3
そもそも、起き上がって、叫んで、目をつむって考え抜く行動そのものがおかしいことに気が付いた。朱音は、両手で頭の先から足の先まで触ってみた。あんな衝撃を受けて傷ひとつ負わずに立ち上がれることなど天文学的確率以上に困難である。
そして一体ここがどこなのか?なぜ手を付いたときに音が出なかったのに自分の声が聞こえるのか。もう、朱音の脳で考えが及ぶ領域を裕に超越していた。脳みそが爆発してしまうのではないかと思ったし、不安で脈動はみるみる早まるし、訳がわからなくなってうろうろと狼狽し始めた。
「お父さん、お母さん、お父さん、お母さん・・・・・・もうどうしようっていうか何なのもう!早く帰りたいよぉ・・・・・・」
朱音はついに膝を崩してへたりこみ、そのまま動けなくなってしまった。ふうっと力が抜けたので横になる。まばたきを繰り返すと、体の奥から気持ちと一緒に涙が溢れ出す。鼻の奥のツンとする痛みが、今さっきまで感じていた鼻を刺す冷たい夜風によく似ていた。
死ー
頭をよぎるたびにかぶりを振ったその一言を、受け入れようかと思い始めた。朱音はゆっくりと仰向けの体勢になって、天井のないつまらなすぎる虚空を見つめた。