第9話 勇者たちの決着
光の爆発が消えたあと、広間には静寂が落ちていた。
瓦礫が崩れる音だけが、遅れて響く。
レオンはゆっくりと顔を上げ、魔王を見据えた。
「...消えたな」
先ほどまで魔王から感じていた、あの異様な圧力。
それが嘘のように薄れている。
対する魔王もまた、静かに立っていた。
だがその表情には、驚きが浮かんでいる。
「...貴様ら、まさか...」
魔王のつぶやきに対して、レオンは口の端を上げた。
「タネが明けたんだよ。お前の勇者特攻はもうなくなった。」
聖剣を肩に担ぎ、軽く首を鳴らす。
「つまり」
一歩踏み出す。
「ここからが本当の勝負ってことだ。」
その瞬間、レオンの姿が消えた。
「!!」
魔王が槍を振るう。
だがそれは空を切った。
レオンはすでに横に回り込んでいる。
聖剣が閃いた。
魔王の肩に深い傷が走り、血が舞う。
「なっ...!」
魔王は距離を取るが、レオンは止まらない。
さらに踏み込み、剣を振るう。
その剣は槍で受け止められ火花が散るが、押されているのは魔王だった。
「馬鹿な...」
魔王が唸る。
「加護がないだけで、ここまで...」
「いいや」
レオンは静かに言った。
「これが本来の差だ」
そして、剣と槍が激突する。
一撃、二撃、三撃と、重い衝撃が広間に響く。
だが打ち合いが続くにつれて、徐々に魔王の体に傷が増えていく。
「くっ、我を舐めるな!!」
魔王は槍で打ち合いながら、黒い魔弾を生み出し放ってくる。
だがレオンも同じように魔法を放ち相殺させる。
「別に舐めてはいないが...」
「ならば何故お前しか向かってこない!?後ろの三人は高みの見物か!?」
そう言われ、エリス達三人はそれぞれ反応する。
「わたしは今の奇跡で力をほとんど使ってしまったので...。」
「私も魔力切れ寸前です。」
「オレは戦闘要員じゃないからな。」
その呑気な言い分に、魔王はさらに憤怒する。
「なぜそんな悠長なことを言っていられる!?我は魔王だぞ!死に物狂いで向かってくるのが勇者ではないのか!」
魔王の言葉に対して、ユリウスが言い返す。
「そりゃ、そうしなきゃ勝てないならそうするさ。でも、今回はそうじゃないからな。」
そう言われ、魔王は目の前の聖剣を握る人物を見る。こいつ一人で十分だと言うのか。
なんだこいつらの、この男に対する信頼は...!?
「ええい、そもそもドラゴンは一体何を...」
魔王が横を見ると、ドラゴンは瓦礫に埋もれて動けなくなっていた。
つられてレオンもそちらを見て、ニヤリと笑う。
「なるほど、よくやったなユリウス、セリア。」
「他に手がなかっただけだ。真っ当に倒せるならそうしてたさ。」
「あとは魔王、お前だけだ。」
聖剣を突き付けてきたレオンを見て、魔王は槍を強く握る。
「こんなことが...あってたまるか!」
そう言って、魔王は最大まで槍に魔力を込めレオンに向けて放ってくる。
だがレオンは避けることなく、聖剣に魔力を込めて真正面から受け止めた。
ギイン!と甲高い音が鳴り、衝撃波があたりに広がる。レオンの後ろの三人が、思わずあとずさりしてしまうほどの衝撃。
「やるじゃないか。」
だがレオンは平然と受け止めていた。今度こそ魔王は驚愕する。
「なんだと...。何より、魔神の加護を打ち消すとはどういうことだ...!?貴様らは何者だ!?」
「勇者だよ」
その言葉と共に、魔王の槍が大きく弾かれる。
「女神に選ばれた、異世界の勇者たちだ。」
「なっ...!?」
そして、聖剣が振り下ろされた。
鮮血が飛び散り、魔王の体がぐらりと揺れる。
「女神、だと...。それに、異世界とは...。」
魔王が膝をつく。
その傷は深く、槍を支えにして辛うじて立っている。
レオンは静かに聖剣を構える。
「ふ、ふふふ...。我の負けか...。だが、覚えておけ。」
かすれた声で、絞り出すように言う。
「魔神と女神、両方が動いたのならば...この戦いだけでは、終わらんぞ...!」
その言葉を最後に、魔王は聖剣で斬られ、その体が崩れ落ちた。
広間に静寂が訪れる。
長いような、短いような、そんな戦いが終わった。
レオンは聖剣を振って血を払い、静かに鞘へと納める。
異世界の勇者たちは、一週間もせずに世界崩壊の原因を取り除くことに成功した。




