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異世界勇者たちの合同世界救済〜滅びゆく世界に派遣されたのは、それぞれの世界を救った英雄でした〜  作者: ターシ


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第8話 勇者たちの戦い レオン&エリス


 セリアの結界が魔王とドラゴンを分断したのを見て、レオンは走り出した。

 標的は魔王。勢いをつけて聖剣で斬りつける。


 ただ走って剣を振るだけという単純な攻撃だが、レオンがすればそれすらも必殺の一撃になる。

 だが。


 ガギィン!と音がして、聖剣は魔王の槍で受け止められる。


「ふむ...。」

「...?」


 魔王は何かを確かめるようにレオンと聖剣を見る。レオンは少し疑問に思うが、その直後に魔王の上に光が発生した。


「破滅の奇跡」


 後方からエリスの澄んだ声が聞こえ、それと同時に光の塊が魔王に向かって降り注ぐ。

 エリスによる聖属性の攻撃。しかし魔王は片手を上げてそれを受け止めていた。


 片手が空いた隙を見てもう一度レオンは聖剣を振るうが、その一撃は片手で持った槍で防がれる。


(...おかしいな)


 不思議に思ったレオンは一度バックステップで距離を取り、聖剣を構え直す。

 そこで再び頭上に光が発生した。今度は魔王だけでなく、レオンにも光が降り注ぐ。


「強化の奇跡と、弱体化の奇跡です。本当は最初に使いたかったんですけど、レオンさんがいきなり駆け出してしまったのでこのタイミングになりました。」

「ああ、悪いな。ありがとう。ユリウスとセリアにもかけられるか?」

「その二人にもかけているので大丈夫です。ついでにドラゴンにも。」


 その言葉を聞きチラリと隣を見ると、再びドラゴンがブレスを吐こうとしているところだった。だがセリアが結界を張る準備をしていたので、向こうは心配ないだろう。エリスのバフがあるならなおさら安心だ。


「...どうですか?魔王は。」


 エリスの問いかけに、レオンは再び魔王に目をやる。

 魔王はこちらに向かってくるでもなく、自身の体に手を当て魔力を流していた。おそらくエリスのデバフを解除したのだろう。


「上手く言えないが、ちょっと妙な感じがする。感じる強さと実際の強さが比例していないような...」

「どういうことですか?」

「俺にもよくわからん。もう少し剣を交える必要がありそうだ。」


 そう言って、レオンは再び魔王に向かって走り出した。

 魔王も軽く構えを取り、レオンの聖剣を迎え撃つ。


 ギンギンと鉄がぶつかり合う音がして、時折火花も散る。

 これまでのレオンは相手の武器さえも粉砕して勝っていたが、魔王の槍は傷つくこともなく、レオンに対して力負けしている様子もない。


 エリスもレオンに当たらないように聖属性の奇跡を魔王にぶつけていくが、最初と同じく片手で防がれてしまう。

 だが片手を使わせるだけでも十分だ。そのタイミングでレオンは連続で攻撃を仕掛ける。

 一回、二回は槍で防がれるが、三回目四回目と斬り続けることで聖剣が魔王の体を捉えていく。


(...え?)


 しかしエリスはその光景を見て驚きの表情を浮かべた。

 聖剣は魔王の体を斬ったはずなのに、傷がほとんどない。いくら魔王が強いとは言っても、レオンの攻撃を受けてそこまで無傷でいられるものだろうか。


 同じことを思ったのか、再びレオンは下がってきてエリスに近づく。


「四回斬った。でもほぼ無傷。ちょっとおかしいな。」

「やっぱりレオンさんからしてもおかしいですか?」

「ああ。単純な技量や感じる力で言えば、俺の方が上だ。でも実際は片手で防がれるし、当たってもほとんど傷はない。何かカラクリがあるな。」


 魔王は何を言うでもなく、斬りつけられた箇所とレオンを見ている。


「もう一度行く。同じように頼む。」

「わかりました。」


 三度、レオンが魔王に仕掛けに行く。

 今度はエリスも積極的に奇跡を使い、魔王の力を確かめようとする。

 そしてレオンはこれまで以上に魔力と力を込め、魔王の槍を弾き飛ばした。


「...ほう。」

「くらえ...!」


 弾き飛ばされた体勢のまま、感心したような声を出す魔王。

 レオンはその魔王に目掛けて、魔力を込めた大振りの、全力の一撃を食らわせる。


 すさまじい魔力の嵐と剣を振った風圧がエリスの元まで届く。

 この攻撃をくらって無事なはずがない。そう思わせるほどの一撃。


「...やるではないか」


 しかし魔王は、大した傷もなく立っていた。

 無傷というわけではない。胴体に少し切り傷ができて血を流している。


 だがたったそれだけだ。布を巻けば処置が済んでしまいそうな、そんな軽い傷しか負っていない。


「勇者の意思を継ぐもの、か。その言葉に嘘はないようだな。お前たちは間違いなく勇者だ。」


 どこか納得したような声の魔王。

 エリスは魔王の声を聞きながら、自分の隣まで下がって来たレオンを見る。

 正真正銘、今の一撃は全力だったのだろう。レオンの額に少しだけ汗が見える。


 それが疲れによるものか、それとも焦りなのか。エリスにはわからなかった。


「だが勇者だからこそ、我には勝てぬ。」


 その言葉と共に、魔王の周囲から黒い魔弾が出現する。

 その魔弾はすぐさま放たれ、レオンは反射的にそれを魔法で打ち消す。


 バチ!という、魔法が相殺した光が発生する。


 そして光が収まった時、魔王はすでに目の前にいた。


「!!」


 魔王の槍が振るわれる。レオンはそれを聖剣で受け止めるが、踏ん張り切れずにそのまま壁まで吹き飛ばされた。


 ドゴ!という鈍い音がしてレオンが壁に激突する。

 魔王はそれを確認することもなく、次はエリスを狙う。

 

 黒い魔弾がまた放たれる。当たるとマズイというのが直感で理解できる。


「守護の奇跡!」


 エリスは素早く、自身の前に透明の壁を発生させる。

 セリアと同じくエリスも結界のような技は使える。セリアよりも範囲は狭いが、強度は負けていない。


 魔弾はその壁で防げたが、すべて防ぎ切ったところで消滅してしまう。

 そしてそのタイミングで、エリス目掛けて槍が迫って来た。


「くっ...!」


 エリスは槍の突きを横によけ、続いて振るわれた薙ぎ払いはしゃがんで避ける。そしてしゃがんだところに魔王の蹴りが飛んでくるが、腕をクロスさせて防御する。


 鈍い痛みが腕を襲う。防御したはずなのに数メートル吹き飛ばされてしまった。


 魔王は追撃しようとしてくるが、横から飛んできた雷が直撃して動きを止める。

 レオンだ。

 壁にぶつけられたレオンが手を前に出し、そのまま魔王目掛けて魔法を連打する。


 魔王はそれを手で払い、槍で掻き消し、時には避けて対処する。

 その隙にエリスは治癒の奇跡を使い、自分とレオンを回復させた。


「後方支援だけかと思ったら、存外動けるではないか。」


 魔王は称賛するが、レオンとエリスはそれどころではない。

 攻撃が通じないうえに、相手の攻撃は強大。

 ここにきて初めて、レオンたちは窮地に立たされていた。


 だがレオンはうっすらとだが魔王の力の正体を感じ取っていた。

 そしてそれは、エリスもだ。


「伝心の奇跡」

『レオンさん、魔王に聞かれてしまうので心の中で会話をします。魔王の力がわかったかもしれません。』


 エリスは任意の相手とテレパシーができる奇跡を使い、魔王に聞かれないようにレオンと話をする。


『こんなこともできたのか...。ああ、俺も少しわかった。おそらくバフデバフのようなものじゃないか?俺たちの攻撃は弱体化され、魔王の攻撃は威力が上がる。そうだろ?』

『ええ。ですがただの強化や弱体化ではありません。もっと深いものです。』

『深い?』


「休んでいる暇があるのか?」


 突然動きが止まった二人を見て、魔王は再び動き出す。

 狙いは...エリス。


「させるか!」


 だがそれを見たレオンは瞬時に魔王に接近し、聖剣で動きを止める。


『深いってなんだ!?』


 魔王の槍と打ち合いながら、レオンは心の中でエリスに話しかけた。


『加護の一種です!とにかく、私ならその力を解除できるかもしれません!』

『解除の方法は!?』

『...魔王に直接触れる必要があります!3秒でいいので、その隙がほしいです!』

『簡単に言ってくれるな!』


 レオンは槍を受け止めるのではなく、受け流すことで均衡を保っていた。

 受け止めれば吹き飛ばされる。

 この魔王相手に3秒の隙を作るのは、至難の技だった。


『できますか!?』

『...まかせろ!』


 だが、できないとは言えないし、言わない。

 そこに勝機があるのなら、どれだけ難しいことでも成し遂げてみせる。それがレオンという勇者だった。


「さては何かを企んでいるな?だが、二人で来ようと同じことだ。」


 先ほどまで後方にいたエリスまで近づいてきたことで、魔王は何かを察したようだ。

 槍でレオンを攻撃しながら、魔法でエリスを遠ざける。その一発一発が致命的な威力をもっている。


 エリスは魔王の能力を解除するために、奇跡の力を溜め込む必要がある。

 なので今は奇跡を使うことができない。魔王の魔法を奇跡で防がずに、自分の身のこなしで対処しなければならない。


「はっ、はっ」


 短く息を吐き、魔法をかわしていく。

 エリスとて、女神に選ばれた勇者だ。奇跡一辺倒ではなく、身体能力だって高い。

 しかし魔王の魔法、それも一撃で致命傷となると、当然簡単に対処できるものではない。


 何度も当たりそうになりながら、それでも魔王から離れない。

 危ない場面もあったが、レオンがほんの少し魔法を当てて軌道をずらしてくれるので、間一髪かわすことができている。

 剣で打ち合っている状態で魔法の援護までこなすのはさすがとしか言いようがない。


(でも、隙がない...!)


 だが状況は膠着している。魔王はエリスに少し注意が向いているが、それでもレオンが押し切ることはできない。むしろエリスに注意が向いている分、魔王に触れるのは難しい。


 しばらく剣と槍の打ち合う音と、魔法が放たれる音が続く。


(そろそろ...体力の限界...相打ち覚悟で行くしか...!)


 いくらエリスの身体能力が高いとは言っても、不慣れな近接戦で動き回れば体力は激しく消耗する。

 このまま動けなくなって魔法に当たってしまえば、その時点で負けてしまう。ならばそうなる前に、魔法に当たりながらでも魔王に触れるしかない。


『エリス、行くぞ!』


 レオンも同じことを思ったのか、エリスが考えるのとほぼ同時にその言葉が聞こえてきた。

 覚悟を決めて歯を食いしばる。


 その時、セリアたちの戦いに動きがあったのか、隣から轟音が聞こえてきた。

 それを合図にしたようにこちらの戦況も動き出す。


「おおお!!」


 レオンは魔王の槍を受け、かわし、弾く。そして弾いた後のほんのわずかな時間で、力を込めて聖剣をふるった。

 狙いは魔王の足元、床。


 聖剣は床を削り取り、足元に穴があいたことで魔王のバランスが崩れる。


「む!?」


 そしてその隙に、レオンは魔王に密着して羽交い絞めにして動きを止めた。


「邪魔だ!」


 魔王の頭突きがレオンに直撃するが、レオンは鼻血を出しながらも離さない。

 身体強化を限界まで引き上げ、一歩たりとも動かさないようにおさえる。


 そしてエリスの手が、魔王に触れた。


 1秒。

 魔王が何かに気づいたように、素早く魔弾を二つ作り出す。


 2秒。

 至近距離で出された魔弾は、1秒もかからずにエリスに当たるだろう。


 間に合わない、そう思った時だった。


 二つの魔弾が、防がれる。


 一つは小さな結界に。もう一つは魔法によって打ち消され、魔弾はエリスまで届かなかった。


(セリアさん、ユリウスさん...!)


 周りを見る余裕も時間もないが、一瞬で誰のしわざか分かった。

 隣で戦っていた二人が、助けてくれたのだ。


 そして、3秒。

 エリスの溜め込んだ奇跡の力が、魔王に流れ込む。


「や、やめろ!!!!」

「女神の奇跡!」


 魔王を中心に、部屋中が光に包まれる。その光は人類にとっては聖なる光。

 そして人類の敵にとっては、破壊の光。


(魔王の力、それは女神様の対となる存在、『魔神』による加護!効果はおそらく、『勇者と相対した際に自身を強化』するものと、『相対した勇者の弱体化』!)


 そして女神と対をなすのであれば、女神の力を注ぎこめばその加護は打ち消せる。


 通常の魔法では不可能。生半可な奇跡でも無理であろう。


 女神に選ばれ、奇跡によって世界を救ったエリスだからこそ可能だったことだ。


 そして、パリン、と。

 見えない何かが砕け散る音が響いた。


 それは、この戦場を支配していた力の崩壊を意味していた。


 次の瞬間。

 光が爆発した。


明日同じ時間に更新します。

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