第二十五話 行ってきます
食堂で朝食を食べ終えた俺達四人は、学園に行く支度を済ませ玄関前に集まった。
もちろん学園に一緒に行くためだ。
俺は学校なんか行った事がないからな。
少し緊張する。
俺の元いた世界では、昔は義務教育と呼ばれる制度があったらしいがその制度自体が機能していない。
今の世界情勢でそれをやれば人手が足らなくなるからだ。
子供の教育は生活の二の次扱いとなってしまっているのが現状である。
俺の周りには専門分野に特化した人たちが居たからな。
学校その物に行く必要さえなかった。
そんな訳で世界を飛び回っていると知らない内に戦友と呼べる奴らならたくさん出来た。
まだ半月だけど、会いたいな。
「聞いていますかマサツグ?」
ボーとしていた。あれ、ルスティーナもう来ていたのか。
気付かなかったぞ。
「ああ、うん。それでいいんじゃないかな?」
「私はまだ何も言ってないのだけど?
なにがそれでいいのでしょうね?」
――しまった。
俺の悪い癖だ。
人の話を聞き流して適当に相槌を打ってしまう事がある。
そのせいでこの半月、何度罰お菓子を作ってきたことか……
直そうと思っているんだけどやってしまう。
「ねえ。なにがそれでいいの?」
あの、目が座っているよ。
お願いだから、そんな目で俺を見ないでくれ。
何かないか――そうだ。
「そりゃあ、朝ルスティーナを起こしに行くのは今日みたいにミリヤがやったほうが良いんじゃないかな?」
「――ほ、ほう……それで?
なにが言いたいのですかマサツグ」
形のいい眉をヒクヒクさせて笑顔のルスティーナ。
機嫌がよさそうだな。
これなら逃げ切れるか。
「なんて言ったって俺は男だから、ルスティーナも女性のミリヤに起こしてもらった方が何かと……」
「マサツグ。
私は今日、マドレーヌが食べたいですね」
ん? なぜお菓子?
もしかしてこれって……まさか。
「主人の気持ちを汲むのも執事の役目ですよマサツグ。
それから今日の事で一つ命令を解きます。
私が寝ていても起こしに来なさい。
これを新たに命令します。返事は?」
「承りました」
クソ。俺のバカ!!
罰お菓子を作らないといけなくなったじゃねぇか!
その上、明日からまた起こしに行かないといけなくなったし。
「遅くなってすみません。
ルスティーナ様、正嗣さん」
俺が後悔に浸っているとミリヤとスーヤが支度を済ませ合流していた。
「どうしたの、マサやん。朝から暗いよ」
「うるせぇ。俺の勝手だろ……」
「どうされたのですか?」
「いいの。まったく私の話を聞き流すから悪いのです。
ほら、マサツグ。学園に急ぎますよ」
四人そろったところで寮を後にして学園に向かう。
寮を出て徒歩十分……目的地。
エディウス学園に到着する。
「おお、来たか。待っておったぞ。
これがおぬしの制服と教科書類じゃ」
俺の前には、この学園の学長。
マーロウ・エド・グレゴリーが立っている。
昨日の入学式に出席出来なかった俺は学園長室に来ていた。
「それにしても災難じゃな。
あのジャジャ馬娘に殺されそうになったのだろう?」
う、煩い。少し油断しただけだ。
「いやだな。誰が殺されか、かったなんて――」
「現に殺されそうになっていたよね。
ボクが居なかったならあのエルフに頭をボールよろしく蹴って遊ばれていたよ」
……恐ろしいこと言うなよ。
明日も6時にお会いしましょう!
昨日から新たに小説を投稿し始めました。題名は「藤と鬼の陰陽師」です。
こちらの方は不定期更新ですが、黒鉄の執事同様よろしくお願いします。




