ジューシー焼肉どんぶり
がりがりがりがり。
街の自警団「愛の桜」への不満はといえばそれはその給料だろう。
山峰は思う。
自警団といえばボランティアのような無償の団体を意識するのだが、「愛の桜」は体裁は良いものの、その実そういうものだった。
地元で彼らを知らないものはいない。
特に山峰はこの団体が街を変化させていくのをリアルタイムで見ていた。
変化か、改革か、破壊か。
やっていることは実に傲慢だ。
がりがりがりがり。
山峰がこの団体に入った時もそう。
賞与はなく、保健はなく、やっている事は役所に近い。
山峰の本来の目的ではなかったがどうにもツマラナイ感覚はぬぐい去れなかった。
スリルも、刺激もない。
中でも一番気に入らないのは下松だった。
芳本の幼馴染、冷静沈着、整った顔立ち、山峰は彼が嫌いだった。
自分の中の正義だかを貫くだけの芳本と違って下松の考えは何処までも読めない。
地金も透けない男だった。
「着火」
柳の木を燃やした臭いがする。
生々しい臭い、あまりいい臭いではない。
芳本も想像はしていないだろう、自分の十八番料理が俺に奪われるとは。
そしてその材料が自分とは。
柳の木を燃やした臭いがする。
……人間を燃やした時の臭いだ。
タジヒットの団員はこれでもう全員だ。
俺の遊びは終わった。
山峰はその場にへたり込んだ。
何とか丼を作りあげたものの気分が悪く、食欲も湧かないので丼は捨てた。
山峰は一日中砂場で遊んだ、その日の夕暮れを思い出した。
鱗粉の様に漂う日の光を浴びて感じる疲労感。
そして満足感、山峰はにやけた。
山峰がある種の不自然さを感じていた。
山峰の作った現実が僅かに綻んでいるような違和感を感じていた。
溢れてくる技名は今や何も琴線に触れてこない。
思えば下松を含むタジヒットのメンバーを罠に嵌める為の合図を送ったあたりから妙だった。
山峰は嘆息した。
どうという事はない。
足の指先から来る寒気が頭の芯を貫いていく。
終わった事に疑問などを持っても仕方ないのだ。
山峰は捨てた丼に目を移した。
黒く焦げた肉が山峰の虚ろな目の中で泳いでいた。




