表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界勇者たちの合同世界救済〜滅びゆく世界に派遣されたのは、それぞれの世界を救った英雄でした〜  作者: ターシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/10

第1話 勇者たちの招集


 世界は救われることもあれば、滅びることもある。

 それは善悪の問題ではなく、ただ結果の話だ。


 数多の世界を管理する女神は、いくつもの世界を見てきた。

 何も起きず、平和が維持される世界。

 勇者が勝ち、平和が訪れた世界。

 勇者が敗れ、闇に呑まれた世界。


 そして今また正義が倒れ、恐怖だけが残された世界が静かに滅びへ向かっている。


 女神は決断した。

 その世界を救うために、すでに各々の世界を救った者たちを集めることを。


─────────────────────────────────────


「...また女神か」


 光に包まれた空間で、レオンは小さく息を吐いた。


 女神の間。

 異次元にある、何度も呼び出された見慣れた場所。

 剣を握っていないのに、身体は自然と戦いの構えになっている。


 視線を巡らせると、すでに数人の姿があった。


 白いローブに身を包み、静かに周囲を見渡す女性

 その少し後ろで、腕を組み、興味なさそうに天井を見上げている男

 祭服姿で祈るように目を伏せる少女

 そして、柱の影に寄りかかり、存在感を極力消している男


(...俺含めて五人か。全員、ただ者じゃないな)


 レオンは直感でそう悟った。

 武力や魔力の気配ではない。

「世界の運命を決めた」という雰囲気が、全員から微かに漂っている。

 おそらく、全員が別世界から集められた存在だ。


 そう思ったところで正面に光が集まり、女神の姿が現れた。


「集まってくれて感謝します。勇者たちよ」


 柔らかな声。

 しかしその声音には、いつもより僅かな疲労が混じっていた。


「あなたたちを呼んだ理由は一つ。...滅びかけている世界を救ってもらいたいのです。」


 空間に重い沈黙が落ちる。


「すでにその世界の勇者は敗れました。国々は崩れ、民は逃げ惑い、魔王は勝利を確信しています」


 レオンは歯を噛みしめた。それは、あまりにも馴染みのある光景だった。


「あなたたちには、その世界へ向かってもらいます」


 女神の言葉に、白いローブの女性が反応をした。


「...私たち全員で、ですか?」

「はい」


 即答だった。


「一人では間に合わない段階まで来ています。ですが、あなたたちならきっと───」


 その言葉を、レオンは半ば聞き流していた。


(要するに、魔王を倒せばいいんだろ)


 単純で分かりやすい。

 そして間に合うなら、それでいい。


 だが視界の端。柱の陰で存在感を消していた男が小さく呟くのが聞こえた。


「...兵器を使う段階か」


 レオンは思わずそちらを見た。


 その男は、どこか他人事のような目で女神を見ていた。

 まるで、自分がこれからやることをただの「処理」だと感じているように見える。


 その瞬間、レオンは理解した。


(...こいつら、全員俺とは違う)


 救い方も、考え方も、それぞれの信条を掲げている。一致していない部分がある。

 だが、残念ながら意見を話し合う時間はないらしい。


 女神が手を掲げ、空間が軋む。


「転移を開始します。レオン、セリア、ユリウス、エリス、クロウ。どうか、世界を救ってください」


 光が溢れ、集められた英雄たちの姿が掻き消えた。


 その先に待つのが、救済か、破壊か、あるいはその両方か。

 この時点ではまだ、誰にも分からなかった。


─────────────────────────────────────


 光が弾け、地面の感触が戻った。

 次の瞬間、耳を打つ悲鳴と爆ぜる炎の音が、現実を叩きつけてくる。


「...チッ」


 視界に街が広がるのとほぼ同時に、レオンは舌打ちをする。


 街が燃えている。建物は崩れ、空には黒煙が立ち上り、石畳には血が散っていた。

 逃げ惑う人々を追い立てるように、異形の影が街を練り歩いている。


 魔族だ。


 角、爪、歪んだ身体。

 数は多いが、統制は取れていない。

 いや違う。統率を取る必要がないのだ。

 もはや街に抵抗できる戦力はなく、魔族の動きは勝利を確信した者の動きだった。


(もう、終盤か)


 そう理解した瞬間、レオンは地を蹴っていた。

 聖剣が抜かれ、閃光が走る。最前列の魔族が、抵抗する暇もなく両断された。


 レオンの背後では、別の動きがあった。


 白いローブの女性──セリアが人々の方へ走っていく。

 結界が展開され、瓦礫と炎が押し止められた。


 その少し後方。

 女神の間で興味なさげに天井を見上げていた男──ユリウスは足を止め、戦場全体を見渡している。

 剣も魔法も使わない。ただ、崩れた街の構造と魔族の配置を、冷静に観測していた。


 祭服姿の少女──エリスは一瞬だけ立ち止まり、胸元で祈るように指を組んだ。

 次の瞬間、聖なる光が灯り、負傷者の血が止まる。


 そして気配を消していた男──クロウは、動かなかった。

 建物の影。そこから一歩も出ず、戦場を眺めている。


(...やっぱりな)


 レオンは歯を食いしばり、次の魔族を斬り伏せた。


 集められた俺たちの考え方は違う。救い方も違う。

 だが今は...


(倒すしかない)


 この街が完全に壊れる前に。

 ここにいる魔族を殲滅する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ