第四話 学園長マーロウ
俺はエディウス学園へ続く並木道を一人寂しく歩いている。
今は授業中なので並木道で生徒を見かける訳が無いのだが。
せっかく学園に来たのだから普段お近づきになれない同い年の子とか、お姉さんとかを拝めたらいいのに。
俺のいる学生寮には、上は十二歳下は十歳までの子しか居ないからな。
正直ベビーシッターをやらされている気分だ。
だが口にはしないぞ。
何故なら寮にいるのは皆、王族貴族様だからな。
そう、この世界と言うかこの大陸には十三の国があり、十三の王家がある。
どの国も結びつきを強固にし、今の平和な世の中を維持するために十三国協定を結んだと言われる。
その一つが中立国・ウスランにあるエディウス学園による教育だ。
ウスランは十三国の中で一番国土が少ない国と言われているが、国力は十三国の中で随一だろう。
と言うのも、この国には他国には存在しない抑止力が存在するからだ。
その名も王剣。
一振りで山を破り、千の軍をも凌駕する力。
その武勇伝の数々が伝説となり語り継がれている。
その伝説にもなる王剣がこの国と言うかこの学園に今も三本現存していると言う。
その一本が学園の記念碑の横にある石段に刺さっている。
なんでもこの剣を抜く事が出来たらこの国を貰えるらしい。
各国のお偉がたや野心家は、ウスランが欲しいが為に我が子を送り込む者も少なくない。
だって、昨日まで下級貴族であっても剣さえ抜けば国王になる事が可能なのだ。
血を流す事なく、金を使う事なく一国が丸々手に入るんだ。
今でも休み時間の時にはこの剣の前に行列が出来る。
と言うか、誰か突っ込めよ。
「アーサー王の伝説かよ!」
てな。つい大きな声を出してしまった。
気づけばもう学園長室前じゃないか!
「いきなり大声を出すんじゃないわい。わしの心臓を止める気かお前は!」
白髪頭のちびっ子い爺さんが目の前で俺を怒こっていた。
この爺さんがウスラン国、国王にしてこのエディウス学園の学園長マーロウ・エド・グレゴリーだ。
「そう言うなよ。爺さん言われた通り来てやっただろ?」
「まったくお前は年上を敬う言葉使いをせんか」
「煩い爺さんだな。そんな事だから頭が禿げ上がるんだぞ」
「それこそ余計なお世話じゃて、ほれ早く扉を開けてくれ執事さん」
小馬鹿にした顔で言われると腹立つな。
「さて、お前をここに呼んだのは……えーん? なんじゃったかな?」
俺に聞くな。
この物忘れ爺さんが。
昨日食べた夕食も覚えてないんじゃないか?
「そうそう、お前を呼んだのはチェスの相手をさせるためじゃったわいハハハハ」
笑ってんじゃねぇよ。
やっぱり暇つぶしじゃねえか!
「そうじゃないだろマーロウ。本当にもう物忘れが最近激しいだから」
聞き覚えのある声に振り返ると先程俺の前から逃げ出したアグネスが学園長室にある高そうなソファーに腰掛け手にはコーヒーの入ったマグカップを右手に持ち左手でクッキーを摘んでいた。
このくつろぎかたからすると常習犯だ。
「そう、そうだ。思い出したわい。お前を呼んだのはこの学園に入学させる為じゃった!」
いきなり何言ってんだ?
俺をこの学園に入学させる? どう言う事だよ。
明日も短いでしょうけど投稿します。