第二十七話 アグネスの失敗
「この――虫が!!」
うお! ヤザフの前蹴りを交わし床に転がる。
周りを取り囲んだ女子達も箒やら剣やらで、俺を攻撃しようとするがそれも華麗に避け、下着姿の女子達を横目で見ながら出口に向かう。
その後ろを体中から怒りのオーラを出しながらヤザフが剣を持って追いかけてくる。
「あの場所で――潰しておくべきだったようだ!!
射抜き、突き刺せレイアス!」
持っていた剣を俺に向けて投げやる。
俺との飛距離がたらずに剣は重力に従い落ちていく……
しかし、
その剣は床に落ちる事は無く地面を滑るようにして真っ直ぐ俺に向かって飛んできたのだ。
どういう事だ?
更に驚いた事に、俺の近くになると剣は少しずつ浮き上がり俺の喉の高さまで浮き上がると更にその速度を上げ突っ込んで来た。
「僕に悔いて死ね。虫!」
剣はまるで俺の喉元に吸い寄せられるように迷いなく飛んでくる。
俺は突き刺さる寸前に飛んで来た剣を左手で払いのけ軌道を変えてやった。
そのまま迷うことなく壁に突き刺さりその動きは止まった。
俺は難なく出口に到着しドアを勢いよく閉めた。
ちゃんと閉める時いったぞ。
ご馳走様でしたってな。
「さて、説明してもらおうかアグネス」
俺は無事、更衣室から逃げ出すことに成功し。
アグネスから先ほどの説明をさせている。
「空間移動の魔法は上手く移動する先を連想しないと移動できないんだ。
大体マサツグが女の子の着替えが見たいって言ったから連れていてあげたんだよ。
少しは感謝しておくれよ」
悪びれもないアグネス。
俺はまたヤザフに殺されかけたと言うのにごめんの一言もない。
まあ、これでコイツに助けられたカリはチャラで良いだろう。
まあ、眼福ではあったが……
と言うか、測定の時間に間に合うのか?
「なあ、測定の時間は何時からなんだ?」
学園長室を出てから一時間くらい経っている。
測定を明日に伸ばしてもらうか?
でもそんな事出来るのだろうか。
「大丈夫だよ。
あと三分くらい歩いて着く距離だから問題ないよ」
本当だろうな。
まあ、場所を知らないからしょうがないのだが。
「今度こそ本当に任せるぞ?」
「うん。任せてよ」
俺はまたアグネスの先導で測定の行われる教室に向かって歩き出した。
「君で最後ね。
名前とクラスを順に言ってくれる?」
今度はちゃんと測定の行われる部屋に辿り着いたようだ。
茶髪のセミロングに黒い額縁のメガネをかけた女性が俺を出迎えた。
女性は白衣を着ている。
女医だろうか?
それにしてもこの学園はどうなっているんだ。
女性の質がかなりいい。会う人の殆どが美人や美女だらけだ。
「聞こえているかな?」
「マサツグ。呼ばれているよ」
は! 俺はアグネスに袖を引っ張られ正気に戻る。
「僕の名前は館 正嗣。趣味は読書です」
「マサツグが僕だって!
もう笑わせないでおくれよ!」
床を叩いて笑い転げるアグネスに蹴りを入れる。
煩い。
「えっと……うん。
クラスを教えてもらえるかしら?」
ん? クラス?
どこのクラスだ?
俺はアグネスに視線を向ける。
あ、そらしやがった。
今さっき蹴った事を根に持ってるな。
「あの、何のクラスですか?」
「え? 魔階のクラスに決まっているじゃない。
笑わないから教えてくれるかな?」
魔階?
聞いた事がないな。
それを言うと笑われるのか?
それは嫌だな。こんな美女に冷笑された上、鼻で笑われるのは。
「測ったことないから分からないな」
「自信がないのかな?
私の魔階はBクラスよ。どう? 案外普通でしょ?」
普通がどのくらいか分からないのだが?
「ユリ。
マサツグは田舎から出てき間もないんだよ。
だから、今まで測定する機会がなかったんだって」
「ああ、なるほどね。
じゃあ、待っててすぐに測定するから」
掛けているメガネの縁を触る。
すると右側のレンズが緑色に発光し始める。
「身体に異常は無いわね。
病気もしてないみたいだし。
次は靴を脱いでこれに乗ってくれる?」
指さしたのは体重計のような機械だった。
なるほど、体重と身長を図るのか。
健康診断となんら変わらないな。
俺は靴を脱ぎ、体重計にゆっくり乗る……
俺は今までに体験した事がない状況に直面した。
明日も更新します




