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第三十二話 ふざけるな!!

 飛んでいた桜花の頭を魔力の帯びた右手で掴み。

 地面へ向けて投げ落とす。

 物凄い速さで地面に叩きつけられ、地面は大きく抉れた。

 モウモウと土煙が舞う……

 そこに追い打ちをかけるかのように金色の矢が桜花の落ちた場所に降り注ぐ――

 その数は一本や二本ではない。

 一回に十本の矢をつがえ放っている。

 恐らくヤザフは桜花が土煙から出てくるまで矢を放つのをやめないつもりだ。

 くそ、どうしたらいい?

 俺はどうしたら……

 俺が迷っている内に、桜花は視界の悪い土煙から飛び出した。

 着ていた黒衣はボロ布のようになり、着けていた装備は大半が破壊されなくなっていた。

 唯一残っていたのが籠手だけ。

 全身切り傷だらけだ。

 飛んでくる矢を避けていたのだろう。

 だがあの視界の悪さでは完全に避ける事は出来なかったようだ。

 左腕に一本、腹部に一本、背中に五本、両足に三本……

 計十本の矢が刺さっていた。

「よくあれだけの矢雨の中をそれだけの損失で済んだなんて驚きだよ。

 でもこれはどうかな?」

 先程と同じように十本の矢をつがえたヤザフ。

 その内の一本を中心に周りの矢が捩じれながらその一本の矢に絡みついていく……

 桜花は刀を鞘に戻し、腰を低くして構えた。

 俺は一目で居合の姿勢だと分かった。

 桜花はこの一撃で終わらせるつもりだ。

 全ての矢が絡みつき終わると同時に桜花へ向けてその矢を放った。

 桜花は避けない。

 ギリギリまでその奇妙な形をした矢を引き付ける。

 目標物が大きくなった上、一本だけに集中していればいい。

 桜花は初手でこれを斬るつもりなのだ。

「横一文字!!」

 桜花、渾身の黒い斬撃の一撃が刀から放たれる。

 矢は桜花の放った黒い斬撃をまともに受け――弾けた。

「っ――!!」

 一本の矢に捩じれ絡みついていた。

 九本の矢が攻撃を受けて弾け飛び桜花を正面から襲う。

 渾身の力を込めて放った斬撃に疲労していた桜花は避けれなかった。

 四本が両肩両足を霞め、一本が右腕、腹部に三本、右足に一本突き刺さりる。

 桜花は前のめりに倒れそうになる体を刀で支え、上空を漂うヤザフを仰ぎ見る。

 おい。マジかよ!!

 俺は背筋が寒くなった。

 何故なら、ヤザフは十本の矢をつがえていたからだ。

 狙う先には――ボロボロの桜花。

 ヤザフは俺に一瞥し、矢を放った。

 桜花に向かって吸い込まれるように飛ぶ矢。

 爆音と爆風が再び起こり、三メートルの土煙が舞い上がった。

 俺に桜花がどうなったのかを知るすべはない。

 俺に今、何が出来る? 

 俺が桜花にしてやれる事は、ここに漠然と立って居る事なのか?

 桜花があの土煙の中からよろけながら出てくる所を俺はただ見ているだけなのか?

 俺はいつから女の子の背中に隠れて結果を待つような腐った男になった!

 俺の足は駆け出していた。

 桜花の元へ。

 土煙の中に居るであろう少女の元へ――

 しかし、

 突然俺の足は動かなくなった。

 あと少し。

 あと少しで桜花の元へ行く事が出来るのに。

 俺はバランスを崩し転倒する。

「そのまま行かせると思ったのかい?

 虫。そんな事させるわけないだろ?」

 右足、背中、右肩にそれぞれ一本ずつ金色の矢が突き刺さっていた。

 俺は刺さった矢を掴もうとした瞬間――

 矢は俺の手をすり抜ける。

 初めは目の錯覚だと思った。

 だがそれは違っていた何度も何度も掴もうとしたが掴むことは出来な

かった。

 どういう事だこれは!!

 なんでそこにあるのに抜けない?

「気付いたかい? 

 それは僕じゃないと抜けないよ。

 それは獲物の自由を奪う矢だからね。

 勝手に抜かれても困るし、何より勝負の邪魔をしないでくれるかい?

 もう少しで破壊出来るからさ」

 破壊するだと?

 誰を?

 桜花をか?

 誰の許しを得てそんな事をする?

 ――ふざけるな!

 俺はアイツと会ったばかりで何も知れないけどな。

 これだけは分かるんだよ。

 アイツは俺の剣邪だ!

 俺以外の何者にアイツを自由にする権利がある!

「ふざけるな!!」

 俺の頭の中を言葉が駆け巡る。

 なんだ……これ――

『我、他を凌駕し、他を蹂躙せし者』

『我、振るうは力、絶対なる物量にて何人の侵略を阻む力なり』

『尚も前進する者も無く、ただ我の前にひれ伏すのみ』

『我、他を凌駕し、他を屈服させ、他を統べる力を我は振るう』

『我に、黒鉄の栄光あれ!』

 黒い光が俺を包み込み。そして薄れていく……

 俺の周りを黒い砂が漂っていた。

 これは……砂鉄か?

「それはどういう事なのかな?

 虫。なんで僕の矢が消えているんだい?」

 ヤザフの驚いた声に俺は体を見ると、あの抜けなかった筈の矢が跡形も無くなっていた。

「桜花!!」

 俺は跳ね起きると真っ直ぐ桜花の元へ急いで向かう。

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