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第三十八話 風呂へ・リフィア再び

遅くなり申し訳ありません。今日の分です。

 桜花を伴って、一足先に寮の自室に帰り着いた。

 俺は土埃や血で汚れ、戦闘で破けてしまった上着服を脱ぎ捨てる。

 制服を着て数時間しか経っていないにこの惨状は酷いよな。

 服の中に砂が入っている上、埃だらけだし、先に風呂に行くか。

 いい加減気持ち悪い。

「桜花。

 俺は先に風呂に行くから来客があったら対応していてくれ」

「それは出来ない。

 私は貴方の剣邪であるから」

「風呂に行くんだが?」

「マサツグが行くところには必ず付いて行き、マサツグの剣となり縦となるのが私の使命」

 うーん。

 そう言ってもらえるのはありがたいのだが……

「風呂はそこの扉だぞ?」

「……気が済むまで入ってくればいい」

 この部屋には風呂とトイレが備え付けられているため、大浴場まで行く必要がないのだ。

 と言うか、大浴場は入れないんだ。

 女風呂だから。

 だって女子寮だしな。

 いい加減俺も男子寮に移りたいのだが。

 その話は後でいいか。

 今は風呂だ。

 俺は脱衣所に移り、服を脱ぎ捨て風呂場の扉を開ける。

「……なんだ。これは……」

 風呂場の床は泡塗れ、シャワーヘッドは床に落ち、湯船には既にお湯が張られつい先程まで誰かが使っていたような形跡がそこかしこに残っている。

 どういう事だ?

 俺が昨日使った時とは別世界だぞ。

 取り敢えず泡塗れの床を流すとするか。滑りそうだ。

 俺はシャワーで床の泡を排水口に流して行く。

 ん? これ、は……

 見たことのある剣が泡の中から現れる。

 そう、俺が浅はかな思いつきと好奇心で引き抜いてしまった。

 王様を選定していた王剣・リフィアだ。

 なんでここにあるんだ?

 コイツは確か、アグネスの奴が連れて行った筈だぞ?

「あれ、また剣の姿になっているって事はあれか。

 魔力が切れたんだな」

 俺はシャワーヘッドを使い風呂場の床の隅へ押しやる。

 恐らく俺が素手で触るとまた魔力を供給して女体化するだろうからな。

 俺は剣を床に放置したまま汗と埃を流し、湯船に浸かる。

 湯量が多くお湯が溢れ出す。

 お湯の温度も適温で心地よい。

 溢れるお湯が勿体ない気がするが今日くらいはいいだろう。

 頑張ったんだし。

 あ、お湯が流れてない。

 排水口が詰まっているようで、床に溢れ出たお湯がたまり始めていた。

 これは早く排水口のゴミを取らないと脱衣所に溢れ出てしまうぞ。

 俺は排水口へ手を伸ばす。

「普通。か弱い剣が床に落ちていたのなら拾い上げて魔力供給してあげるのが人情というものではないかしら?」

 え、なんで?

 俺は触れてもいないのに目の前には、不機嫌そうな顔をしたリフィアの姿があった。

 服装はあの時の赤い服だ。

「俺が触れてもいないのに……

 どうやって魔力供給をしたんだ?」

「アンタが流したお湯よ」

「お湯がどうかしたのか?」

「アンタの垂れ流しの魔力がお湯の中に溶け出ているからよ。

 そのくらい気づきなさいよ」

 そうか。

 俺は魔力垂れ流し状態なのか。

 それは盲点だった。

 今度こんな状況に遭遇したら桜花を呼んで退けてもらおう。

「アンタまたくだらない事を思ったわね。

 顔に出ているわよ?」

「そ、そんな事ないさ。

 お前こそアグネスに連れて行かれたお前が何でここに……

 しかも何で風呂場」

「う、うるさいわね。

 これには事情があるのよ。

 それより、さっさとアシヲスを出しなさい!

 六十年間の文句を言ってやるんだから!!」

 いや、アイツは俺が引っ張り出そうと思って出てくるヤツじゃないからな。

 そうだな。

 無理だ。

 だから諦めろリフィア。

「アイツは戦闘にしか興味ないみたいでな。

 戦闘以外で表には出てこないぞ」

「戦闘……

 やはり、先程の懐かしい魔力はアシヲスだったの?」

 気づいていたのか。

 流石はアイツの王剣だな。

 感心するぜ。

 俺にはこんな対応だが、きっとアイツにはデレデレ何だろうな。

 ツンデレってやつか。

「なにニヤニヤしているのよ。

 アンタなんかアシヲスの足元にも及ばないわ。

 アンタなんかに死前名を預ける人なんて一人もいないんでしょ。

 それと同じ」

「いや、今日いきなり四人から預けられたばかりだ」

「なんですって!

 そんな命知らずがいたの!!」


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