第十一話 疲労困憊
色々あったがリフィアはアグネスが連れて行った。
それもそうだろう。
だってこの国に三本しかない王剣なのだから。
おいそれと学生寮何かに置いておけないよな。
「でも王剣が人の形をしているのには驚いたな……
あ、でもアグネスも人型だったな」
今更だった。
きっと出会いにインパクトがなかったからだな。
俺は部屋の壁にある時計に目をやる。
時計は十一時を指していた。
だいぶ遅くなったけど、ルスティーナに夜の挨拶をして寝るか。
俺はダルさの残る体を無理矢理動かして部屋をあとにした。
この時ほど携帯が欲しいと思ったことはない。
まあ失礼に当たるかもしれないが体調が優れないんだからしょうがない。
ルスティーナの部屋が見えてきた。
後は中に入って挨拶して寝るだけだ。
俺はノックして返事を待つ。
だが、返事が返ってこなかった。
もう一度ノックして声を掛ける。
「ルスティーナ入りますよ?」
まあ当然だな。
ルスティーナは毎日九時に寝る。お子様だからな。
だから彼女が寝る前に来て挨拶して暫くしてからまた様子を見に来る。寝相が悪いからな。
一国の王が腹を出して寝ていて、風邪をひいたとあってはいい笑い者だ。
部屋の中は暗かった。
ロウソクもランタンも持たずに来たが俺には不要な物といっていい。
なんせ俺は夜目がきく。
これは幼い頃に受けた教育の賜物と言える。
当時五歳の俺に雅代さんとその部下の人達は、過酷な環境でも死なない指導や教育を施した。
傭兵の基礎・心得、武芸十八般、料理、裁縫、経営術……などたきに渡る。
だから子供らしい遊びをしたことがない。
暇さえあれば誰かが俺の所に来ては遊びと称した訓練や教育をしていくんだ。
子供は一日暇だからな。
それも日替わりじゃない。
同じ教科が連続で三日続くと逃げたくなった。
まあ、そのお陰もあってこうして生きている。
「まったく、ルスティーナは相変わらず寝相が悪いな」
またお腹を出して寝ていた。口元には涎が垂れている。
もう少し寝相が良くなるとこんな母親みたいな事しなくて済むんだが。
俺は口元の涎を拭き、着崩れた寝巻きを元に戻し布団をかけ直す。
もう少し大きくなれば体が重くなって寝相や寝返りが少なくなるんだけど……
まあ、その頃には俺は――――
いや、今はよそう。
仮定の話は幾らでも出来る。
俺はルスティーナの頭を撫でて部屋を後にした。
なんとか部屋にたどり着いた。
膝が笑ってやがる。
震える手でシャツのボタンを外し寝巻きに着替えベッドに横になった。
ここまでの疲労はいつ以来だっけ、まあいいか。
今は眠ろう。
強い眠気に俺の意識は沈んで行く……
「ほう、これがオレの新たな体か」
誰だ?
俺は疲れているんだよ。
他所をあたってくれ。
「魔力量も身体能力も生前のオレと同じか少し上といった所か。
まずまずだが、なんだこの顔は気品も感じられない」
「だーうるせぇな!
顔の事はもういいだろうがよぉ!!」
思わず声に怒鳴ってしまった。
あれ? ここどこだ。
俺がいたのは白一色の世界。
どこまでも続く白、見渡す限りの白……
その世界に俺と声の主であろう男と向かい合っていた。
男は灰色の髪に左目を黒い眼帯で隠し、右目は瑪瑙のような鮮やかな緑色。
赤いマントが男の着ている黒い服を一際目立たせていた。
「起きたな。オレはお前の事は知っているぜ。
館 正嗣。この世界と理が異なる世界からやってきた哀れな青年。
そしてお前はオレ様の器となる人間だ」
何を言っているんだ、この男は。
「なに、お前が気にする事じゃない。
もう、決まったことだしな。しかし、まいったぜ。
まさかこのオレ様が死んじまうなんて情けねぇな……」
男は明らかな落胆の色を浮かべる。
そんなにも死んだことが悔しいのだろう。
自分は死なない大丈夫まだやれる――そう思っていたんだろう。
だが、この男は道半ばで死んでしまった。
「結果としては、保険かけといて正解だったぜ。
リフィアの中にオレ様の覇王印を封じておいた事は間違えじゃなかったな。
再契約や魔力供給の復元で戻るように設定しておいたが上手くいったぜ。フハハハハ!!」
嬉々として笑う男の言葉に俺は先程聞いた名前がある事に気づく。
リフィア? 先程の王剣の事か!
「あんた一体誰なんだ?」
「お、やっとか……いいぜ、答えてやろう。
オレ様の名はアシヲス・グラン・バルシア。
この十三大陸の覇者にして神を殺す事を許された者だ。
付け加えるなら王剣の造像者でもある」
また明日お会いしましょう




