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エピローグ

その日も下松は煙草をふかしていた。

上方に勢いよく紫煙を吐き出すと遠くの空に浮く入道雲が目に入った。

季節は夏だった。

下松御用達のデパートの屋上はがらんとして人気がなく、物思いにふけるには打って付けの場所だった。

それに現代社会で喫煙者ほど肩身の狭い者は無いのだ。

必ず人気の無い所で吸うのが最善だろう、と下松は思った。

右手の指には煙草を、左手には花束を携えていた。


「こんな所に居たのかYO」

「寺崎か」


黒いスーツを纏った寺崎が後ろから歩み寄ってくる。

寺崎は生きていた。

ひと月ほど昏睡状態には陥ったものの先日復活した。

下松はしぶとい男だ、と嘆息したものだった。

街中がゆったりとした午後、シエスタを思わせる街の静けさが下松には可笑しかった。


「お前の口調は戻らないんだな」

「これは元々だYO」


山峰は死んだ。

交通事故、トラックに横から撥ねられたのが原因だ。

山峰の死と同時に下松達の頭のもやも晴れ渡ったが、下松自身は納得することはなかった。

撥ねられる瞬間さえ、山峰は笑い、目を輝かせていた。

救急に連絡する間もその笑みは絶える事はなかった。

下松は唇を震わせた。

理解不能。

人は理解出来ないものに一番の恐怖を示す。

下松は脳裏には未だに山峰の影が粘りついていた。


「どうしたんだYO」

「いや、また行こうかと思ってな」

「墓参りか?」

「ああ、タジヒットは大切な仲間だからな」

「愛の桜じゃないのかYO」


タジヒット、山峰が改名させた名前だが、語源は見つからなかった。

ダランド、タジヒット、ルラーリ。

全く理解は出来ない、デタラメだ。

下松は苦笑した。


「どっちでもいいさ」


下松は空を見た。

高く澄んだ空の向こうに鳥の群れが見えた。


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