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何をやってるんだ山峰

芳本はその時状況を思い返していた。


何故、自分は瓦礫に埋もれているのか?

何故、自分は親友に見下ろされているのか?


曇天を背にして見下ろす山峰の表情は平生と変わらない。

雨が、無人の東京に降り始めた。

血溜りは波紋を作りながら次々と広がっていく。

芳本は落ちていく体温を感じながら、状況を思い返していた。



「錦山、相沢、滝川、高山……」


状況の転換は芳本が無残な姿となった同士達を見つけた時に起こった。

刻まれた体から漏れ出した血が渇いてアスファルトにこびり付いている。


「こいつらが負けるなんて」

「私にかかればこの程度」


蹄をかち合わせた音と共にその男は現れた。

大仰な鎧、体格のいい体。

馬に跨ったその男は騎士のようで、しかし騎士にしては大仰過ぎた。

芳本は昔見た金剛力士像を思い出した。


「私はシャビックデモン、ディマーリの最高幹部だ」

「俺は芳本、タジヒットの芳本だ」

「こいつらを……こんなにしたのはお前か?」

「その通り、ルドルフのついでに始末してやった」


芳本は驚愕した。

ルドルフ、ルドルフさんが。

市内自警団として発足したタジヒット、その創設者。

彼がやられたというのだろうか?

最近は奇行が目立つとはいえ、実力はタジヒット最高峰のはずなのに……。

芳本は自分を保つ為の何かが崩れる音を聞いた。


「……嘘をつくな」

「嘘ではない、私の名はシャビックデモン」

「なんなら馬を降りてやろう」


デモンは馬の手綱から手を離し、馬を降りた。

動作は鈍い、緩慢なそれは芳本が無力な存在だと決め付けた驕りの動きだった。

芳本はその一瞬を見逃さない。

一気にかけよって仕込みのカッターナイフを突き立てた。


「無駄な事を」


ナイフは小さな傷跡を残しただけで粉々になった。

芳本は鳩尾に膝蹴りを喰らい、一気に組み伏せられた。

背骨が軋む音が芳本の脳髄に響いた。


「お前にはルラーリの場所を聞く必要がある」

「だから残しておいたのだ、あまり暴れるな」


デモンは体重を微妙に調節し、痛みを与えてくる。

尋問のつもりであると芳本は理解した。

しかし芳本は内心余裕を残していた。

デモンはまだタジヒットの裏の作戦に、タジヒット遊撃隊がディマーリの本拠地を攻撃していることを知らない。

そして、まだこちらにも戦力が残っていることも知らない。

山峰が、いる。

その時前から走りよってくる男の姿が見えた。


「大丈夫かー芳本ー」

「なんだお前は」


芳本は安堵した。

いつもながらに純朴を体言した立ち振る舞い。

こんな時でも山峰の笑顔は全てを踏み越えていける。


そうして走りよってくる山峰は、相沢たちの屍を踏み越えた。

踏み越えられた相沢たちの体が上下する。

渇いた血がバリッと音を立ててひび割れた。

芳本は絶句した。


「何をやってるんだ山峰」

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