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体の右側を、大きな白い光が包んだのが分かった。星空を斜めに割くようなけたたましい高音は、光の前に響いたのか、後に響いたのか、わからない。その白い2つの眼と朱音の眼が見つめあった瞬間、朱音は全身に強い打撃を受けた。
果たして、私は今何をしているのだろう。飛ばされた?確かに今、視界がおかしい。体には痛みが走る。どんな痛みかうまく言い表せない。待ってよ。私、
ー轢かれたんだ。体がコンクリートに叩きつけられたとき、ふと浮かんだことがそれだった。
人の声が聞こえる。運転手だろうか。野次馬だろうか。通行人だろうか。救急車だろうか。死ぬのだろうか。助けは呼べるだろうか。見ている人がいるのは確かなんだろうか。寒いんだろうか。暑いんだろうか。生きるのだろうか。夢なのだろうか。現実なのだろうか。死ぬのだろうか。死ぬのかな。それは嫌だな。生きたいな。痛いな。凄く痛いな。痛い痛い痛い痛い・・・・・・
音楽プレイヤーの音量のつまみを持って徐々に音を絞っていくように、意識が遠のいていくのがわかった。体が重くなっていく。冷たくなっていく。
「おか、・・・・・・お、と・・・・・・」
振り絞って出した声と共にこぼれたのは、薄すぎる吐息とひとしずくの涙だった。