほど感覚が冴える!でも未だにこれ以上の感覚を出す生物に俺はあったことが無い。
「はいッ!」
逃げる理由には行かない、覚悟を決めろ!
決闘開始から十分がたったぐらいだろうか……、結果から言えば俺はすでボロボロだ。打ち身や裂傷の無い所を探す方が難しいだろうし、体力も底を付きかけて肩で息をしているよ。
片や父さんは無傷もいい所、罠も全部力技で回避された、力の差は歴然、勝てるわけなかった相手は化物だ勝てっこない……、端から無理だったんだ。
「どうした?まだやるのか?降参せねば、決闘は終わらんぞぉぉぉぉおおッ!!!!!」
「ガボァブロォォォ!!」
見切れない速度で飛んできた剣閃になす術なく蹂躙され、俺は胃液と血の混ざり合った液体をぶちまけながら宙を舞、地面に叩きつけられた。
俺は握った木剣の感触を確かめ、よろよろと立ち上がろうとする。
そこにさらに腹部に衝撃、腹を蹴り上げられたらしい。
「ガハァァ!?」
息が出来ない!空気が入って来ない苦しい、辛い、もう負けだやっぱり勝てないんだよ。
「まだ降参しないか、思った以上に粘るな」
「……?」
父さんが何を言っているのか一瞬分からなかった。
だがすぐ分かった、俺は立ち上がっていた。木剣を構え戦おうとしていた。心は折れてんのに身体は折れてない、案外やるな俺。
ボギュリァ!とよく分からない音を立てて、俺の右腕で明後日の方向へ向いた。
「……ァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺は叫び声と一緒に両膝を着いた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいぃ…………。
涙が溢れた、余りの痛さに額を地面に擦り付けて泥に塗れてのたうち回る。
「どうだ降参しないか?」
父さんの声だ、降参する!…もう負けでいい!…よく見たら骨が突き出して来てる!もう剣が握れない。
……
「まだやる……か」
「……ば?」
俺は落ちた木剣を左手で手繰り寄せていた。なんでだ?……ッ!?
父さんの振り返った剣に咄嗟に左手の剣で防ごうとする。
ゴギィッ!鈍く軋む様な音と瞬間熱くなったと錯覚した左手の指が、叩かれたのが木剣ではなく、俺の握り手であると言っていた。
「アガぁァ…………」
「どうだ?もう剣も握れんぞ?ん?負けを認めたらどうだ?降参すればすぐ怪我は治った苦しまなくてすむぞ?」
……
ちきしょう、分かってんだよんなこと……。俺は痛みに呻き、額を地面に付け土下座の様な姿で蹲る。
「俺…………け……です……」
ザッ
「なんだ?聞こえんぞ?」
後ちょっと…………。目の前には取り落とした木剣の柄。
「……れ……ま……で……」
ザッ
「聞こえん!!ハッキリ言わんかッ!!」
ザンッ!
「俺の…………がぢだ!!」
俺は木剣の柄を土ごと噛み締め、じっと練っていたなけなしの魔力を全部両足にぶち込んで、全身のバネを使いレオンに向かい跳んだ。
至近距離からの渾身の一撃だ!当たれええぇぇぇぇぇぇ!!
木剣にはレオンを斬る感触が、いや感触がなかった。
木剣は空を切っていた。レオンは身を捩り、危なげなくレインの剣を躱し反撃がレインの脇腹に吸い込まれるところだった。
「ゴブゥァッ!」
血と涙と涎と泥が混ざり合いもう何だか分からない液体を撒き散らし、地面を転がって止まった俺の身体はもうどこが痛いとかそんな事は言っている状態では無かった。
脚に無理に魔力を流したせいで筋肉は所々断裂している様だし、骨折箇所は数えるのも億劫になる数だし、右腕は再起不能、はあ……視界も右目が腫れて開かない、左は血が入ったのか真っ赤で見えないな。生きてるのが不思議だ……意識はあるが痛すぎてもう何回か気絶と覚醒を繰り返してるから、いつぶっ壊れるか分からんな。
終わりだ、策もない、心も折れた、身体も壊れた、完全に終わった。
身体から温かい湯が流れ出るように、身体が弛緩していく。
ちきしょう、ダメだったなあ……やっぱりヒーローにはなれなかったなあ。誰かを助けるヒーローにはなれないだろうけど誰か身近な人ぐらいは助けられる人になりたかったな。
……
ごめんよミレーユ母さん、でも仕方ないさ俺には力がない、才能もない、一回ぐらいは命掛けてなんて思ったけど、すぐ弱音吐いて逃げるしな、ハハッ、笑える。
……
さっきからなんだよ、もういいんだよ!終わった!動けない!痛いんだよ身体中が!だからチラつくなよ!こんな時にあん時の事なんか!病気だったんだよ仕方ないだろ母さん!!
……母さんは肺の難病だった、先進医療もやった、でも回復の見込みはなかった。日に日に萎びてく母さんは見ていて辛かった。でも治療中の母さんは明るかった、『絶対長生きする!出来ないなら笑顔で死んでやる!』なんて冗談めかしに言っていた。
なのに死ぬ直前になると、泣いて泣いて、『怖い、死にたくない、わたしだけ……やだぁ……じにたくない……』そう言って最後まで泣いて親父の手を離さなかった。
そんな母さんの姿が頭から離れない!泣かなかった?自分の無力さが不甲斐なくて、情けなくて、助けられ無くて泣けなかったんだ!!
母さんがミレーユ母さんに重なるんだ。
今、伸ばせば届くんだ!今!足掻けば手が届くんだだよ!!
命がなんだ……一度しただろ死ぬ覚悟、何なら余分に生き長らえた!だったら足掻けよ雑草みたいに!!
全身痛いのは立ち上がっているからだ、目は見えない、でも平気だ細胞が泡立つ感覚こいつの先にアイツはいる!
一撃だ、一撃入れればいいんだろう!!どこだ?そこか?居たな、そこだ!絶対当てる!
くたばりやがれ!
俺は渾身の力を込めて腕を振るった。
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「うっ……ここは?」
「レイン目が覚めた?」
「母さん?…………決闘は!?」
身体を起こそうとして、上手く動かせずその時点で俺はベッドに寝かされと気づいた。
「傷は治したは、でも体力は戻せない大人しくしていなさい」
どうやらクレア母さんの治療を受けた様だ。身体に痛みがない信じらんないぐらい新品だ。ただものすごい倦怠感が身体中を支配してるけど。
「どれぐらい寝てた?」
「まだ一日経ってないわ、あなた」
部屋の隅に父さんが陣取って居た、雰囲気的には怒っていそうだ……なんでだ?
「レイン」
「はい、……父さん」
「我儘を聞いてやろう、言ってみろ」
ギョッとしたてっきりダメだったと思ってたのに、あれか?頑張ったご褒美か?まぁ……命掛けたしそれ位はね。
「あ、はい。ならミレーユのクビを取り消して……ください……」
あれなんか偉く面食らってるぞ、クレア母さんも驚いてるし、マズったか?
「ああ、えっと……ミレーユのパンケーキが俺は好きなんだ!だから……」
「分かった」
おお??本当に?なんかあっさりと……いや良しとしよう疲れたし。
「それだけか?なら身体を休めろ、しっかりな」
「ではゆっくりおやすみなさい」
「ああ、うんおやすみぃ………」いいながら二人は部屋を出ていった、レオン父さんは小難しい顔でクレア母さんは満足そうな笑顔だったなんだろ?とわいえこの時既に半分近く睡魔に負けて夢の中だったからよく分からないよな実際。
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「まさか他人の為だったとはな……」
「フフッ、すぐミレーユの家に使いを出すは」
レオンとクレアは私室で暖炉を囲み語らっていた。内容は劣っている子だとばかりいたレインの底知れなさに着いてだった。
「あれは化けるかもしれん俺以上に……」
クレアはグラスにワインを注ぎ主人に渡しながら質問した。
「あら?随分高い評価なのですね?」
レオンがクレアの言葉にクツクツと笑いながら答える、その顔は獰猛な野生動物のそれであった。
「俺には死の恐怖を思い出させた奴だからな!ハッハッハッ!!」
実際の所、最後のレインの一撃は当たったいなかった。
瀕死の重症の中立ち上がって、よろよろと近づくレインにレオンは戦慄した。心は完璧にへし折って身体もこれ以上は死ぬという所まで痛め付けた、身体から力が抜けたのも見届けた、なのにレインはまた立ち上がってきた。
レオンの長い闘争の歴史の中にもここまでされ、自害した者を除いて,再度立ち向かって来た戦士は……いや生物はいなかった。
レオンが束の間、戦慄に戸惑っているうちにレインはすぐ目の前に迫っていた。レインは渾身の一撃を振るった、なんてことは無いただの平手、しかもへし折れた腕の打った方がダメージを負う様な攻撃とも呼べない代物だ。
しかしレインの一撃は空を切った、そのまま倒れ込み意識を完全に手放した。待機していたクレアが焦るほどの重症であったのだらか仕方ないことではある。
そしてレオンはというと、今しがた立っていた場所から忽然と姿が消えていた。
レオンの立っていた場所には地面に小さなクレーターが出来ており、その後方十メートルにレオンはいた。冷や汗をびっしょりとかき肩で息をしているレオンなど見たことがある者は多くない。ただの平手しかも威力など皆無の……それによってレオンは死を錯覚させられたのだ、レインの気迫と執念によって。
「俺の心に一撃が入ったのだ褒めずにいられようか!」
これから楽しくなるな ……、そう呟きレオンはグラスを呷った。
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ちゃんといるだろうか、不安だ……。
未だに実感がないんだよな、夢だったと言われた方がまだ納得出来る。
朝食を食べる為にいち早く向かった食堂のドアの前で、俺はかれこれ五分はもんもんしていた。
ミレーユがいなかったらどうしよう、昨日の父さんとのやり取りは夢だったのでは等とグダグダしているのである。
「ああ、……やっぱ怖い」
「何してるの兄さん?早く入りなよ、へへっ昨日は珍しく頑張ったそうじゃん」
「あ」だか「は」だか言ってる間にレイスは食堂のドアを開けて中に入ってしまった。そして一番に目に入った人に安堵の息を吐く。
「おはようございますレイン様、そしてありがとうございます……レイン様」
「おはよう、ミレーユ今日はパンケーキかい?」
End
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