第四十話 剣邪に大切な事・錬度
遅くなり申し訳ありません。
俺は髪を拭きながら風呂場から部屋に戻るとリフィアと桜花が座って待っていた。
リフィアがベッド、桜花が床だ。
しかも正座をさせられている。
その上、綺麗に片付いていた部屋が散かっている。
一体なにがあった!
「どうしたんだ桜花。
と言うか、なんで床に座っているんだ?」
これだけは聞いておかないといけないと思うので一様聞いてみる。
「明確な力関係を見せつけただけよ」
「力関係?」
「そうよ。力が強い者に弱い者は従う。
当たり前の事じゃない」
「一体何をされたんだ桜花?」
「突然お風呂場から飛び出し、襲い掛かって来たので戦闘となり……」
「ほう。それで?」
「一瞬の不意を突かれてしまい。
不覚にも投げ飛ばされてしまったのです」
なるほどな。
この部屋の散かりようはその為か。
勘弁してくれよ。
誰が片づけると思っているのだ。
「マサツグこの女は一体何者なのですか?」
桜花は正座を止めて立ち上がり俺の傍までやって来てそう聞いてきた。
「ああ、何でも大魔王の剣邪・王剣と呼ばれる剣がこれだ」
「大魔王の剣邪。
なるほど、年季が入っている分強いと言うことですね」
なんて事を平然と言ってんだ。コイツは!
「年季じゃなくて、経験と言え経験と。
歳を気にしているかもしれないだろ?」
「物は言いようですねマサツグ」
まあそう言うことだが。
もう少し声を押えろ桜花。
聞こえているかもしれないだろう。
「聞こえているわよ。
明日の朝は覚悟してなさいよ。
――で、アンタが造った剣邪だけど。
魔力が均一に載っていないじゃない。
もっと錬度を上げないと直ぐにダメになるわよ」
錬度?
聞いた事のない言葉だな。
それに、ダメになるってどういう事だ?
「すまん一から教えてくれ。
よく分からん」
「うむ。素直でよろしい。
錬度と言うのは、剣邪にとって重要な強度と切れ味を増すために必要な事よ。
造つくられて間もない剣邪は、打ち合いだけで折れてしまう事がよくあるの」
確かにリフィアの言う通り、桜花は今日の戦闘中に折れた。
アシヲスにも魔力が均一に流されていないから折れてしまったと言われたな。
「それにしても綺麗な物ね。
戦闘を終えた剣邪とは思えないわ。
刃毀れもしていないようだし」
桜花を頭の先から足の先まで舐めるように見回すリフィア。
ジロジロ見られる事に耐えきれなくなったのか、桜花は俺の背中に隠れてしまった。
「いや、実際は刀身が折れていたし、刃毀れもしていたけどな。
でもアシヲスがそれを治してくれたんだ」
あれはすごかった。
「精々アシヲスに感謝しなさいよね。
もし今も、折れたままにしていたなら。
今頃、その剣邪は消えていたわよ」
「え、そうなのか。
自動修復とかじゃないのかよ」
人間の骨みたいに折れたらまた自然治癒みたいにさ。
トカゲの尻尾みたいに切れたらまた生えてくるとかのオプションは付いてないのかよ。
「当たり前じゃない。
自動修復出来るのはある程度錬度が高まってからよ。
錬度が足りない内は、造りなおすか魔力を均一に流して復元し直さないといけないわ。
まず素人のアンタには無理な事だけどね」
うるせぇよ。
でも、そうか。
だからアシヲスは桜花の修復を行ったのか。
「まずアンタはその駄々漏れの魔力を留める事を念頭に置くとして、魔力障壁と魔力障壁破壊をマスターしてもらうわよ」
「魔力障壁は破壊出来るのか?」
「そうよ。まさかこれも知らなかったの?
そんな事ではいつ殺されるか分からないわね」
ゴメンもう殺されかけた後だ。
そう言えば、森でヤザフと戦った時は障壁に阻まれて俺の攻撃が通用しなかったな。
雑魚だと油断したヤザフに一矢報いられたのは、アイツが障壁を自分で解除したからだ。
「アンタは魔力障壁自体張れていないしね。
例えるなら、兵士が戦場を裸で歩き回っている事と変わりないわよ」
そんなに酷い状況なのか俺は。
俺はその後もリフィアにこの世界の事や分からない事を一から教えて貰っていたら。
気が付いた頃には、日は西に沈んでいた。
明日は六時に更新します。




