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家を出た瞬間、やっぱりやめようかなと弱気になるくらいの寒さが朱音の華奢な体を包んだ。真冬なので、虫の鳴き声もしなければ蛙の輪唱もない。まるでこの世界に自分1人しか存在していないのではないかと錯覚しそうになるほど、静かで、冷たくて、閉じられた空間だった。
「おぉ・・・・・・っ!さむさむさむっ」
風が髪を揺らす。体を縮こまらせながら、家の石段を足早に降りていった。最寄りのコンビニまで10分かからない程度の距離が、今はとても長く感じる。これから10分されど10分。震える手足で買ったあんまんやフライドポテトや唐揚げは、きっと、いや絶対に美味しいはずで。確か財布に1000円はあったはずだから、コンビニレベルのプチ贅沢までできる。考えただけで、心なしか朱音の足は軽くなった。
しばらくして、道の先にコンビニのマークの大きなポールが見えてきた。ゴールまであと少し。朱音は開けた路地の横断歩道手前にいた。
不意に、向こう岸の横断歩道の信号機が点滅し始めた。あっそうだこの信号は赤に変わるの早いんだっけ!長めの歩道なので一気に渡ってしまおうと、朱音はスピードを上げて踏み出したーその時、