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芳一郎奇談-四谷怪談  作者: 水嶋


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指切り

「どうしたの?お父さんやお母さんとはぐれたの?」



お別れ会が終わり、俺は四谷さんの家を出て敷地の外へ出ようとしていた。


その門の側に小学校に行く前位の男の子が立っていた。


白いシャツにサスペンダーがついた黒い半ズボン、黒いハイソックスにローファーといかにもお葬式に来た子供といった感じだ。



「うん。お父さんとお母さんとはぐれちゃって」


「そうか、それは可哀想に。一緒に探してあげるよ」


「本当?有難う。優しいね、おじさん」


そう言って俺の小指をぎゅっと握って俺の目をじっと見つめてニコッと笑った。




娘の佳奈はこの年頃の時は


「お父さん、変なのくっついてて気持ち悪いから近くに来ないで!キモい!ウザい!」


なんて言われていた。早すぎる反抗期が始まっていて傷付いたもんだった…



悲しい感傷に浸りながらこの子を連れて家の方へ逆戻りしていた。



そこへ琢越さんを見かけたので声をかけた。



「すみません!家を出ようとしていたら親とはぐれた男の子が門の所に居て。その子の親って分かりますか?」


「男の子?」


「はい、この子って…あれ?」



さっきまで連れて来ていた男の子が居なくなっていた。



「どんな子でしたか?」


「多分、小学校に行く前位の男の子で…白いシャツにサスペンダーがついた黒い半ズボン、黒いハイソックスにローファーの…」



「そんな子を連れて来ていた人は居ませんでしたよ?」



「えっ!?」



「原田さん…ちょっと…」



そう言って琢越さんは俺の肩に両手を置いてなぞる様に腕の方へスライドさせた。



「私は…目が悪い分、他の人には見えないモノが見えるんです。」


「は…はあ…」



「これは応急処置です。私は其方は専門外です。早めに専門の方に見てもらって下さい。」


と医者みたいな事を言われた。





これは…


所謂…





○○○○○○○○○○





「やっちまいましたね。お父さん。」


「やっぱりそう?」



娘の佳奈に叱られていた。



「隙が多過ぎるんだよ。いっつも変なのくっつけて来て…ホント懲りないよね。」



「佳奈みたいに見えれば苦労しないんだけどね…」



「この歳で孤児にしないでよね。せめて大学卒業するまでは大人しくしてて欲しいんですけど。」



「すみません…」



「それで、今度はどんなのに付き纏われてんの?」


そう尋問されて、四谷さんの家での経緯を説明した。



「あー!指切りしちゃったかあ。中々離れないねそれは」



「指切り?」


「そう。小指掴まれちゃったでしょ?」


「うん…」


「一緒に探してあげるって約束しちゃったんだよね?」


「…したね。優しいね、おじさんなんて可愛く言われたよ…」


「ソイツ、全然可愛く無いからね!お父さんを器にする気だよ?」


「器!?」



「優しい〜おじさんのお父さんはさぞ人外も居心地が宜しいでしょう。普段から変なのすぐくっつけてくるし。」


「嫌だあ。俺、そんな優しさ捨てたい」



「まあ、今付き合ってる航平もだけど、人に好かれる人は人外にも好かれるのよ。航平も気を抜くとなんかすぐくっついてるしなあ。人外は元は人間だからね。」


「俺、人に好かれてるのかなあ?」


「今回だって四谷さんに娘の話し相手にって言われたんでしょ?人柄を頼られたんじゃない?まあ、結果いい迷惑だったけど。」


「そうだった…しかし佳奈…その言い方…容赦ないね。佳奈に取り憑くのは大変そうだ…」



「そりゃどーも。今お父さんに取り憑いてるソイツの正体は巌だね」


「巌って…確かまだ赤ちゃんだったはず…」


「アホか。人外に赤ちゃんも爺さんもあるか。見る人の都合の良い姿に見えるんだよ」


「左様ですか…」


「多分、ずっと輪廻を繰り返している内に目的があやふやになってるね。」


「そんな…」


「多分、お父さんを使って人を殺しまくるね」



「困るよ!俺捕まっちゃう。」


「一回刑務所でも入って頭冷やしてくる?」


「そんな殺生な…助けてよ。親子でしょ?」



「私は見えるけど払う力は強く無いからね。今回は叔母さんに頼るしかないか。あの人面倒だから関わり合いたくないけど…」




「俺も…少し苦手だけど仕方ないね…濡れ衣の犯罪者にはなりたく無いし。分かった、お願いしよう…」


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