3.休日
お久しぶりすぎてなんといっていいやら。
リハビリかねて、今回は短め。
今後もゆっくり更新だと思いますが。
コウさんと一緒に珈琲とか。
ありえない。。。
激しく動揺しながらも、結局大好きなウィンナーコーヒーを選んで、注文することにした。
「ウィンナーコーヒーなんて、久しぶりに聞いたなぁ。」
ニコニコしながら、コウさんが言う。
「このお店のはおいしくて、つい頼んでしまうんです。
シンプルなコーヒーも好きなんですけど。
コウさんは、シンプルなほうがお好きですか?」
それとなく、好みを聞いたりするのはもうバイト時代の習慣。
莫迦だな、もうこのひとにお茶も珈琲も淹れる機会なんてないだろうに。
「うーん、単純にあんまりいろいろ飲んだことがないだけ、かな。
この前、アサミさんが淹れてくれたミルクティーはおいしかったよ!
めったに飲まないから、なおさらかな。」
「お口に合ってよかったです。
お客様にお出しするものを淹れるのは久しぶりだったので、ちょっと緊張して。」
そうこう話しているうちに、ウィンナーコーヒーが出された。
ふふふ。この生クリームがここのはおいしいんだよな。
「ニコニコしてる。大好きなんだね。」
コウさんがニッコリ言う。その笑顔、反則。
ちょっと顔が赤くなっている気がするけど、気にしない、気にしないぞー!
「そう言えば、今日はお休みなんですか?この辺はよくいらっしゃるんですか?」
あ、あんまり突っ込んで聞いたら失礼かな。でも、気になる。
「そう、お休みだったので、ふらっとこの辺来てみたんだけど、目当ての美術館が休みだったんだよね。
それで、どうしようかなー、と思って、このお店が目に入ったわけ。」
「ああ、定休日が月曜じゃない美術館、ありましたよね、この辺に。
そこですか?」
「そうそう。
だいたい美術館って月曜休館だろうと思って、確認しないできてみたのが敗因。」
ずっとニコニコしながら、伏目で珈琲を飲む姿が眼福すぎる。
と、私は何を考えてるんだか。
自分に苦笑しつつ、私もウィンナーコーヒーをこくりと飲む。
「アサミさんは、ここはよく来るの?」
「そうですね。この辺、美術館がたくさんあるので、そこに行った後はたいてい寄ります。
雰囲気が好きだし、食べ物もおいしいので。」
「そうか。じゃあ、俺もまた寄ってみよう。
それで今日は、アサミさんはランチに来たの?それとも美術館帰り?」
「ああ、私はこの先のギャラリーを見に来たんですが、予想より早めに見終わってしまって。
これからどうしようかと、予定の立て直しのつもりもあって、ここに。」
「そうなんだ。
用事があるのに、俺に突き合わせてるんだったら申し訳ないなと思ったから。」
「いえ、そんなことないです!
確かに目が合った時は驚きましたけど。
声かけていただいて嬉しかったです。」
いや、急にそんなこと言わないで!心臓がキューとする!
「で、アサミさんはこの後どうするつもり?
ランチに誘いたいところだけど、ちょっと早いよね?
それとも早起きでお腹ペコペコ?」
うわー、コウさん、ランチって言ったよ。
って、もういい加減にしないと、心臓が持たない。
ええと、ファンモードはこのくらいにして。
「そうですね。ここからバスで少し行ったところに、陶芸作家さんの記念館があって。
そこにとても気分がいい場所があるので、そこに行こうかな、と思っていました。
一度行ったとき、その居心地の良さに、ここにずっといられる、と思って。
今日はお天気もいいし、いいかなぁ、と思って。」
「へー、そんなところがあるんだね。興味あるな。
じゃあ決まり。
これを飲んだら、そこに行ってみて、それでそのあと少し遅めのランチというのはいかが?」
コウさんは、もちろん一緒にだよ、と笑う。
もう今日は笑顔しか見ていないこのひとが、殊更にっこりと笑うものだから、私は抵抗できない。
「わかりました。ご案内します!」
「うん、よろしく!
でもせっかくおいしい珈琲だから、ゆっくりいただこう。」
もう、一挙手一投足が美しくて、ずっと見ていたい気持ちになるけれど、それもなんだか違う気がして、気持ちを切り替える。
そう、このひとは今日はプライベートなんだから、ファンとして一緒にいてはいけない。
たまたまお知り合いになったものとして、たまたま時間が合ったから。
そんな気持ちの切り替えを知ってか知らずか、コウさんはずっと穏やかなままで、のんきな話をしばらく二人で楽しんだ。




