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異世界勇者たちの合同世界救済〜滅びゆく世界に派遣されたのは、それぞれの世界を救った英雄でした〜  作者: ターシ


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第7話 勇者たちの戦い ユリウス&セリア


「...何者だ?」


 扉の中は何十メートルもある広い部屋となっており、魔王はその部屋の隅にある窓から外を眺めていた。

 突然魔王城の前にあらわれた強い気配。その正体を確かめようと外を見ていたところに、扉が開き人間が入ってきた。


「あんたが魔王だな。世界の平和のため、この世界の勇者の意志を継いであんたを倒しに来た。...しかし、いいもん従えてんな。」


 レオンは聖剣を抜きながら気軽に声をかける。

 だが他の三人は、あまりの驚きに声が出なかった。

 なぜなら部屋に入った瞬間に、部屋の奥にいるそいつが目に入ってしまったからだ。


 鋭い牙、巨大な羽、太い尻尾、頑丈な鱗。

 あらゆる生物の中で「最強」と称される存在、巨大なドラゴンがそこにはいた。


 そして何より、そのドラゴンを従えている魔王に、それに対して何てことないように話しかけるレオンに対しても、驚きを隠せなかった。


「ふむ...」


 魔王の視線がまずレオンに向き、次にその背後の三人、そして最後に聖剣へと移る。


「勇者の意志を継ぐ、か。どうやらただものではないようだ。」


 そう言って魔王はレオンたちに向き直る。

 二メートル以上ある大柄な男で、鍛え上げられた肉体。

 荘厳な顔つきをしており、全身から威圧するような魔力を放っている。


「幹部が戻らぬのも、お前たちの仕業だな?」

「ああ。幹部は全員倒した。あとはあんたさえ倒せば、魔族軍は瓦解する。人間の勝利だ。」

「嘘ではないようだな。たしかに幹部ではお前たちに勝てぬだろう。それだけの力を感じる。」


 魔王はうっすらと笑いながらパチパチと手を叩き、素直にレオンたちを賞賛する。

 だがすぐに笑いをおさめた。


「...よくも邪魔をしてくれたものだ。だが、その程度の力で我に勝てるとでも?幹部に勝てたからと言って、勢いづきすぎたようだな。」

「そう思ってくれるなら結構。ペットごと終わらせてやるよ。」


 魔王は玉座の後ろに立てかけられていた巨大な槍を取りながら、戦いの態勢に入っていく。それを見たドラゴンも体を起こし、口の中から小さな火を出しながら威嚇をする。


「...レオン。どうするつもりだ。」


 ユリウスが一筋の汗を流しながらレオンに聞く。


「ドラゴンはユリウスとセリアでやってくれ。俺とエリスで魔王を倒す。」

「お、オレか?」

「ああ。セリア、結界で上手いこと分断してくれ。」

「わ、わかりました。」


 レオンは当然のようにそう言った。

 ユリウスとしてはマジかよといった感じではあるが、悠長に話し合っている時間はない。


 ドラゴンは大きく息を吸って吐き、巨大な炎をぶつけてくる。

 セリアはすぐさま結界を出し、炎を防ぎつつ魔王とドラゴンの間にも結界を張る。


 それを合図にレオンは魔王に駆け出し、戦いが始まった。


──────────────────────


 目の前で炎が結界に防がれているのを見ながら、ユリウスは一歩下がり全体を見渡す。


(さて、どうするかな。)


 正直ドラゴン相手は荷が重いが、それが自分の仕事ならやるしかない。

 こういう時こそ冷静に考えることが大事だ。


(正面戦闘で倒すのは...リスクが高いな。セリアのサポートがあるとは言え、それでも五分五分ってところか。)


 ユリウスは、自分に戦いの才能がそれなりにあるというのはわかっている。訓練だって多少はしてきた。

 とはいえ、『それなり』『多少は』と言った程度ではある。並の相手なら勝てるが、ドラゴンはどう考えても『並の相手』ではない。


「セリア。結界と攻撃魔法は同時に扱えるか?」

「出来はしますけど、効率は悪くなりますね。魔力消費が激しいですし、結界か攻撃のどちらかは弱くなります。長く続けば魔力切れもありえますし。」

「...ひとまず使うのは結界だけにしてくれ。」


 防御に関してはセリアの結界頼りだ。ユリウスとて身体強化の魔法くらい使えるが、ドラゴン相手では少々心許ない。

 とはいえ結界で守ってばかりでは勝てない。セリアはここまでに結界を何度も使っているし、長期戦になればセリアのほうが不利だろう。


「結界で守りつつ、攻撃のタイミングで結界解除というのは?」

「それも出来はしますが、毎回となると魔力が心配ですね。結界解除したからといって、魔力が戻ってくるわけではないので。毎回張りなおすことになります。」


 結界は相手の攻撃を防ぐが、同時にこちらからの攻撃も相手に届かなくなってしまう。

 レオンやクロウのように強力な一撃で仕留めるならその方法でもいいが、決定打にかけるこの二人ではその戦法は不向きだろう。


(...となると、倒すことを考えるのはやめたほうがいいな。最悪、レオンたちが勝つまで粘るというのも手段の一つだ。)


 レオンたちが勝ってから四人がかりでドラゴンを仕留めにかかる。それでもいいだろう。


(...ただ、最悪の事態としてレオンたちが負けることもありえる。それを考えるとドラゴンはこちらで無力化しておきたい。)


 レオンとエリスの二人がかりなら魔王に勝てるとは思うが、レオンが言っていたように魔王に未知の能力があれば万が一もあり得る。そうなった時にドラゴンが健在では、ユリウスとセリアも負けてしまう。


 最終手段としてクロウが全て吹き飛ばせば世界は救われるが、ユリウスは別に自分が死んでまで世界を救う、といった高貴な心は持ち合わせていない。なのでその展開になることは避けたいと考えている。


 そう考えていたところで、ユリウスに光が降り注いだ。その光を浴びたことによりユリウスの能力が上昇していく。

 そしてドラゴンのほうにも光が降り注いでいる。


(...エリスか。オレたちへのバフとドラゴンへのデバフ。こちらもサポートしてくれるのはありがたい。)


「...結界は補助魔法も通さないはずなんですけどね。エリスさんの奇跡は、本当に魔法とは違う分類のようです。」

「なんにせよ追い風だ。一先ず色々試してみるか。セリア、やってみてほしいことがある。」


 ドラゴンは自身のブレスが相手に届かないことを不思議に思い、もう一度息を深く吸いブレスを吐き出す。

 そのタイミングで、セリアの結界がドラゴンを覆った。

 今度は防ぐだけではなく、結界の角度を調整してブレスがドラゴンに跳ね返るように結界が張られる。


「グルルルッ」


 自身のブレスが体に当たるドラゴン。だが少し鱗の色が変わったくらいで、大したダメージは見当たらない。


「ガアアアアッ!」


 それに苛立ったのか、ドラゴンは動き出して結界に体当たりをする。一度では破れなかったが、二度、三度と体当たりをすることで結界にヒビが入る。

 その威力はすさまじく、天井や柱が削れて破片が飛び散っていた。


「...」


 ユリウスはその光景をじっと見つめる。


「言われた通りに結界を張りましたが、あまりダメージはないようですね。この調子で結界が割られ続ければ、こちらが先に力尽きます。」

「ああ。じゃあ次の作戦だ。セリア、結界を張った状態でその結界を動かすことはできるか?」

「できますが、強度は弱まりますね。」

「動かせれば十分だ。じゃあ次にしてほしいことを伝える。」


 そしてユリウスとセリアの会話が終わったところで、ドラゴンが結界を突破した。

 結界が割れお互いの間に障害物がなくなると、ユリウスがドラゴンに向かって走り出す。


「ガアッ!」


 ドラゴンは踏みつぶそうとするが、ユリウスの頭上に結界が張られ防がれる。

 それを何度か繰り返したところで、上からは潰せないことがわかったドラゴンは、今度は体を回転させて尻尾の横なぎでふきとばしにかかる。


 尻尾は柱にあたるが、止まることなく柱を崩しながらユリウスに襲い掛かった。

 だがユリウスは結界を足場にジャンプし、尻尾を躱しながらドラゴンの頭上まで結界伝いに跳んでいく。


 ドラゴンは頭上まで来たユリウスにブレスを吐くが、それは他の結界に飛び移ることで避けられる。

 ブレスは天井に当たり、焼け焦げた天井がミシミシと音を立てる。


「直撃すればひとたまりもないな...」


 ユリウスは冷や汗を流しながらそう言い、空中にある結界を足場にして細かく飛び回る。

 いつの間にか周囲に小さい結界が張り巡らされていることに気付いたドラゴンは、鬱陶しそうに暴れまわった。


「ゴアアアッ!」


 腕や尻尾を振り回し、ブレスを吐き、結界を次々に壊していく。それに合わせて壁や柱は崩れ、部屋が瓦礫だらけになる。


 そして結界が少なくなってきたところで、ドラゴンは空中にいるユリウスに狙いを定める。

 だがユリウスは冷静に魔力をため、魔法を放つ準備をすませる。

 その狙いはドラゴン...ではなく、その頭上。


「いくぞセリア!」

「はい!」


 ユリウスから放たれた魔法の弾は、ドラゴンの頭上にある天井に直撃した。

 ブレスを受け、体当たりの衝撃で脆くなっていた天井は、その一撃により崩れる。


「ガアッ!?」


 そして降り注ぐ大量の瓦礫。

 ガラガラガラ、という石と石がぶつかり合う音がして、純粋な質量がドラゴンに襲い掛かる。

 ユリウスの周りは小さな結界が張られているので無事だったが、ドラゴンは瓦礫の雪崩の直撃を受けることとなった。


「どうだ...?」


 そして倒壊がおさまり、ユリウスは空中からドラゴンの様子を確認する。

 だが...


「グルルルルアアアアッ!」


 自身に乗った瓦礫を振り払いながらドラゴンが体を起こす。

 鱗が少し剥がれ血が出ているところもあるが、それでもまだまだ動ける様子であった。


「!!」


 そしてドラゴンは忌々しそうにユリウスを見ると、その巨大な腕で空中の結界を破壊しながら叩き落としにかかる。

 急いでその場から離れることで直撃は免れたが、空中の結界が一斉に破壊されたことで次に飛び移れる足場がなく、ユリウスはそのまま地面に落下する。


「ガハッ!?」


 身体強化やエリスのバフがかかっていたとはいえ、背中から地面にたたきつけられることで肺の空気が一気に抜ける。

 上手く呼吸ができずに立ち上がれずにいるユリウスに、影が覆いかぶさる。


「グルルルル...」


 ゆっくりと近づいてきたドラゴンがユリウスを踏みつぶそうとしたところで、その目にユリウスの顔がうつった。そこでドラゴンは不思議に思う。


 ユリウスの表情に焦りや恐怖はなく、不敵な笑みを浮かべていたからだ。 


「...?」


 違和感に気付く。さっきまであれだけ邪魔だった結界が見当たらない。

 いや、結界だけではない。周りに物が少なすぎる。

 柱も壁も、ついさっき壊れた天井も。部屋は瓦礫だらけだったはずなのに、いつの間にかなくなっていた。


 そして周囲を見渡したところでもう一つ気付いた。

 ユリウスに覆いかぶさる影が大きすぎることに。

 これは自分の影だけではない。自分の上に、何か影ができるものがある。


 そう思ったドラゴンが上を見上げると。

 そこには大きな結界があり、その中に大量の瓦礫が入っていた。


「最初からこれが狙いだったんだよ...!」


 その言葉とともに結界が解除され、ドラゴンに再び瓦礫が襲い掛かる。

 天井が壊れたことにより先ほどよりも高い位置から、先ほどの何倍もの瓦礫が降り注ぐ。


 ドラゴンは慌ててブレスを吐こうとするが間に合わない。仮に間に合ったとしても、この量を消すことはできなかっただろう。


 ズズズウン...という巨大な地響きがおこり、ドラゴンは瓦礫の下敷きとなった。


「ゴ...ア...!」


 地響きがおさまると、そこには大量の瓦礫に埋もれて身動きが取れないドラゴンの姿があった。

 血は流れているが、まだ戦える状態ではあるだろう。

 だがこれだけの瓦礫が乗っていては動くことができない。戦闘継続は不可能だ。


「ふう...」


 ユリウスは痛む体を抑え、セリアの元へと行く。


「やりましたね。」

「ああ。倒したわけではないが、一先ずここまでやれば充分だろう。」

「でも私の魔力はほとんどなくなりました。分断のための結界も何度か張りなおしましたし。」

「仕方ない。魔力を節約できるほどの余裕はなかったからな。この後はできる範囲でレオンの援護に回るぞ」


 そう言って二人は魔王とレオン・エリスの戦いに目を向ける。

 そこもまた、壮絶な戦いが繰り広げられていた。


明日同じ時間に更新します。

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