第四十五話 歴史
一人困惑していると、ため息交じりにエレミナが口を開く。
「なんと嘆かわしいことでしょう。英雄王。
妾はついこの間のように覚えているというのに……」
「丁度百年前をこの間と言えるのは、竜族とエルフ族くらいですよ」
サンドラが困り顔でそう口にした。
そりゃあ、竜族と比べたら俺達人間の寿命なんて一瞬だろう。
この中で一番長寿な種族と言えば竜族のエレミナとエルフのヤザフ。
その後に亜人、人間となる。
この世界の平均寿命は五十歳。
戦国時代と変わらないくらい人の寿命は短い。
それに比べ、異種族。亜人はその倍の百年。
竜族・エルフは殺されない限り、世界が終わらない限りその寿命は永遠と言える。
「そうですね。
まずこの大陸やこの世界の始まりから説明しましょうか陛下?」
「それよりも、十三国建国の話からでもいいのではないかしら?」
「なにを言っている?
妾と英雄王とのなれ初めから話を始めなければならぬに決まっておろう!」
レックス、ヤザフ、エレミナが何から説明するか口論しているのをサンドラと共に観戦していた。
三人とも話したい内容が違うのか。
どうせなら時系列順に言ってくれないだろうか。
「正嗣。
彼らはもう少しかかりそうだから、僕が年代ごとに説明してもいいかな?」
「そうしてくれ」
あの三人は、まだ話す順番を言い争っていた。
あっちを待っているよりサンドラに話してもらった方が話は早そうだ。
「そうだね……。
まずこの世界を創造した神様がいるんだけど――――」
この世界の始まりから説明するのかコイツは。
まあいいか。
勉強になりそうだ。
この世界を創り、大陸を創り、命ある全てを創った創造神・レイム。
その神様が創ったのが亜種族だった。
順調に亜種族が繁栄し、栄華を極め、文明を発達させていく。
天上界に住む神々は、亜種族がいつかは神を超越し、最後には創造主たる神を殺しせしめるのではないかと危険視し始めた。
そこで、天上の神々はレイムが創った世界に人間族を創らせた。
人間族に亜種族を支配をさせるためだ。
だが、人間族は非力で何より脆弱で野生の猿ほどの知識しか持ち合わせておらず死亡する個体が多かった。
この世界の環境に適合した個体ではなかったからである。
天上の神々は、人間族に言葉と知恵、火を与え、武器を作る知識を与えた。
激減していた人間族だったが、亜種族以上の繁殖力と生命力の強さで亜種族を圧倒し始め。
最終的に亜種族を上回るほどの数になった。
それから長い年月が流れる中で、人間族と亜種族は争うようになる。
大陸には、人間族と亜種族が建国した。
大小合わせて八十を超える国が存在し、独自の文化と文明を築き始める。
十三大陸歴 一五一年 東の大国・ガザフ帝国がこの大陸、平定に乗り出す。
人間族が建国した国であり、武力によってこの大陸を五十年と言う非常に短期間で平定させてしまう。
その背景には、ガザフ帝国・イザドラ一世の王印が大きく関わっているとされる。
亜種族の持つ底知れない力を恐れたイザドラ一世は、徹底的に亜種族の迫害や弾圧を行っている。
反発してくる亜種族は首を刎ねられ河原にさらされ、あらゆる辱めを受け最終的には殺された。
さらにイザドラ一世は、それだけでは飽き足らず。
治める税も人間族の倍の額を提示。
払えない亜種族はことごとく奴隷へと身を落とす結果となった。
十三大陸歴 一九八年 イザドラ一世死去。
悪政を敷いたイザドラ一世が死しても状況は好転しない。
国中で飢饉や疫病。
天災が度重なり上手く税が徴収出来ない状況にあった。
だが、イザドラ一世の跡を継いだ息子・パイルド一世はその事に対して事態を収拾するどころか、寧ろ悪化させる。
贅沢をしたいがために、税をさらに上げたのだ。
人間族も亜種族関係なく。
国中で反乱が起り、再び大乱へと突き進む――
かに見えたが、パイルド一世は自分の身を守るために控えさせていた十三人の近衛騎士の手によって誅殺されてしまう。
十三大陸歴 一九九年 ガザフ帝国滅亡。
パイルド一世を殺害した十三人の騎士達は、この大陸を十三分割して統治する事を決める。
税も一律に統一し直し、国民の生活を安定させることに専念し始めた。だが、その中に亜種族への配慮はなされてはいなかった。
亜種族に掛けられた税はさらに増やされ、もはや奴隷になっていない方がおかしい状況に亜種族は追いやられていく。
十三大陸歴 二○○年 十三騎士内戦。
十三分割して統治する事に決まった大陸に再び戦火が燃え上がる。
それからこの大陸は一五○年の長きに渡って戦争が絶える事無く続く……
十三大陸歴 三五○年 人間族と亜種族による戦争。
人間族と亜種族は大陸を二分して戦っていた。
大陸の三分の二強を国土としている。
人間族のリアスベリア帝国と残り三分の一弱を治める亜種族が建国した連合国・ガザルバルトとの戦いだ。
戦闘に置いて、体力と強靭な肉体。
それらを人間族は手に入れる事は出来ない。
だが、人間族には王印があった。
その力に圧倒され、年々国土を切り取られ今の状況になってしまう。
しかし、ある時を境に亜種族が戦線を押し返し始めた。
その背景に関わっていたのが、人間族と亜種族で結成された。
灰色の牙と呼ばれる傭兵団である。
この時。
この傭兵団を指揮していたのが、アシヲス・グラン・バルシア。
のちの大魔王。
または英雄王である。
同じ人間族でありながら、亜種族を巧みに操り、同族の軍を壊滅させるアシヲスを誰もが大魔王と呼びおそれた。
彼はその後大陸を平定し、人間族・亜種族の奴隷制度を廃止した。
さらに彼は大陸を十三分割し、人間族の部下と亜種族の部下を管理者(国王)として据えたのだ。




