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何をしているんだ山峰

山峰の能力は記憶操作だ。

手に入れた理由は分からない。

そもそも手に入れるという表現が正しいのかも分からない。

両親に惰性のような状態で養われ、

級友に汚物のような状態で排斥され、

社会に空気のような状態で無視された。

そんな山峰が路上で寝込んだ日に突然覚醒した能力だった。


記憶を操作する、とは単純で強力な能力だった。

例えば意中の女性の記憶を書き換え、虜にする。

例えば街中の不良の記憶を書き換え、廃人にする。

例えば団体の団長の記憶を書き換え、幹部になる。


少数のコミュニティにおいては山峰の思い描いた記憶の形こそが、現実の形となることもあった。

手から炎が出る、という記憶を植え付ければ異世界の出来上がりだ。

実際に炎が出ていなくも、脳は思い込んでしまえば幻覚を作り出す事が出来るのだ。

全員に同じ記憶を植え付ければその世界を全員が体感することになる。


現実の世界で特撮の戦闘を求める、夢見る青年。

彼はその世界にその他大勢を連れ込めるこの能力を歓喜した。

ありとあらゆる遊びをし尽くした。

そして飽きがきたら記憶を書き換えて自分との繋がりを消した。


次に選んだ遊び相手が街の自警団「愛の桜」だった。

理由は自警団という響きが珍しかったから。

そしてかつての級友、芳本が居たから。

芳本、学校の人気者。

中学時代の片思いの相手は芳本に惚れていた。


「芳本君を越える力を手に入れるから!」


そう言って告白を試みたものの、「意味不明」と吐き捨てられた。

何でも持っている芳本が恨めしかった。


入団して早速、「愛の桜」を「タジヒット」に書き換えた。

当初は芳本を下っ端まで引き下げた後、徐々に潰していこうと考えていたが、山峰は下松が嫌いになった。

標的を下松に変更し、下松を下っ端に書き換えた。

同時に記憶の整合性の為に下松の立場には山峰本人が刷り替わった。


自警団、いやタジヒット。

山峰は悪対正義の構図がどうしてもやりたくなった。


「仲間の中に黒幕がいるという意外性もよしだ!」 


山峰は数ヶ月を要して悪の組織ディマーリを作り上げた。

適当に、適宜に、記憶操作をして人を集めた。

山峰は楽しかった。


だが下松は下っ端として扱われている時も、ずっと山峰を見つめていた。

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