第四十三話 刺激と実践演習
寮に戻った俺は、汗を流し制服に着替え食堂へ降りた。
「おはようございます。正嗣様」
食堂に入ると同時にヤザフが腕に抱きついてくる。
この三週間毎日の事に俺は避ける気も失せていた。
どうしてヤザフがここに居るのか。
それは通っているからだ。
俺と学園に行くためだけに。
「おはようヤザフ。
いつも刺激をありがとう」
「まあ。うれしいわ!
さあ、正嗣様。
一緒に朝食を食べましょう!!」
腕を引っ張られながら席に着く。
凍えるような視線に気づいて振り向くと、そこにはルスティーナ、ミリヤ、スーヤ、桜花の四名が俺とヤザフを見ていた。
訂正しよう。
主に俺を見ていた。
汚物でも見るような目で。
桜花お前まで真似する事ないんだからな。
「さあ、正嗣様。
あーん、してください。ほら」
スプーンに卵焼きを乗せて俺の口元に持ってくる。
世話焼きと言うか、なんというか……
普通に食事が出来ない三週間でもあった。
「いいって。恥ずかしいか――むぅ」
喋っている最中にヤザフが口に物を詰め込む。
これで何度口の中を切った事か。
頼むからやめてくれ。
「今日から実戦演習ですね正嗣様。
どうせなら、一緒のチームがいいですわね」
「今日からだっけ?」
「そうですが。
まさか忘れていたのですか?」
そうか、今日からなのか……
実戦演習。
気が重いな。あれだ。
俺は魔力が未だに上手く使いこなせないから余計に不安だ。
実戦演習とは、クラスごとに別れ王が持っている旗を取り合う試合の事だ。
ただ旗を取ればいいと言う事ではない。
その旗を取るまでには幾つかのミッションがあり。
それを全てクリアし、王から旗を取れば勝利となる。
攻めるだけなら面白そうだ。
だが、俺がやる役柄は残念ながら攻めでも守りでもない。
俺はこの試合の要でもある。王をやる事になってしまった。
しかも多数決だ。
俺は辞退しようとしたが、他に適任者がいないと担任・リセは溜息をつきながら俺に理由を話す。
あの戦闘を見せつけられて三組の腕自慢達が次元の違いを思い知らされてしまい。
自信をなくしてしまったらしい。
そう、俺は全校生徒に大魔王・アシヲスの再来を知らしめる結果となってしまった。
俺は悪くない。
全てアシヲスが悪いのだ。
その為、俺は三週間の間に十名の死前名を預けられてしまう悲しい結果となった。
みなさん早まりすぎ。
俺はアシヲスじゃなくて、正嗣だっての。
預けられる殆どの死前名はアシヲス縁の者達ばかりだ。
中には大魔王の部下だからとコンプレックスを抱いている者もいたが。
そんな訳で俺は王をやる事になってしまったのだ。
つくづく気が重い。
「正嗣いつまでデレデレしているの?
遅刻するわよ?」
怖い顔をしたルスティーナが俺を凍るような目で睨みつけていた。
「さあ、行きましょうか。
マサツグさん今日から実践演習ですよ」
「そうだぜ、マサやん。
生々、背後には気よ付けるんだね」
ミリヤもスーヤも目が笑ってないんだが?
大丈夫だろうなコイツら。
俺達はなんだかんだとありながらも寮を後にした。
短いですが。出します。




