予約したお料理
「予約していた原田芳一郎です。」
「それでは、ご予約を頂いております、原田芳一郎様。お待ちしておりました。」
「はい。」
「では、此方のお席へどうぞ。」
そう言って、案内してくれたギャルソンが椅子を引いてくれた。
なんか一流レストランの対応…
やっぱり後から高額請求とか…
されない事を祈るしか有るまい。
それよりも俺は一寸の虫程に残されたこの味覚の危機だ。
「では、お料理をご用意致します間に…お話をお聞かせ下さいますか?皆様楽しみにしていましたよ。」
先払いか…
俺は腰をかけて、この不思議な四谷さんの話を始めた。
○○○○○○○○○○
「成る程、成る程、中々面白いお話を有難うございました。皆様楽しまれておりますよ」
そう言われて周りを見渡すといつの間にか沢山の人々…?に囲まれていた。
見た目は人間…
格好は
いろんな時代の貴人の格好だ。
古くは十二単、束帯に烏帽子とお殿様の様な格好の人やら大奥に出てきそうな絢爛豪華な打ち掛けを羽織った人、裃を着た武士や海外の貴族のような腰を絞ったドレス姿やシルクハットを被った燕尾服…
色んな時代が入り混じっていたがどれも庶民の格好は無かった。
それぞれの人々が拍手をしていた。
「もののあはれ!」
「ブラボー」
「良きかな良きかな」
「素晴らしい」
なんか褒められてるっぽいけど、真に受けて良いのかな…
「皆様、ご静粛に。それで、その小指の方はどうなりましたか?」
「それがですね…」
「まあ、多分大丈夫。もう恨みとか怨念みたいなのは感じないから…」
「でも…怖すぎる…」
「多分、芳一郎さんが優しい人だから一緒にいたいんだろね。多分悪さはしないから。まあ新しく出来た黒子位に思ってれば大丈夫だよ」
そう口咲さんに言われていたが…
気を抜くとこの小指は俺の鼻の中に突っ込んでグリグリしている。
おまけにたまにそのまま口に入れてきたりする。
それをわざとか人がいる前でやりやがる。
1人の時はやらない。
トドメに他人の鼻に指を突っ込もうとする時がある。
何が悪さはしないだ!
しまくりだろうがコイツ!
タチが悪い。
「ははは!成る程成る程、中々の悪戯っ子みたいですね!」
また周りが笑い声をあげて騒ぎ出した。
「まあ、元は子供みたいですし。原田様に甘えているんでしょうね。今まで独りぼっちだったから…」
甘えるならもっと可愛い事にしてくれよ…
「それではお料理が出来たみたいですので、お持ちいたしますね」
そう言って運ばれて来たのは…
「舌平目のポワレで御座います。」
うわあ!美味しそう!
しかし舌平目とは…
なんとも…皮肉か?
人外ギャグか?
「此方の岩塩を振り掛けてお召し上がり頂きます。」
そう言ってガリガリとミルで岩塩を削りながら振り掛けた。
「それでは、どうぞ。」
ナイフをいれて、フォークで口に運んだ。
外はカリッと、中はふっくらジューシーで…
絶妙な調理加減だ。相当腕のいいシェフだろう。
そして…
「塩味が!絶妙にマッチしていて、本当に美味しいです!」
「それはそれは。お気に召して頂き有難うございます。」
俺は初めて感じたハッキリとした塩味に夢中になって食べていた。
「この度はご来店、誠に有難うございました。」
「いえいえ、此方こそ…塩味を有難う御座いました。あんなに美味しい料理は生まれて初めてで感動しました。」
「それは良かったです。この度は原田様にお土産もおつけ致しました。」
「えっ!?」
何も貰って無いが…
「我々の仲間を救って頂いた、ささやかなお礼ですよ。」
「?はあ…」
「それでは、お気をつけてお帰り下さい。」
「有難うございます」
「では、またのご来店、お待ちしております。」
そう深々とお辞儀されて見送られた。
またのご来店…出来ればもうこんな怖い思いは二度としたく無いが…
暫く歩いてふと振り返ると
そこにあった筈の店は跡形もなく無くなっていて、ただ壁とそれに伝う植物だけが有った。




